【ニュースレター ❼ 民事訴訟法務】
賃料不払いと建物明渡し(タテアケ)
民事保全法 占有移転禁止の仮処分事件とは!!
今回のニュースレター2020の第7回は、司法書士の法務事務所の取扱分野の中で個人経済債権法務(主に任意整理や過払金返還請求事件、個人破産事件等の法律手続き)に次いでポピュラーな建物明渡事件、いわゆるタテアケに関する民事保全法上の占有移転禁止の仮処分手続きについて取上げます。
しかし、ポピュラーと言ってもこの民事保全法上の占有移転禁止の仮処分は、一般的に知られている手続きではないと思います。民事保全法や民事執行法上の手続きは一般的にイメージが付きにくい事に加え、この占有移転禁止の仮処分は少し専門的理解が必要だからです。
民事保全法上の手続きは、法理論というよりは法制度上の純粋な手続きになり、前提知識と適切な状況判断、法律判断、そして正確な法律手続きが求められ、簡単ではなく労力と時間が掛かる上、慎重さが求められるものです。
そして更に、この占有移転禁止の仮処分は、民事訴訟法の制度を踏まえないと、理解できないからです。
正直言って、一般の方がこの手続きを使いこなし、自身の目的を達成できるかは疑問です。今回は、これまでに取上げた民事保全法上の仮差押え事件ではなく、もう一つの保全方法である仮処分手続きに焦点を当て、このような手続きもあるという知識を持って、いざという時の備えのために見て下さい。そして、実際に必要な時に、法律実務の取扱分野の中で、民事訴訟法務を専門分野又は取扱分野としている法務事務所の司法書士にご相談をして頂く事をお勧めします。
できるだけイメージが付き易いように、解説の内容を取捨選択して、その要説を事例に基づいて概説していきますので、宜しくお願いします。
【事例】
A氏は、Bに対し、A所有の建物を2018年(平成30年)10月1日に賃貸した。ところが、Bは2020年(令和2年)の4月頃から賃料を支払わなくなった。この間賃貸人Aは賃借人Bに対し督促状も送付したが、現在まで賃料未払いが3カ月続いており、どうしたらよいか困っている。
7月のある日、A氏は、どうすればよいか思案に暮れていた。お世話になっている不動産仲介業者に相談しようか?・・・しかし、法律的問題に発展した場合、途中でこの問題から離脱する事になり、それまでの交渉内容があるが故に、後で返って複雑になりやしないか・・・。それに、不動産仲介業者が仲介に入った場合、賃貸人も賃借人も双方とも仲介業者の顧客であり、どちらかに肩入れした場合、他方は不利益を被る事になる。不動産仲介業者は不動産の仲介が仕事であり、賃料不払い問題にはサービスで仲介してくれるだけで、その先に新たな賃借人を見付けて仲介手数料で利益を得る事が目的である事が多いため、中立的立場で公正にこの問題に当たってくれるか、そもそもこのような問題に不動産仲介業者が介入する事自体法律的には問題ではないか等A氏は疑問を感じていた。裁判所に相談してみようか? 警察に言っても捜査の対象になるのか? 法律事務所はこれまで特に縁が無く、敷居が高い印象もあってA氏は思うに任せない状況に陥っていた。
数日後、A氏は、手立てを尽くさないと賃料不払い状態が続き、損害が拡大すると思い、裁判所に電話を掛けてみた。電話に出た裁判所の受付は「そのような法律相談は裁判所では行っていません。ご自身で弁護士や司法書士の先生にご相談して下さい。」とつれない回答であった。A氏は、今回の件が犯罪になるのかも判断が付かず、警察に相談しても取合ってくれるか疑問であり、また大袈裟になると賃貸アパート経営に対する信頼を損ねる事を懸念し躊躇せざるを得なかった。
1週間程経って、A氏は、弁護士に相談する他ないと考えた。情報収集のためネットで検索していると、色々な弁護士の法律事務所がヒットした。そのホームページには各々色々な事が掲載されていて、決め手になるようなホームページは残念ながら発見できなかった。
A氏は、同じ賃貸アパート経営をしている友人Xにこの話をしたところ、賃料やアパートの大きさを考えると司法書士が良いのではないかとの事であった。A氏は、司法書士とはどういう仕事をしているのかその友人に訪ねた。その友人は、何でも弁護士の先生と同じような仕事をしているが、問題となっている金額が少額の事件を取扱っている法律専門実務家であり、自身も前に司法書士に相談して同じ問題を解決して貰った事があり、それ以来顧問契約をして、よく法律相談に応じて貰っているとの事であった。
A氏は、その友人と顧問契約をしている司法書士を紹介して欲しいと頼み、その友人は聞いてみると答えた。
翌日、友人からA氏に電話があった。その顧問司法書士は現在忙しく、また具体的な事実関係が判らない状況で会うより、先に事案の概要を知った後で対応可能かを判断する事が効率的であり、返って対処が早いと言っているというものであった。
そして、顧問司法書士は、自身のホームページを開設しており、その問合せホームで事案の概要を送ってくれれば、返信するという話があった事を伝えた。また、友人は、A氏の事やこの問題について、そのあらましを顧問司法書士に伝えてあるので、安心して欲しいと付加えた。
A氏は、早速、その友人の顧問司法書士のホームページを「司法書士 W法務事務所」で検索した。そのホームページは検索結果の上位にヒットし、幸い直ぐに見付ける事ができた。
