ニュースレター2021 ➊ 民事訴訟法務
  
 
 
 債権者の強い味方!
 
 貸金請求のための決め手 執行証書とは!!
 
 
 
 
 今回のニュースレター2021民事訴訟法務の第1回は、私文書として作成した原案が公文書として機能する執行証書について取上げます。
 
 私達は、日頃契約をする時に契約書を作りますが、それは私文書、法律的にいうと私人の作成した文書、つまり「私署証書」になります。これに対して、公証権限のある公務員が作成した文書を「公正証書」といいますが、これは公証人が証書として作成したもので「公文書」になります。
 
 この公正証書は、公文書であり、法律的効力を持っています。その基礎となるのは信頼性です。この信頼性により、私人間だけでなく訴訟においても、また強制執行においても強い効力が認められています。
 
 そこで、この公正証書の中で、今回は特に代表的な「執行証書」について掲載し、日常生活でどのような有用性があるかを知って頂き、皆さんの役に立てて頂ければと思います。
 
 
●公証制度の意義
 
 ①紛争予防機能(予防法務系)
 
 予防司法という用語もありますが、契約、遺言等の行為について公正証書を作成し、私人の権利義務関係について明確な証拠を残すことにより、紛争の発生を未然に防止する事ができます。代表例としては、金銭消費貸借契約公正証書、遺言公正証書等です。
 
 ②紛争解決機能(予防法務系(前訴訟法務系))
 
 公正証書のうち法定の要件を満たすものは、「執行証書」と呼ばれ、給付を命じる確定判決に認められるのと同じ執行力が法律上認められています。紛争が生じてから訴訟を提起し、勝訴判決を取得する場合と異なり、当事者間に紛争が生じていない時期に、予め将来強制執行が必要になる場合に備えて、簡易な形式で債務名義(訴訟での確定判決等)を用意する事ができます。これは公正証書の大きな特長でしょう。代表例としては、示談書(和解書)です。
 
 
●公証人とは
 
 「公証」とは、私人の生活に関する事実を公の機関によって証明する国家の作用とされています。公証人は、このような公証作用を証書の作成等の方法によって固有の職務として行う国家の機関です。公証人により、書面による証明を行う制度が公証制度です。
 
 公証人は、国家公務員法上の国家公務員ではありませんが、広い意味で国家公務員となります。
 
 
公正証書の作成方法の概略
 
 公正証書は、その作成を希望する人(以下「嘱託人」という。)の委任(以下「嘱託」という。)に基づいて作成され、その内容は公証人が嘱託人から聴取した陳述や目撃状況等を取りまとめる形で証書に記載する事によって作成します。つまり、公正証書自体の作成は法令の定める方式に従って公証人が行うのです。
 
 従って、例えば金銭消費貸借契約書の原案ができていれば、その原案を公証人に見て頂き、内容に問題がなければその原案に基づき金銭消費貸借契約公正証書が作成される事になります。
 
 その上で、例えば公証人役場で公証人に公正証書の作成を嘱託した場合、公証人が公正証書を作成し、公証人、その契約当事者が公正証書に署名押印し、個人の場合は印鑑証明書によって本人確認をしているときは、その公正証書に実印を押印します。
 
 ※法律上の正式な名称は「公証人役場」と言います。東京公証人会は、その所在する地名を冠し「×××公証役場」という名称を使用している例が多いとの事です。公証人役場は平成25年4月8日現在、全国に288カ所あり、全国の公証人は、都道府県に1つずつの会(但し、北海道は4会)の合計50の公証人会のいずれかに所属しています。公証人の人数は平成25年4月8日現在495人となっています。
 
 公証人は、法務省令によって管轄の法務局又は地方法務局毎に定められ、原則、いわゆる法曹有資格者(簡易裁判所判事と副検事は除く。)から法務大臣によって任命されます。更に、弁護士からの任命も可能です。
 
 管轄法務局区域内に公証人がいない場合は、裁判官や検察官に準ずる学識経験を有する者で、検察官・公証人特別任用審査会の選考に合格した者を公証人に任命する事になっていますが、実際には法務局長や最高裁大法廷主席書記官等の経験者が任命されているとの事です。
 
