【ニュースレター ❷ 民事訴訟法務】
今、交通事故損害賠償請求訴訟が急増中!!
司法書士の民事訴訟法務に対する考察と交通事故損害賠償請求事件
日本では、国民の権利を直接代理して裁判所で訴訟手続きを出来るのは弁護士と司法書士しかいない事をご存知ですか?
そうです。皆さんが裁判を誰かに代わってお願いする時の代理人が弁護士と司法書士なのです。何故、弁護士や司法書士が存在するかというと、皆さんに不利益が無いようにするためです。
この国は法治国家であり、基本的に我々の社会生活における決まり事は法律で規定されています。でも、その法律も一般の皆さんが十分に認知されているわけでは有りません。それは、自由主義により各々社会生活をどの様な形でするかは一人ひとりの自由だからであり、法律の事ばかり考えていては例えばビジネスでのマーケティングといった重要な事が疎かになってしまうからです。
しかし、それでは何かトラブルが有った時に、その関係する法律を知らなかったがために不利益を受けてしまう蓋然性が高いです。そこで、その法律の専門家がそのような不利益を受けないようトラブルに遭っている人に対し権利擁護が必要になるんです。これは、自由主義であり、法治国家である我が国にとって必然的です。
現在、司法書士と弁護士との棲み分けは、弁護士は法律実務全般を対象に、司法書士は主に民事事件全般を対象に各々法律相談や訴訟代理人として仕事をしています。
今まで訴訟費用の関係で中々裁判を出来なかった人々に、訴訟費用が比較的低額で済み、そのトラブルを解決することが出来る事になり、裁判所という場がより身近になったと思って頂ければと思います。
このニュースレターでは、そんな司法書士の訴訟法務の中で、訴訟代理人の実務に焦点を当てて考察し、急増している交通事故損害賠償請求事件の司法書士の果たす役割についてご紹介です。
自動車は生活に欠かせないものです。特に移動手段だけではない自動車の必要性は人口減少社会において人の生活を支える大事なアイテムになっており、今後益々その必要性は増していく事でしょう。
交通事故発生件数は、2004年にピークとなった95万2720件を記録した後、右肩下がりで減少し、2017年には47万2069件とピーク時から50%を切るところまでに至たりました。
交通事故負傷者数は、2004年にピークとなった118万3617人と100万人を突破しました。1999年から2007年まで9年連続で100万人を記録し、交通事故が問題化しました。その後、2017年には57万9746とピーク時から約50%の件数となっています。
交通事故死者数は、第一次交通戦争と呼ばれた70年前後がピークで、70年は1万6765人を記録しました。1988年から1995年まで8年間1万人を超え、第二交通事故戦争の様相を呈しました。しかし、その後は右肩下がりに減少し、2017年には3694人となり、2020年代初頭には3000人を下回る見込みといわれている。
死者を減少させた要因としては、自動車の安全設計の向上、歩行者保護への注力等が挙げられている。また、死者数を大きく減少させられない要因としては、高齢者人口の増加、シートベルト着用率の限界、飲酒運転による交通事故件数の下げ止まり等が挙げられており、死者数全体の半数以上が高齢者数が占め、その有効な対策が求められています。付け加えるならば、高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いによる悲惨な事故もこのところマスコミで大きく取上げられているのはご存知の通りです。(以上 統計:「JAFMate Park Park blog 交通事故統計 グラフに現れる驚きと納得! 1948年から2017年までの推移」株式会社JAFメディアワークス より)
それでは訴訟件数ですが、全簡易裁判所の事件総数は、1992年以来の統計では2009年にピークとなる60万件を突破しましたが、その後は2015年まで減少に転じ、その後若干上昇したものの2017年には10年前の461,125件と比較して339,711件となっています。
この間の訴訟件数の増加の背景は、消費者金融のグレーゾーン金利に対する2006年(平成18年)の最高裁判所の判決等が出された事、また2002年(平成14年)司法書士法改正、翌2003年(平成15年)4月1日施行された司法をより身近にした簡裁訴訟代理等関係業務法務大臣認定司法書士の存在により、いわゆる過払金返還請求訴訟等が一気に増加を迎える時代であり、それまで司法の壁に窮していた極めて大多数の一般市民の権利が救済された事は記憶に新しいところです。
ちなみに、2017年の全簡易裁判所の訴えの目的別司法書士、弁護士の関与状況では、例えば金銭も目的とする訴えの新受件数は、総数330,940件中、原告被告双方に弁護士が代理した件数は19,344件に対し原告被告双方に司法書士が代理した件数は38件。原告又は被告の一方に弁護士が代理した件数は41,666件に対し原告又は被告の一方に司法書士が代理した件数は16,283件となっています。
また、過払金返還請求訴訟事件のピークの後、全体の簡易裁判所の新受件数がピークの前の件数に落ち着いてきた2013年(平成25年)からの6年間の総新受件数と本人訴訟新受件数を観察してみると、2013年は345,332件、240,364件、2014年は320,607件、226,220件、2015年は321,827件、228,948件、2016年は329,378件、239,760件、2017年は339,711件、255,814件、2018年は341,344件、260,455件と総新受件数に占める本人訴訟新受件数の割合が減少していない事に気が付きます。