ホームページには、専門分野として民事訴訟法務と掲載されていた。トップページの上段のメニュー「ご挨拶」をクリックしてみると、司法書士 W法務事務所の代表者である司法書士Wの挨拶が掲載されていた。また、司法書士WのプロフィールやW法務事務所の専門分野、所属司法書士会等についても明らかにされていた。
そして、そのページに
「オンライン無料法律相談はこちらから」
「受付時間 24時間」
という案内が掲載されていた。受付時間は24時間であり、土日祝日関係なくいつでも利用できそうであった。その案内をクリックすると、
「【オンライン無料法律相談 問合せフォーム】 -ファーストコンタクト-」
というページに移った。このフォームに氏名やメールアドレス、相談内容等を入力して送信すれば回答が返信されるシステムのようである。
A氏は、この現状を打開する必要もあり、無料であったため、事実関係を記載して、その
「【オンライン無料法律相談 問合せフォーム】」
で送信した。
「私は賃貸アパート経営をしており、先生が顧問をしてる友人Xから紹介を受けてご相談しているAというものです。Xからはこの件でお話をして頂いていると存じます。一昨年の秋に賃貸した部屋の住人が賃料を滞納しており、どのように対処したら良いかご相談をさせて頂きたく、お問せをした次第です。賃料滞納は3カ月になり、このままだと大きな損害が出てしまいます。勿論督促状を送りましたが、返信が無く現在に至っています。3月末で他の賃貸借契約が終了し、現在も2つの部屋が空き状態で、その上、賃料滞納まであると賃貸アパート経営も廃業せざるを得ない状況になります。そのため、できるだけ早い明渡しを実現したいと思っています。ご回答宜しくお願い致します。」
2日程経って、W法務事務所の司法書士Wよりメールで返信があった。その返信には、挨拶と共にA氏について、顧問をしているXの友人である事、問題の概要はXより伺っており、A氏の困難な状況について司法書士Wも気持ちを共有し、早期の問題の解決が図れればとの記載がされていた。そして、司法書士Wがこの事案に対する法律判断のために必要な事項が箇条書きで記載されていた。
「お問合せ有難う御座います。司法書士 W法務事務所の司法書士Wです。
この度は、ご友人で当職と顧問契約をしているXさんのご紹介でのご相談である事は承知しています。概要もXさんから伺っています。大変な状況で同情申し上げます。一日も早い解決ができるようご相談を伺います。法律問題は、その事案の本人から直接話を伺う事が大事です。ついては、当職がこの問題の解決のために必要な事項について、次の通りご質問しますので、ご回答をお願いします。その内容を拝見して、ご回答をさせて頂きます。宜しくお願いします。・・・」
A氏は、司法書士 W法務事務所のホームページに沿って問合せはしたものの、返信が届いたので安心した。自身の現状を少しでも改善したいと考え、司法書士Wから返信された必要事項に対し、1つ1つ箇条書きで回答をして、返信した。
数日後、司法書士Wから返信が届いた。それは基本的な賃料不払いによる建物賃貸借契約の解除に基づく建物明渡請求事件に対する対処の仕方であった。司法書士Wは、この事案についての具体的な書面や状況の確認についての情報が限られているため、限界があるものの一般的であると断りながら、できるだけ回答を行った。内容は、借地借家法の適用のある建物賃貸借では、基本的に賃借人の権利が賃貸人の権利より保護される事、そのため、このような事案では慎重な対応が必要になる事、今回の事案では、賃料不払いという契約違反による債務不履行が生じている事、そして、賃借人から他の事由による賃貸人との信頼関係の不破壊の抗弁が主張されるケースが多い事、訴訟になった場合、これらを総合的に判断して判決がなされる事、建物明渡請求事案の場合、事は居住問題であり、その事案の性質上、問題が先鋭化し易い事、それに伴い時間が掛かる可能性がある事、賃貸人としては、賃借人の事情をも考慮して、穏当な対応をした方が結局問題解決に要する期間が短くて済む可能性が高い事等について簡潔に記載されていた。
A氏は、大体の自身の状況は解ったが、実際に建物を明渡して貰うためには、自分一人では知識が不足している事や日常の仕事があり、難しさを感じていた。そしてA氏は、賃貸アパート経営の財務状況が悪く、何とかこの問題を解決し、新たに賃借人を見付けたいという事情があった。
そこでA氏は、まずこの問題について、多少の時間は掛かってもロスなく解決するための一番良い方法はどうしたら良いかを質問し、加えて、仮に仕事の依頼をするとしたら、自分の事案はどの程度の費用が掛かるか知りたかったので、見積りの概算も併せて依頼をする返信をした。
数日後、司法書士Wから民事保全法の占有移転禁止の仮処分という方法があると回答があった。A氏は、この日までに思案した結果、ここは司法書士Wに仕事の依頼をしょうと考えていた。併せて返信された全体としての大まかな割合での費用概算には、あくまでも現在の事案概要により割出したもので正式な費用概算ではないが、相談内容の範囲では大きな差は無いであろうとの注釈が付いていた。A氏は、この費用概算を見て、司法書士Wへ更に具体的な相談をしたいとの意向を示し、正式な法律相談の日程について、都合の良い日を幾つか挙げ、予約を申込んだ。