 平成15年中に採用される公証人から、公募制を取り入れるようになりました。
例えば、選考任用公証人の公募では、裁判所書記官、事務官、法務・検察事務官、簡裁判事を対象に多年法務に携った経験を有するものとして公証人審査会の定める基準に該当する者を採用しています。また、15年以上の実務経験のある司法書士等もその対象に含まれています。
 
 選考任用者には年1回、欠員が見込まれる地域の管轄地方法務局等に「選考申込案内」を掲示等し広告されます。選考任用者には、口述試験が課されますが、経歴判定による合格者が一定数を超える場合は、所要の法律科目について口述試験の前に筆記試験が実施されます。
 
 公証人には、その基本法である公証人法により定年の定めはありませんが、原則として依願退職の形式で70歳定年として運用されています。公証人の実際の在職期間は、7年から10年前後と言われています。
 
 また、公証人役場で公証人の執務を補助して仕事をする職員を書記と呼びます。書記は、公務員ではなく公証人の被用者ですが、法令上、公証人役場で取扱う事務については守秘義務を負っています。公証人は書記に対し、予め公証人が職務上漏らす事ができない事項を漏らさない旨を誓約させなければなりません(公証人法施行規則第6条)。
 
 契約に関する公正証書は、嘱託人が債権者と債務者である場合には、通常、原本、正本、謄本の3通1組で作成され、原本は公証人役場に保管され、正本は債権者に謄本は債務者に交付されます。
 
 最後に、嘱託人は公正証書作成の所定の手数料を支払い受領書を受取ります。
 
 尚、公正証書の原本には印鑑証明書や代理人による嘱託の場合の委任状、第三者の承諾書や同意書が一緒に合綴されて保存されます。その保存期間は20年です。
 
 注意点ですが、公証人法上、嘱託人の方から公証人役場に出向く場合は、全国どの公証人役場でも選択できますが、公証人が嘱託人の自宅や入院先の病院に外出する場合は、その自宅や病院の所在する地域を管轄する法務局又は地方法務局に所属する公証人でなければならない事になっています。この規定は、実際の場面では、遺言公正証書の作成等、遺言者の入院先に公証人が外出する等の場面で特に気を付けなければなりません。
 
 以上のような形式で公正証書は作成されます。つまり、公証人に公正証書の作成を希望する場合は、まず公証人役場に出向くか、少なくても電話等で公証人に嘱託の意向やその内容を説明する事から始まる事になるのです。
 
 このニュースレターで取上げている執行証書も基本的にはこの方法ですが、今回は単に執行証書の作成ではなく、金銭消費貸借契約公正証書上での執行証書の作成をテーマにします。つまり、公正証書の紛争予防機能と紛争解決機能の2つの併合型です。
 
 何故なら、通常、金銭の貸し借りで契約書を作成した際、後日弁済されない事態に陥ったとき、民事保全手続きや訴訟提起で貸金の返還を求めますが、この執行証書を金銭消費貸借契約公正証書上で作成しておけば、この公正証書自体に判決と同じ執行力があるため、この執行証書を基に強制執行が可能になり、民事保全法や民事訴訟法に関係なく直接民事執行上の強制執行ができ、債権者にとってとても有効だからです。
 
 
●公正証書作成の手続き概略
 
 ▼嘱託人の本人確認の重要性
 
 公正証書は、その基盤に信頼性があります。公正証書の信頼性が揺らいだ場合、それはもはや公正証書として機能しなくなってしまいます。
 
 そこで、最も大事な手続きが嘱託人の本人確認です。公正証書作成の嘱託の場合には、その重要性から「それ自体で本人である事の同一性が判断できるほど、確実で信頼性の高い証明書」によって証明することが必要です。
 
 個人の場合は、原則は印鑑証明書(作成後3カ月以内)です。それ以外では、自動車運転免許証、旅券、身体障害者手帳等で、外国籍の方は、在留カードです。これらは、 いずれも官公署が作成して本人に交付した文書で、被交付者の写真が貼付されており、性別、生年月日の記載と写真によって本人である事を確認できる事から、印鑑証明書の提出に準ずべき確実な方法に該当するとされています。
 