この間法科大学院制度が2004年(平成16年)4月に創設され、2006年(平成18)から第1期新司法試験合格者が1,000人単位で世に排出されています。ちなみにこの頃の全体の簡易裁判所の新受件数と本人訴訟新受件数で見てみると、2006年は386,833件、308,590件、2007年は461128件、327,733件、2008年は537,626件、369,539件、2009年は622,492件、397,244件、2010年は624,443件、350398件、2011年は550,798件、324,367件、2012年は424,368件、286,695件となっています。
この統計からも、認定司法書士による多数の訴訟受任件数により新受件数は増大していますが、法科大学院制度が創設され、法曹人口が激増し、弁護士数がそれまでと異なり一挙に増加しているにも拘らず、依然として本人訴訟件数が高止まりをしている事が全体として伺えます。
最後に、全簡易裁判所を第一審、全地方裁判所を第二審とした民事通常訴訟事件の新受件数と民事控訴事件の新受件数を見てみましょう。
2005年(平成17年)は355,386件、3,098件、2006年は398,261件、2,962件、2007年は475,624件、3,527件、2008件551,875件、4,261件、2009年は658,227件、5,529件、2010年は585,594件、13,421件と2010年に控訴事件件数が大きく増加していますが、民事控訴事件新受件数の民事通常訴訟事件新受件数に占める割合は約1%と簡易裁判所を第一審裁判所とした場合の控訴件数が微少であり、簡易裁判所管轄の事件に関してはその殆どが控訴される事件では無い事が判ります。
そして、前述したように本人訴訟件数が高止まりしている中、法律専門実務家の支援が必要とされているのが現状です。
認定司法書士はこのような状況の中、司法の壁に阻まれている国民の権利擁護のために、身近な暮らしの中の法律家として皆さんの近くにいます。(以上 統計:「弁護士白書 2018年版」、「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(司法統計 施策編資料155~193)」、「第一審通常訴訟既済事件数-事件の種類、弁護士等選任状況及び司法委員関与のあった事件数別-全簡易裁判所」裁判所Webページ より)
さて、交通事故損害賠償請求事件ですが、その事件は特徴的です。
それは、交通事故件数の減少を背景にして、なんと交通事故損害賠償請求事件訴訟の新受件数はこのところ急増しているという事です。
例えば、交通事故発生件数(人身事故のみ)と全簡易裁判所の交通事故損害賠償事件新受件数とを見てみると、2005年は934,346件、4,582件、2010年は725,924件、11,413件、2015年は536,899件、19,473件、2017年は482,165件、22,719件となっています。
また、法的紛争を適正かつ迅速に解決するための司法型ADR(ADR=裁判外紛争解決手続き)である民事調停手続きや民間・行政型ADRの広がりの認知度の上昇も挙げられると考えられます。(「平成25年7月 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(概要)」最高裁判所事務総局 より)
交通事故は大きく分けて人身事故と物損事故が有ります。交通事故に関係する保険の種類では、自動車保険は、強制加入である自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)、任意加入である任意保険、この任意保険に附帯する弁護士費用補償特約、社会保険では労災保険、健康保険があります。
事故の紛争解決方法としては、人身事故も物損事故も基本的に交渉、ADR、訴訟とその方法に変わりはありませんが、事実の立証の面で人身事故の方が複雑化することは予想に難くないでしょう。
従来、物損事故での訴訟件数が比較的少なかったのは、損害賠償額に比べて訴訟費用が高額になり、当事者としては中々訴訟まで踏切れない現実が有ったと考えられますが、自動車保険、特に弁護士費用補償特約の存在で、訴訟費用の負担が減り、自身の権利を主張し易くなったことが裁判所への訴訟新受件数の増加に直接的に反映していると考えられます。
この弁護士費用特約保険は現在のところ限度額が1事故300万円のものが一般的で、損害の大きい衝突事故から比較的軽微な接触事故までの範囲で必要となる訴訟費用の価格帯を充足でき、裁判を自身の出費無く出来る利点が有り、物損事故に適した特約保険という事が出来ます。
強制加入の自賠責保険は、人身事故を対象としており、物損事故に対する補償は対象としていないため、それを補う面でも有効でしょう。
基本的に人身事故は刑事事件になりますが、一般的に物損事故は民事事件のみで、お互いの話合い、場合によってはADRや調停、訴訟といった方法で解決される類型になります。
この意味で、損害賠償は自動車保険で、訴訟費用は弁護士費用補償特約で補填出来ますので、愛車の損害といった事故では、司法書士の法務事務所にお気軽にご相談されてはいかがでしょうか。
(2019年12月12日(木)リリース)