翌日、司法書士Wから初回2時間の予約を受付けた旨の返信が届いた。その返信には、予約当日にこの事案の契約書その他揃えられる必要と思われる書類、あればなんでも構わないので債務者Bとの関係が判る資料を持参して欲しい旨記載され、また司法書士 W法務事務所のホームページの「取扱分野」ページの中の「報酬(費用)」ページ及び「よくあるご質問」ページを開き、内容を一読して欲しい旨書添えてあった。相談場所は、A氏の賃貸アパート最寄り駅付近のカフェになった。
予約の当日、司法書士Wは、約束の相談場所であるカフェに到着した。大きなガラス張りの店内に入り、外がよく見える窓際の席に座った。落着いた店内のガラス越しには駅を行き交う人々がよく見えた。今日は平日の午後だが、店内には思ったより人は多かった。
司法書士Wは、事情聴取ノートや相談の案件の資料を出し準備をした。コーヒーを飲み、落着いた頃、A氏が入口のドアを開けやって来た。
司法書士WはA氏に会釈をし、少し緊張気味のA氏に合図を送った。事前のメールで、A氏の予約当日の服装を確認していたので直ぐにA氏と判ったのだ。司法書士WはA氏と簡単な挨拶を交わし、椅子に座った。そして、司法書士Wはまず名刺を出し、続いて自身が司法書士である事の証明として、所属司法書士会の身分証明書を提示した。初めて見る司法書士の身分証明書を時間を掛け確認すると、A氏は初回相談料を支払い、司法書士Wは領収書をA氏に渡した。司法書士Wは、当事務所負担である事を告げ、A氏にコーヒーでいいですかと尋ね、A氏が頷くとコーヒーを注文した。
些細な雑談をしているとウエイトレスがコーヒーを運んで来た。司法書士Wは早速初回2時間の法律相談を開始した。A氏の事案については、顧問契約をしているXから概要を聴き、また事前のオンライン無料法律相談でそのあらましは解っていたので、事前に聴取する要点を絞り、A氏との初回面談の中では、その事実関係についてより詳しい聴取りをしていった。
ます、司法書士Wは、A氏との初回の法律相談に当たって必要書類となる
「面談時事情聴取シート」
の記入をお願いすると共に、その間に賃借人Bとの建物賃貸借契約書に目を通した。そして、更に賃借人Bの性格や親族関係、保証人の有無、仕事等A氏と賃借人Bとの関係について聴き、これまでの経緯を整理していった。賃借人Bは、その態度から実際に訴訟になった場合、賃料未払いの事実を認めるが不明である事、仮に認めた場合でも滞納分の賃料を全額支払うとの抗弁を提出し、賃貸人との信頼関係は破壊されない旨の主張をする可能性はないか等を丹念に聴取していった。
その後、司法書士Wは、本件事案についての法律的対処の方法や見通し、注意点について説明し、A氏からの事案処理に対する質問や心配事等について丁寧に答えた。
司法書士Wは、この賃料不払いによる建物賃貸借契約の解除に基づく建物明渡請求事案の見通しについて勝訴できる(正当な権利主張である事)という心証を得た。但し、事案は借地借家法の適用のある建物賃貸借であり、事案の対処に当たってはいつもより慎重な対応をしなければならないと感じていた。特に、賃借人の生活状況がどの程度の事情であるか、居住場所を失った場合の対処はどうなるのか、賃借人Bの事情が不明であるため、想定ができない事を内心憂慮した。法律実務家は、単に依頼者からの法律問題を解決すればいいというものではなく、相手方の権利を必要以上に侵害しない態度も求められるからである。勿論、依頼者の立場を優先する事は言うまでも無い事だ。このような心証をA氏に伝えた。そして、法律事件は、当初予想もつかない事実関係が出てきたり、訴訟になった場合、その判断は裁判所がする事、有利な証拠が有っても必ずしも勝訴できる保証は無い事、保全事件ではその担保(保全保証金)を失う危険性が有る事等リスクの説明も併せてした。
A氏は、司法書士Wに本事案の法律的解決のため、手を貸して貰えないかと聞いた。
本事案に対する法律的問題の処理においては、解決可能性が有ると考えた司法書士Wは、快くA氏に事前に聴取した本件事案に対する全体の事件処理を想定した2種類の費用概算を提示した。そして、司法書士Wは、この事案を事件化する事に賛成し、司法書士として2つの法律上の業務がある旨を説明した。
1つは「本人訴訟支援法務」、もう1つは「訴訟代理法務」である。
「本人訴訟支援法務」とは、一般的な法律相談の他、依頼者の意思決定の基、依頼者に代わり、依頼者から事情聴取をしながら裁判所等に提出する訴状や答弁書等の書類作成を中心に、法律専門実務家である司法書士が、いかに依頼者の権利が正当に判断されなければならないかをその書類作成に基づき裁判手続き等を通じて支援する法律上の業務である事。そして、司法書士の「本人訴訟支援法務」は、裁判所等に提出する書類作成に関しては、取扱う事件に制限は無い事。
「訴訟代理法務」とは、一般的な法律相談の他、簡易裁判所管轄で、訴額140万円以内の事件において、司法書士が依頼者の訴訟代理人として、依頼者と協議をしながら、司法書士自身が主体的に裁判手続きをする民事上における法律上の業務である事。
一般的に、「訴訟代理法務」に比べ「本人訴訟支援法務」の方が、裁判手続きに掛かる費用が低額で済み、法律問題の解決を図れるという特長がある事。「本人訴訟支援法務」の事件対象は、比較的複雑でない生活関係、家族関係(身分関係)、仕事関係、迷惑行為等の不法行為関係といった日常的に生じる法律事件に有効である事。