 実際の場面でも、本人確認書類の多数が印鑑証明書になっているようです。従って、よく誤解されている方がいますが、名刺や金融機関のキャッシュカード、定期券、預金通帳、会社の社員証等は本人確認書類にはなりませんので注意して下さい。
 
 更に、国民健康保険証、住民票の謄本については、これらは公文書ですが写真の貼付がなく、住民票の謄本等は本人以外の者でも交付を受ける事ができますので、本人である事の証明にはなりません。しかし、事案によっては、国民健康保険証と年金手帳といった2点の提示により認めている場合もあるようです。しかし、一般的に住民票は本人確認書類としては前述の理由から不適切でしょう。
 
 また、公正証書の重要性から、公証人は嘱託人の本人確認の方法を公正証書に記載しておく事になっています。
 
 尚、私署証書(私文書)の認証の場合も、嘱託人の本人確認方法は同じです。
 
 
 ▼代理人による嘱託
 
 公正証書の作成の嘱託は、代理人によってもする事ができます。代理人は意思能力があれば基本的に誰でもなる事ができます。但し、遺言は代理人よってする事はできず、本人からの直接の嘱託が必要になりますので注意して下さい。また、任意後見契約その他の重要な身分行為に関する公正証書の作成は、代理嘱託である事が可能とされていますが、同じ趣旨により、公証人は本人の意思確認が極めて重要であり、極力直接本人からの嘱託の意思を確認する事が求められています。これは、不動産登記法上の本人確認や意思確認の重要性の趣旨と通じるところです。
 
 また、代理人からの嘱託が認められる場合でも、本人の意思を正確に把握するため、代理権の存在やその範囲等の確認について、厳格な手続きが求められる事は言うまでもありません。
 
 具体的には、代理人にから公正証書の作成を嘱託する場合は、代理人の権限を証する委任状によってその権限を証明します。そして、委任者本人による署名と実印による押印で印鑑証明書を添付する必要があります。
 
 尚、公証人は、代理人の嘱託により公正証書を作成した場合は、代理人が本人の雇人又は同居者である場合を除き、公正証書を作成した日から3カ月以内に所定の事項を本人に通知しなければならない事になっています。
 
 代理人選任の制限については、基本的に意思能力があれば誰でも選任できますが、親権者とその子の利益相反する行為や後見人と被後見人との利益相反行為の場合(後見監督人が存在する場合を除く)は選任できません。
 
 また、債務者が債権者を自分の代理人に選任したり、双方が共通の代理人を選任する事は適当ではないので、嘱託に応じないというのが公証実務の取扱いとなっているようです。
 
 
 ▼手数料
 
 公証人が公正証書等を作成した場合の手数料は、政令である「公証人手数料令」によって定まっています。必要により旅費や日当についても加算されます。尚、手数料には消費税は掛かりません。
 
 
 ▼公正証書の保存期間
 
 原本の保存期間は、原則20年です。但し、公証人役場によっても異なると思いますが、遺言については、遺言者の死亡が確認できない場合が多いので、現在は、特に保存期間を定めずに半永久的に保存されている例が多いよとの事です。
 
 
 ▼公正証書原本の閲覧
 
 公証人役場に保存されている公正証書原本の閲覧は、嘱託人、その承継者又は証書の趣旨につき法律上の利害関係を有する者及び検察官に限られています。
 
 
 ▼正本の交付
 
 正本の交付を受けれられる者は、嘱託人及びその承継人に限られます。債務者も嘱託人に該当しますが、法律上正本を必要とするのは債権者の債務名義として手続する執行証書なので、債務者には通常は謄本が交付されます。
 
 また、遺言公正証書の遺言執行者及び相続人は、承継者には該当しませんので正本の交付請求はできない事を注意して下さい。
 
 
 ▼謄本の交付
 
 謄本の交付が受けられる者は、嘱託人及びその承継人の他、証書の趣旨につき法律上の利害関係を有する者に限られます。原本の閲覧請求ができる者の範囲と同じです。
 
 
●公正証書による強制執行
 
 
 ▼執行証書の意義
 
 公正証書で強制執行ができるのは、執行証書と呼ばれる公正証書の事です。執行証書を作成しておけば、例えば金銭消費貸借契約で借主が貸金の返済をしなかった場合、その執行証書で訴訟を提起して債権者の請求権の存在を証明しなくても、その執行証書を持って直ちに強制執行をして債権を回収する事ができるのです。
 