A氏は、少し考えて、この事件は「訴訟代理法務」を希望した。司法書士費用(報酬)は法律問題の解決や訴訟手続きをする以上、必要になる事、新たな賃借人ができれば賃料収入で経営は建直せる事、少しでも早く問題解決がされればA氏の現状は助かる事、何もしなければこのまま不本意な事態が続いてしまう事がその理由であった。
司法書士Wは快く了解し、できるだけの事はすると応え、この事件を受任した。依頼者A氏と司法書士Wとの委任契約書等に双方が署名押印をした。A氏は本件事件の着手金を支払い、この法律事件は正式に委任契約が成立し、効力が生じた。
そして、今後の連絡方法は、メールを基本とする事を確認した。
まず、司法書士Wが賃借人Bに対し受任通知兼催告書を一般書留郵便の内容文書について証明力がある配達証明書付内容証明郵便で発送し、Bの反応を見る(この方法は仮処分前の催告となるため、建物占有者Bが機転が利く人物であればリスクが伴いますので注意が必要です。)。返信や支払う様子が無いようであれば、占有移転禁止の仮処分をした後、Bに対し更に督促状にて督促し、Bが任意に明渡しをしないのであれば訴訟提起をして勝訴判決を得、強制執行をするとの戦略を立案し、A氏に伝えた。A氏は満足そうに同意した。
※事件にもよりますが、一般的に当事者間で解決がつかない場合でも、司法書士等の法律専門実務家が、本件の法律手続に関与し事件化した旨の配達証明書付内容証明郵便受任通知を発送した場合、それだけで相手方と和解(示談)が成立する事も多いです。司法書士等の法律専門実務家は、単なる話合いだけでなく、裁判所を背景にした法律上の手続きを想定していますので、相手方にとっても自身の立場を不明確な状態にしておく事により、事態が悪化し想定外の損害賠償責任を負う恐れを案じる事や、対立的な態度で事件を複雑化・長期化する事により、将来どのような事態になるかに不安を感じるため避けたいと考えるからです。
※また、賃借人に対し、仮処分の執行がなされた段階で、賃貸人との和解が成立する事も少なくないと思います。賃借人としては、自身に対し法律的手続きである仮処分命令が出さる事自体、脅威であり、また不本意だからです。その意味で、民事保全法上の手続きは、事実上、賃借人に対する心理的圧迫を生じさせる意義もあるのです。
それでは、司法書士WがA氏の賃貸アパートに対する賃料不払いによる建物賃貸借契約の解除に基づく建物明渡請求事件(以下「本件事件」という。)について、どのように債務者Bの占有を恒定し、債権者Aの債務者Bに対する建物明渡請求権(被保全債権)の存在を確実なものにして、A氏に損害を生じさせないようにするか、その要説を概説していきます。
<民事保全法のポイント>
●民事保全法の意義
訴訟での原告の請求権や法律関係の実現を確かなものにする事(保全する事)を目的とする制度です。
●民事保全法の存在理由
民事執行法上の強制執行を補完し又は原告の権利を暫定的に守るためにするものです。
●民事保全の方法
〇仮差押え→金銭債権の支払いを保全するための手続
〇仮処分 →金銭債権以外の債権を保全するための手続き
●民事保全の種類
〇仮差押え→①不動産に対する仮差押え
②動産に対する仮差押え
③債権その他財産権に対する仮差押え
金銭債権の実現(将来の強制執行)を保全するため、債務者の責任財産につき、その処分を制限するための制度です。
〇仮処分 →①係争物に関する仮処分
(a)占有移転禁止の仮処分
(b)建物収去土地明渡しを保全するための処分禁止の仮処分
(c)不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分
等
非金銭債権の実現を保全するため、現状維持を命じ、処分を禁止するための制度です。仮差押えと同様、将来の強制執行の保全を目的としています。
②仮の地位を定める仮処分
(a)建物明渡断行の仮処分
(b)社員の地位を保全するための処分禁止の仮処分
(c)抵当権実行禁止の仮処分
(d)賃金仮払の仮処分
等
訴訟の法律関係につき、判決が確定するまで,仮の状態を定める事を命じ、原告の現在の危険を回避し、原告の地位を守るための制度です。強制執行の保全とは関係の無い、現状保全的措置です。
●所有者の占有者に対する不動産の明渡執行に対応した訴訟類型
今回の事例では、賃貸アパートの賃借人に対し、建物明渡請求をしていきますが、不動産には土地と建物がありますので、一般的に種々の明渡執行に対応する訴訟類型として次の4類型があります。そして、この民事執行法上の明渡執行の前提として、本件事件では、民事保全法上の占有移転禁止の仮処分命令を申立てます。
▼土地明渡請求
▼建物明渡請求
▼建物収去土地明渡請求
▼建物退去土地明渡請求
●民事保全手続きの構造
保全命令に関する手続きと保全執行に関する手続きの二段階構造になっています
民事保全の命令、すなわち保全命令は、保全命令裁判所に保全されるべき権利(これを「被保全権利」又は被保全債権と言います)の存在を一応認定した上で保全命令を発令する手続きです。
民事保全の執行、すなわち保全執行は、保全執行裁判所が保全命令を執行する手続きです。
保全命令手続きと保全執行続きとの関係は、判決手続き(民事訴訟法)と強制執行手続き(民事執行法)の関係に対応しています。強制執行は主に確定した勝訴判決(これを「債務名義」(さいむめいぎ)といいます。)によって執行されますが、その意味で保全命令は「保全名義」とも呼ばれる事があります。