 
 ▼執行証書の制度
 
 執行証書とは、執行力、すなわち民事執行法に定める債務名義(訴訟での確定判決等)としてこれにより直ちに強制執行をする事ができる効力を備えた公正証書のことです。
 
 具体的には、債務者が債権者に対し一定の額の金銭の支払いを約束るす文言と債務者が金銭債務を履行しない時は直ちに強制執行に服する旨の文言(これを「強制執行認諾文言」といいます。)が記載されている公正証書です。この公正証書を作成しておけば、後日、債務者に金銭債務の不履行があった時に、改めて訴訟を提起したり、支払督促を行ったりしなくても、その公正証書により直ちに強制執行に着手出来る事になります。
 
 この事により、債務者の他の債権者より先に迅速に強制執行手続きを開始する事ができ、とても優位に立つ事ができます。債権者にとっては債権回収の強い味方になるのです。
 
 
 ▼執行証書の要件
 
 公正証書が執行証書として機能するためには、次の2つの要件を充足する必要があります。
 
 ①一定の金銭の支払いを目的とする請求権につていの公正証書である事。
 
 ②債務者が債務を履行しない時は、直ちに強制執行に服するとの陳述がある事。
 
 このうち②の文言を特に「強制執行認諾文言」又は「強制執行受諾文言」といい、執行証書の中心的要件になります。
 
 
 ▼一般的な契約公正証書との併合
 
 執行証書は、それ自体1つの公正証書として成立しますが、更に有用性を高めるためには契約書との併合的作成が有効です。執行証書は、契約の債務不履行や事故等の不法行為の場面で、債務者と示談(和解)をするようなときに利用される事が多いでしょう。
 
 しかし、そのような場面では、お互いの信頼関係が毀損した状態に陥っている事が殆どだと考えられるので、公証人役場での冷静な執行証書作成といった手続きも思うに任せない状況です。
 
 そこで、例えば、この執行証書は債務者の金銭債務の不履行を想定していますので、金銭消費貸借契約書に強制執行認諾文言を契約条項として追加しておけば、契約成立段階から債権者には強制執行まで含めた契約が可能になり、安心感が高まります。
 
 
 ▼強制執行開始の要件
 
 
 〇執行文の付与と執行証書正本等の債務者への送達
 
 強制執行開始の要件は、次の2つです。
 
 ①執行証書の正本に執行文の付与を受ける事。
 
 ②執行証書の正本又は謄本を予め執行を受けるべき債務者に送達されている事です。
 
 この要件は、一般的な強制執行の開始の要件ですが、執行証書でも同じです。
 
 執行文は、債務名義の執行力の存在と範囲(客観的範囲、主観的範囲)を公証する文書であり、執行文により、執行当事者が確定され(主観的範囲)、債務名義の給付請求権の範囲(客観的範囲)が確定されます。
 
 執行証書正本等の予めの債務者への送達の目的は、債務者に書類の内容を確認させ、送付の日時等を明らかにし、後日の紛争を防止するためです。
 
 
 〇執行証書の送達方法
 
 公証人のする送達は、公証人役場における交付送達、書留郵便に付する送達、郵便業務従事者に実施させる特別送達があります。
 
 送達が完了した場合は、公証人の作成する執行証書正本等送達証明書によって執行機関に証明して、執行の開始しを申立てる事になります。
 
 ここでポイントは、公証人が執行証書の作成嘱託のために公証人役場に出頭した債務者等に対し、執行証書の謄本等を直接交付する事ができるという事です。この事により金銭消費貸借契約公正証書兼執行証書の作成の際、債務者が出頭している場合には交付送達をしておけば、後日、強制執行の際、執行証書に執行文の付与を受けるだけで直ぐに強制執行が開始できるようになるのです。強制執行の際、執行証書正本等の債務者への送達は、その時点で債務者の住所が不明であったり、所在が明らかでない等強制執行開始の要件が事実上充足できず、大変時間や労力を要する事を回避できるので、債権者にとっては非常に有効です。
 