なお、「保全命令裁判所」や「保全執行裁判所」という裁判所が特別に存在するわけではなく、手続き上の区別として各々の名称を用語として使用しているだけで、民事保全手続きの管轄裁判所については、保全命令事件は、訴訟(本案)の管轄裁判所又は仮に差押えるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所であり、保全執行事件は、裁判所が行う保全執行に関しては、執行処分を行うべき裁判所をもって保全裁判所とし、執行官の執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所が保全執行裁判所となります。具体的にどの管轄の裁判所又は執行官が執行処分を行うべきがについては、各々の保全執行毎に規定されています。
この保全執行の執行機関は、民事執行法上の執行機関と同じです。多くの保全執行では、裁判所が執行機関となります。執行官が執行機関となる場合は、動産の仮差押えや占有移転禁止の仮処分等の実力を用いる執行処分となります。
保全命令裁判所と保全執行裁判所が手続上同じ機関である場合があります。その場合は、保全命令裁判所の保全命令発令後、改めて保全執行裁判所に保全執行の申立ては不要になります。
本件事件では、建物明渡請求権を保全するための占有移転禁止の仮処分事件なので、保全命令発令裁判所がその仮処分命令を発令し、保全執行裁判所の執行官が執行機関として、実際の執行処分をします。
●民事保全手続きへの要請
①緊急性
保全命令は、口頭弁論を経ないで発令することができ(オール決定主義)、証拠は疎明で足ります。また、保全執行手続きでは、原則として執行文の付与は不要です。
※「疎明」とは、一応確からしいとの推測を裁判官に抱かせる内容の事実を言います。ちなみに、「証明」は、合理的な疑いを差し挟まない程度に真実らしいと裁判官に確信を抱かせる事実を言います。「疎明」は「証明」より立証方法が緩和されています。主に、「疎明」は民事保全法上の事実で、「証明」は民事訴訟法上の事実です。
②暫定性
権利又は法律関係を最終的に確定し、実現する手続きではないです。ただし、断行の仮処分のように単なる暫定的措置とは言えない保全手続きもあります。
③付随性
民事保全は、訴訟(本案)及びそこで確定した権利関係を実現する強制執行の手続きの存在を予定しています。
④密行性
債権者の手続きを相手方に察知されると、財産の譲渡や隠匿等の妨害手段を講じられる危険性があります。これを防止し、債務者に内密に手続きを進める必要性の事です。
●民事保全命令の発令要件
〇保全命令の申立ての趣旨の存在の主張
〇保全すべき権利(被保全債権)の存在の疎明
〇保全の必要性の存在の疎明
●民事保全命令の必要性(保全の必要性)の要件
〇仮差押命令
仮差押命令は、金銭の支払いを目的とする債権について、強制執行をする事ができなくなる恐れ、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずる恐れがあるときに発する事ができます。
▼仮処分命令の必要性
〇係争物に関する仮処分命令
係争物に関する仮処分命令は、その原状の変更により、債権者が権利を実行する事ができなくなる恐れがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずる恐れがあるときに発する事ができます。
〇仮の地位を定める仮処分命令
仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発する事ができます。
本件事件の場合は、民事保全の方法は仮処分で、種類は係争物に関する仮処分の中の「占有移転禁止の仮処分」を採用します。
●占有移転禁止の仮処分の有用性
建物賃貸借契約解除に基づく建物明渡請求事件では、、訴訟上、原告(債権者)は特定の被告(債務者)に対して建物明渡請求をしていきますが、その被告が訴訟係属中に変わった場合、原告は変わった者を新たに被告として更に請求をしなければなりません。そして、変わった被告が更に変われば、原告もそれに応じて更に変わった被告に対し請求をしなければ、自身の目的は達成できない事になります。被告からすれば、この関係を利用して、原告に正当な権利を行使させないように妨害行為する者が現れないとも言えません。
そこで、法律はこのような事態を回避し、原告が正当な権利の行使を実現できるような制度を作りました。それがこの「占有移転禁止の仮処分」です。
つまり、本件事件の場合、賃借人が賃貸人の建物明渡請求に対し、他の第三者を目的建物に占有させ、賃貸人の強制執行を不当に妨害させないために、賃借人にその占有を移させないように命令する制度です。
更に、不動産の占有移転禁止の仮処分には、その執行前に債務者を特定する事が困難な特別の事情があるときは、債務者を特定しないで発する事さえできるようにしています。
尚、その場合は、係争物である不動産の占有を解く際に占有者を特定する事ができない場合はする事ができません。
<建物明渡請求権を保全するための占有移転禁止の仮処分の手続きの目標>
(第1段階)
イメージとしては、第1段階は、まず「保全命令申立ての発令要件充足」後、「占有移転禁止の仮処分命令申立書」を起案し、保全命令裁判所に「占有移転禁止の仮処分を申立て」をします。そして、「裁判官面接」を経て「保全保証金を供託」して、「占有移転禁止の仮処分命令」を発令をして貰います。
(第2段階)