 
 〇執行文付与の手続き
 
 執行証書の正本を所持する債権者が、執行証書の原本を保管する公証人に対し、執行文の付与を申立てます。執行文付与の申請は、書面で申立てなければなりません
 
 
●金銭消費貸借契約公正証書
 
 
 ▼書面による金銭消費貸借契約
 
 諾成契約です。諾成契約とは、当事者の申込みとこれに対する承諾のみによって成立する契約の事です。金銭消費貸借契約公正証書兼執行証書は、契約当事者の申込みと承諾が合致した段階で成立し、作成する事ができます。この契約形式は、2020年4月1日施行の改正民法にによって初めて認められました。
 
 
 ▼書面によらない金銭消費貸借契約
 
 要物契約です。要物契約とは、当事者の意思表示の合致に加えて、一方当事者からの目的物の引渡し、その他の給付があってはじめて成立する契約の事です。このニュースレターでは、公正証書を取上げていますので、契約は書面で作成する事を前提にしているため、書面によらない金銭消費貸借契約の解説は致しません。
 
 
●強制執行認諾条項付金銭消費貸借契約公正証書の必要事項等
 
 金銭消費貸借契約書は、公正証書で作成しなくても、その条項は一般的に定まっています。一般的な契約条項を基に作成した金銭消費貸借契約書に強制執行認諾条項を加えて、強制執行認諾条項付金銭消費貸借契約公正証書を作成するのがいいでしょう。
 
 次に、強制執行認諾条項付金銭消費貸借契約公正証書の作成に当たり、一般的に必要となる条項を挙げますので参考として下さい。
 
 
 ▼契約書表題
 
 「金銭消費貸借契約公正証書」である旨のタイトルを表記します。一般的に、この契約書の契約条項の中に強制執行認諾条項が規定されていても、「強制執行認諾条項付金銭消費貸借契約公正証書」という表題にはしません。
 
 
 ▼金銭消費貸借契約締結の事実記載
 
 貸主(甲)、借主(乙)及び連帯保証人(丙)が金銭消費貸借契約を締結した旨の文章を記載します。
 
 
 ▼第1条(金銭消費貸借条項)
 
 甲は、〇〇年〇〇月〇〇日に金□,□□□,□□□円を貸渡し、乙は同日これを借受けた旨の記載をします。
 
 ▼第2条(貸付条件条項)
 
 (一括弁済の場合)
 
 ①弁済期    令和〇〇年〇〇月〇〇日
 ②利息     年〇.〇%(年365日日割計算)
 ③利息支払時期 弁済期に元金と併せて支払う。
 ④遅延損害金  年〇.〇%(年365日日割計算)
 
 (分割弁済の場合)
 
 乙は、甲に対し、元金については、令和〇〇年〇〇月末日から令和〇〇年〇〇月末日までに毎月末日限り金□□,□□□円ずつに分割して、利息については、利息年〇.〇%(年365日日割計算)を令和〇〇年〇〇月末日から毎月末日限り当月分の利息を弁済する。遅延損害金は、年〇.〇%(年365日日割計算)とする。
 
 
 ▼第3条(弁済方法条項)
 
 第1項 乙は、甲の指定する次項の金融機関の口座に貸付条件に従い弁済する。尚、振込手数料は、乙の負担とする。
 但し、乙から甲への現実の現金の弁済をする事を妨げない。
 
 第2項 振込先金融機関等
  ①銀行名 〇〇銀行 〇〇支店
  ②口座種類 〇〇預金
  ③口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
  ④口座名義人 〇〇〇〇 ※貸主甲の氏名
 
 
 ▼第4条(繰上弁済条項)
 
 第1項 乙は、繰上弁済をする事ができる場合は、その旨の記載をします。
 
 第2項 この場合、繰上弁済額が、分割弁済額、分割弁済額超、分割弁済額未満、当月分利息額、当月分利息額超、当月利息額未満、債務額全額の各弁済額に対しての甲の弁済充当額の指定の規定を定めます。
 
 
 ▼第5条(連帯保証人条項)
 
 連帯保証人が存在する場合は、その旨と丙(連帯保証人)が甲に対し、乙と連帯して保証し、弁済の責任を負う旨を記載します。
 
 
 ▼第6条(担保条項)
 
 担保が存在する場合は、その債権発生原因、契約等の種類、金額等を記載します。
 
 
 ▼第7条(権利の質入れ及び譲渡の禁止条項)
 
 第1項 この契約による乙の権利の全部又は一部を第三者に質入れ及び譲渡を禁止する場合は、その旨を記載します。
 
 第2項 乙が前項の質入れ及び譲渡をする場合の例外条項を規定します。例えば、甲の事前の同意等です。
 
 
 ▼第8条(期限の利益の喪失条項)
 
 次の2つの場合に分けて規定します。
 
 第1項 次の1つに該当した場合は、甲からの督促等がなくても乙は直ちに期限の利益を失い、甲に対し、元利金とこれに対する期限の利益喪失の翌日から完済までの遅延損害金を一括して弁済しなければならない。
 
  ①競売又は破産の申立て、民事再生手続き又は会社更生手続き又は特別清算手続きの開始をした時
  ②差押、仮差押、仮処分及び競売又は破産の申立てを受けた時
  ③公租公課の滞納処分があった時
  ④手形交換所から取引停止処分を受けた時
  ⑤甲に通知することなく住所を移転した時
 
 第2項 次の1つでも該当した場合、乙は、甲の督促によって、甲に対する一切の債務について期限の利益を失い、直ちに債務を弁済しなければならない。
 
  ①乙の債務の一部でも履行を遅滞した時
  ②乙が、第5条、第6条の担保を提供しない時
  ③本契約の定めに違反した時
  ④乙が信用を損なう事由が生じた時
  ⑤債権保全を必要とする事由が生じた時
 
 
 ▼第9条(強制執行認諾条項付金銭消費貸借公正証書条項)
 
 ※金銭消費貸借契約に強制執行認諾条項を加えて公正証書にする大きなメリットとして、訴訟等の手続きによらずに公正証書(執行証書)によって強制執行をする事ができる事にあります。
 
 強制執行認諾条項としては、債務者や連帯保証人が次の文言を公証人に対し陳述し、契約条項に加える事です。
 
 「公正証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する。」
 
 この陳述は、代理人によってもできますが、委任状に「強制執行認諾条項付公正証書の作成嘱託を委任する。」旨を明記する必要があります。
 
 尚、この陳述は、訴訟行為であると解されています。
 
 
 
 強制執行認諾条項付金銭消費貸借公正証書である旨を規定します。
 
 第1項 乙及び丙は、本契約書を金銭消費貸借契約公正証書とする事を承諾する。
 
 第2項 乙及び丙は、本契約上の債務について、強制執行認諾文言付き金銭消費貸借契約公正証書とする事を承諾する。
 
 第3項 前項の作成に当たり、乙及び丙は、その作成に必要な委任状及び印鑑証明書各1通を甲に対し交付する。
 
 第3項 強制執行認諾条項付金銭消費貸借契約公正証書作成費用は乙の負担とする。
 
 
 ▼第10条(報告義務条項)
 
 第1項 乙は、甲に対し、乙の住所の移転、氏名の変更等及び乙の資産につき重大な事由が生じた時は、遅滞なく又不足なく報告しなければならない。
 
 第2項 甲が、乙に対し、報告を求めた時は、その内容を遅滞なく又不足なく報告しなければならない。
 
 
 ▼第11条(協議条項)
 
 本契約に定めのない事項につて、甲並びに乙及び丙は、誠意を持って協議する旨の条項を規定します。
 
 
 ▼第12条(専属的合意管轄条項)
 
 本契約に関し、裁判上の紛争が生じた時の管轄する裁判所を規定します。
 
 
 ▼最後の文章
 
 本契約の成立を証するため、本契約書3通を作成し、甲乙丙署名押印の上、各1通を保管する旨の記載します。
 
 
 ▼契約最後
 
 契約年月日及び甲、乙、丙の各当事者が住所、氏名を記入し、実印を押印します。各当事者の住所の記入並びに署名及び実印の押印は、健常者であれば代理、代行(代筆)ではなく本人に記入並びに署名押印をして頂きましょう。
 