その後第2段階は、「占有移転禁止の仮処分命令の執行の申立書」を作成し、保全執行裁判所の執行官に「占有移転禁止の仮処分の執行を申立て」ます。執行官に仮処分の執行として、目的不動産に対し「占有移転禁止の仮処分命令の公示書」を貼付してもらい、最後に「執行調書」が届くという流れになります。
<建物明渡請求権を保全するための占有移転禁止の仮処分手続きの骨格>
●保全命令発令要件の充足
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●「占有移転禁止の仮処分命令申立書」起案
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●占有移転禁止の仮処分命令の申立て
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●裁判官面接(実施する裁判所のみ)
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●保全保証金を供託
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●保全命令裁判所で保全保証金の受入れ手続き
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●占有移転禁止の仮処分命令の発令
↓
●「占有移転禁止の仮処分命令の執行の申立書」作成
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●保全執行裁判所の執行官に対し占有移転禁止の仮処分の執行の申立て
↓
●占有移転禁止の仮処分命令の執行として、執行官が対象不動産に対し占有移転禁止の仮処分の公示書を貼付
↓
●執行裁判所から執行調書が到着
↓
●建物の明渡しを目的とする占有移転禁止の仮処分の手続き完了
つまり、簡単に言うと保全命令発令要件充足の後、占有移転禁止の仮処分命令申立書を起案し、保全命令裁判所に占有移転禁止の仮処分命令を申立てを行います。予納後、仮処分命令の発令後、占有移転禁止の仮処分の執行の申立書を作成し、執行官に申立てをして、占有移転禁止の仮処分の執行として執行官に目的不動産に公示書を貼付して貰う事が目標になります。
●法律関係
建物を明渡せ!
賃貸人A → 賃借人B
↓
A所有の建物占有
●建物明渡請求戦略事実
▼賃貸人Aが賃借人Bに対し建物賃貸借契約に基づきA所有の建物を引渡した。
▼賃料の支払い期限を過ぎても支払わない。
▼賃貸人Aは賃借人Bに対し未払い賃料の督促状を郵送した。
▼賃借人Bからは賃料の支払いは無かった。
▼賃貸人Aの賃借人Bに対する信頼関係は破壊された。
▼賃貸人Aの訴訟代理人は賃借人Bに対し配達証明書付内容証明郵便解除通知書兼受任通知を送付した。
※司法書士から改めて未払い賃料の支払い催告書を受任通知と共に郵送する事も考えられます。この場合は、催告に従い賃料の支払いが無い場合に解除通知書の郵送になります。
▼依頼者A氏からの事情聴取、事実関係と書面から賃貸借契約書の存在、賃料入金帳から未払い賃料が有る事が認定でき、訴訟提起も可能な状況である。
▼債務者Bの様子からもし訴訟になった場合、賃料未払いの事実を認めない可能性がある。
▼建物明渡しに際し、執行妨害を防ぐため、占有者の変更を許さない仮処分の必要性が存在する。
▼本案訴訟勝訴後、債務者Bに対し建物明渡しの強制執行により建物の占有を債権者Aに戻す。
●建物明渡請求戦略策定
①賃借人Bに対し、司法書士より解除通知書兼受任通知を郵送
②占有移転禁止の仮処分
③建物明渡請求訴訟提起
④勝訴判決確定
⑤建物明渡しの強制執行
⑥債務者Bの退去及び建物返還を達成
<建物明渡請求を目的とする占有移転禁止の仮処分手続きの流れ>
●事情聴取
※司法書士が相談者A氏からの事情聴取を行う。
↓
●保全性
※賃貸人Aと賃借人BとはA所有の建物に関し建物賃貸借契約を締結しています。しかし、数か月前から賃借人Bは賃料が未払いになっています。督促しても未払い賃料の支払いはありません。このままでは、一方的に賃貸人Aに損害が発生し続ける事になる事、占有者Bが更に占有を第三者に移転した場合、訴訟による建物明渡しの実効性が無くなる事により、賃貸人Aの建物の有効活用の利益や権利の実現に対する保全性は十分あります。
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●保全命令発令要件としての被保全債権の存在
※本件事件では「建物賃貸借契約の債務不履行による解除に基づく建物明渡請求事権」です。賃借料の未払いの事実は、建物賃貸借契約書等も存在し、証拠関係も整っています。
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●保全命令発令要件としての保全の必要性の存在を確認
※賃料未払いによる賃貸人Aの損害の継続性及び所有者Aの建物有効活用の利益に対する訴訟の実効性確保の必要性は明らかです。
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●建物明渡しのための仮処分命令発令の要件具備充足
※①保全命令の申立ての趣旨の存在の主張、②被保全権利(被保全債権)の存在、③保全の必要性の存在
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●建物明渡しのための占有移転禁止の仮処分命令申立て前の確認
※①建物の賃借人Bからの転借人の存在の有無の確認
②建物の無権限での占有者の存在の有無の確認
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●保全保証金算定
※ここが一つのポイントです。保全手続きは未だ訴訟での勝訴判決が確定していない段階で行います。つまり、賃借人Bの賃借権を制限してしまう行為です。賃借人Bとしては自身の正当な賃借権が適正に行使できなくなるので、生活や仕事に支障を来たし財産権の大きな侵害になります。
そこで、そうした賃借人Bのために法は賃貸人Aに、もしAの主張している事が裁判所で認められなかった場合、Bに対する損害を賠償させる仕組みを作りました。それが「担保、いわゆる保全保証金」です(このニュースレターでは、単に「担保」と言わず、「保全保証金」という用語を他の担保の概念と区別するために使用しています)。原則、債権者は保全手続きをする条件として予め保全保証金を立てなければなりません。本事件の場合もこの保全保証金が必要になります。
※①占有移転禁止の仮処分の場合、各々の事件によって異なりますが、一般的に不動産の評価額の1%~5%程度、適正賃料の3か月分程度のようです。
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●本案訴訟の勝訴見通し精査
※ここがもう一つのポイントです。保全手続き自体に賃貸人の目的はありません。最終の戦略目標は賃貸人所有の建物の明渡しです。そのため、実際に訴訟で勝訴しなけらば保全手続きを採用した意味が無い事はもとより、保全保証金も失う事になり損失は大きいです。
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●民事保全手続きの申立て決定
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●「占有移転禁止仮処分命令申立書」起案
※疎明方法(疎甲号証)記載例
▼賃貸借契約書
▼債務者印鑑証明書
▼不動産全部事項証明書
▼賃貸料入金帳
▼配達証明付内容証明郵便解除通知書兼受任通知
▼報告書
※添付書類記載例
▼疎甲号証写し
▼固定資産評価証明書
▼委任状
※添付書類
▼当事者目録
▼物件目録
▼委任状
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●「占有移転禁止の仮処分命令」の申立て
※保全命令裁判所に占有移転禁止の仮処分命令の申立てをします。
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●裁判官面接(実施する裁判所のみ)
※裁判権面接では、仮処分命令申立書の申立ての趣旨や申立て理由、被保全権利、保全の必要性、疎明資料、保全保証金の額等について裁判官の質問に答える形で行います。
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●供託所(法務局)での保全保証金の供託手続き
※事前に次の書類を準備しておきます。
▼供託委任状(供託用)
▼供託委任状(取戻用)※訴訟で勝訴後、保全保証金を取戻しますが、便宜上、供託の委任状と同時に取戻用の委任状も作成しておきます。
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●供託所で供託後、「供託書正本」を受取り
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●保全命令裁判所での保全保証金受入れ手続き
※予納郵券額及び目録を併せて提出する。
※提出書類
▼供託書正本
▼予納郵券
▼目録類
占有移転禁止の仮処分決定用
・当事者目録
・物件目録
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●占有移転禁止の仮処分命令発令
※この保全保証金の受入れ手続き後、仮処分命令が発令されます。
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●債権者(以下「保全債権者」という。)に占有移転禁止の仮処分の保全命令決定正本が送達(到着)
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●占有移転禁止の仮処分命令の執行申立書作成
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●保全債権者に保全命令決定正本送達後2週間以内に、保全執行裁判所の執行官に必要書類を添付して占有移転禁止の仮処分執行の申立て
※占有移転禁止の仮処分命令正本が、債務者に送達前でも保全執行に着手できます。これは、保全事件の「密行性」という特質の表れです。
※占有移転禁止の仮処分命令の執行申立書の提出と併せて、執行予納金を納付します。
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●その後、執行官等と具体的な執行方法の打合せ実施