 
 ▼その他記載事項
 
 この他、契約当事者の合意事項を金銭消費貸借契約条項に適宜記載します。
 
 
 ▼貼用印紙
 
 印紙税法は、消費貸借契約書には、印紙税を納付する旨の規定があります。所定の印紙を貼付します。
 
 
 
 
  
 
 いかがでしたでしょうか。
 
 
 このようにして、強制執行認諾条項付金銭消費貸借契約公正証書を作成する事ができます。
 
 
 日常のトラブルではその事実関係を証明する証拠を書面の形で保管しておく事がとても大事です。また、最近では機器の性能や機能が向上したことにより、会話の録音や事象の録画も手軽にできるようになりました。この録音及び録画も事実を証明するための有効な手段です。
 
 
 法律的トラブルの対処のために、このような証拠について常日頃から気を付けて頂き、皆さんの主張の正しさを証明できるようにしておく事を強くお勧めします。
 
 
 公正証書や執行証書のご相談は、民事訴訟法務を専門分野又は取扱分野としている法務事務所の司法書士にご相談下さい。
 
 
 
 今回のニュースレターも是非参考にしてみて下さい。
 
 
 
 
 
 
 
最後は法律的解決しかありません  あなたには最後の手段が残っています
 
 
 
 
 
 
「民事訴訟法務」とは
 
 「民事訴訟法務」とは、訴訟費用が比較的低額で、自身の権利の主張に有用な「本人訴訟支援」を原則に、依頼者の権利の実現を目的とした法律支援実務です。司法書士の「本人訴訟支援法務」「訴訟代理法務」と異なり、裁判所等に提出する書類作成関係に関しては、取扱う事件に制限はありません。また、簡易裁判所管轄で、訴額が140万円以内であれば、「訴訟代理人」としての受任も可能です。
 
 
「本人訴訟支援法務」「訴訟代理法務」とは
 
 「本人訴訟支援法務」とは、一般的な法律相談の他、依頼者の意思決定の基、依頼者に代わり、依頼者から事情聴取をしながら裁判所等に提出する訴状や答弁書等の書類作成を中心に、法律専門実務家である司法書士が、いかに依頼者の権利が正当に判断されなければならないかをその書類作成に基づき、裁判手続き等を通じて支援する法律上の業務です。そして、司法書士の「本人訴訟支援法務」は、裁判所等に提出する書類作成に関しては、取扱う事件に制限はありません。
 
 「訴訟代理法務」とは、一般的な法律相談の他、簡易裁判所管轄で、訴額140万円以内の事件において、司法書士が依頼者の訴訟代理人として、依頼者と協議をしながら、司法書士自身が主体的に裁判手続きをする民事上における法律上の業務です。
 
 一般的に、「訴訟代理法務」に比べ「本人訴訟支援法務」の方が、裁判手続きに掛かる費用が低額で済み、法律問題の解決を図る事ができます。「本人訴訟支援法務」の事件対象は、比較的複雑でない生活関係、家族関係(身分関係)、仕事関係、事故関係、迷惑行為等の不法行為関係といった日常的に生じる法律事件に有効です。
 
 
「認定司法書士」とは
 
 「認定司法書士」とは、訴訟代理資格を修得するための特別の研修を修了し、その認定試験に合格した簡裁訴訟代理等関係業務法務大臣認定司法書士の事を言います。民事における法律事件に関する訴訟代理の専門性は公式に認められています。
 
 
「簡裁訴訟代理等関係業務」とは
 
 「簡裁訴訟代理等関係業務」とは、簡易裁判所において取扱う事ができる民事事件(訴訟の目的の価格が140万円以内の事件)についての代理業務等であり、主な業務は次の通りです。
 
 民事訴訟手続き
 ②民事訴訟法上の和解の手続き
 ③民事訴訟法上の支払い督促手続き
 ④民事訴訟法上の訴え提起前における証拠保全手続き
 ⑤民事保全法上の手続き
 ⑥民事調停法上の手続き
 ⑦民事執行法上の少額訴訟債権執行手続き
 ⑧民事に関する紛争の相談、仲裁手続き、裁判外の和解手続き 
 
 
 
 
 
(2021年3月2日(火) リリース)