※この後から実際の保全執行までは、この執行官等が執行日までの準備はしてくれます。勿論費用は掛かります。各々の保全事件によりますので一概には言えませんが、本件事件では一般的に約5万円程度ではないでしょうか。民事執行法上の実際の明渡しの強制執行では、作業員日当、遺留品運搬費用、倉庫保管費用等の費用が別途掛かります。
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●占有移転禁止の仮処分執行日に執行官が占有移転禁止の仮処分の執行
※保全債権者代理人司法書士Wが執行状況の確認と執行官からの質問を受付け、執行官が占有移転禁止の仮処分命令の執行の公示書を建物に貼付します。建物明渡しの保全執行分の場合、開錠技術者(施錠業者)が立会いますが、保全債権者は賃貸人であり、事前に債務者Bがカギを交換していない事を確認済みであったため、司法書士Wが保全債権者Aから合鍵を借りていました。
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●公示書貼付
※執行官は建物の見やすい場所に公示書を貼付します。そして執行官は貼付された公示書の写真撮影を行います。本件事件では、司法書士Wも貼付された公示書の写真撮影をしました。
※この公示書をはがした者に対しては、当然、封印破棄罪等の告訴をする事になります。また、再度公示書の貼付が必要になりますが、この場合は執行官に点検執行を上申し、点検執行として再度公示書の貼付をする事になります。
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●執行終了
※執行が終了すると、保全債権者代理人は執行調書添付用の用紙に署名及び押印をします。その後、解散するのです。
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●保全債権者代理人司法書士宛に執行調書到達
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●占有移転禁止の仮処分の手続き完了
以上により、賃貸人Aの賃貸アパートの賃借人Bへの当事者恒定のための占有移転禁止の仮処分がなされ、無事保全債権者Aの保全債務者Bに対する建物明渡請求権(保全すべき権利=被保全債権)の強制執行の保全がなされました。
※この【事例】は架空のものであり、実際の事件とは異なります。
いかがでしたでしょうか。
今回の事件は基本的な事件を題材にしましたが、実際も個人間の建物賃貸借契約での賃料不払い問題はそんなに複雑なケースは多くなく、今回のニュースレターは参考になるのではないでしょうか。
一番注意が必要な事は、今回のケースでも「建物賃貸借契約書」や「入金通帳」等が存在した事です。訴訟になった場合、必ず「証拠」が求められます。逆に言うと「証拠」さえ有れば保全手続きも訴訟手続きも更に強制執行も容易になります。
なお、今回のニューレターの趣旨により、占有移転禁止の仮処分命令の申立書の起案内容や添付書類、保全保証金の供託に関する法律関係については省略しました。
複雑な法律上の手続きは司法書士に任せ、皆さんは契約書、明細書、領収書等の証拠を書面等で作成して、保存しておく事を強くお勧めします。
事案の相談や依頼は、民事訴訟法務を専門分野又は取扱分野にしている法務事務所の司法書士にご相談下さい。
この知識を活かして頂き、皆さんの法律的解決の一助となれば幸いです。
最後は法律的解決しかありません あなたには最後の手段が残っています
※「民事訴訟法務」とは
「民事訴訟法務」とは、訴訟費用が比較的低額で、自身の権利の主張に有用な「本人訴訟支援」を原則に、依頼者の権利の実現を目的とした法律支援実務です。司法書士の「本人訴訟支援法務」は「訴訟代理法務」と異なり、裁判所等に提出する書類作成関係に関しては、取扱う事件に制限はありません。また、簡易裁判所管轄で、訴額が140万円以内であれば、「訴訟代理人」としての受任も可能です。
※「本人訴訟支援法務」とは
「本人訴訟支援法務」とは、一般的な法律相談の他、依頼者の意思決定の基、依頼者に代わり、依頼者から事情聴取をしながら裁判所等に提出する訴状や答弁書等の書類作成を中心に、法律専門実務家である司法書士が、いかに依頼者の権利が正当に判断されなければならないかをその書類作成に基づき、裁判手続き等を通じて支援する法律上の業務です。そして、司法書士の「本人訴訟支援務」は、裁判所等に提出する書類作成に関しては、取扱う事件に制限はありません。
「訴訟代理法務」とは、一般的な法律相談の他、簡易裁判所管轄で、訴額140万円以内の事件において、司法書士が依頼者の訴訟代理人として、依頼者と協議をしながら、司法書士自身が主体的に裁判手続きをする民事上における法律上の業務です。
一般的に、「訴訟代理法務」に比べ「本人訴訟支援法務」の方が、裁判手続きに掛かる費用が低額で済み、法律問題の解決を図る事ができます。「本人訴訟支援法務」の事件対象は、比較的複雑でない生活関係、家族関係(身分関係)、仕事関係、迷惑行為等の不法行為関係といった日常的に生じる法律事件に有効です。
※「認定司法書士」とは
訴訟代理資格を修得するための特別の研修を修了し、その認定試験に合格した簡裁訴訟代理等関係業務法務大臣認定司法書士の事を言います。民事における法律事件に関する訴訟代理の専門性は保証されます。
※「簡裁訴訟代理等関係業務」とは