ニュースレター2021 ➊ 民事信託法務
  
 
 
最先端の法技術
 
民 事 信 託 入 門
 
民事信託とは一体何なのか 
 
ー 発 祥 と 発 展 ー 
  
 
 
 ニュースレター2021の第1回民事信託法務は、今注目の民事信託の入門編です
 
 「民事信託」という名称は聞いた事があるけど、ハッキリとした意味が解らない、難しそうで手が出ない、何となく怖い、そういった方が多いのではないでしょうか。今回は、民事信託の利用方法を検討する前に、そもそも民事信託とはどのような法技術で、何とためにあるのか、そしてどのような事ができるのか、何故民事信託が利用されているのか、という民事信託を殆ど知らない方のために、民事信託の発祥から現在までの発展の概要を取上げ、その有用性を知って頂くニュースレターです。
 
  
そもそも民事信託とは 一体何なのか?
 
 
 という疑問にお答えし、民事信託に興味や関心のある方は、このニュースレターをご覧頂き、民事信託を身近に感じ、必要と感じた方は是非、ご利用を検討して頂く事をお勧めします。
 
 
 
●民事信託とは
 
 
▼信託とは
 
 民事信託の中で代表的な利用方法は「福祉型家族民事信託」です。何故なら、この利用形態は、イギリスで発祥した信託という内容の契約で、最も最初に利用された方法だからです。つまり、もともと信託という用語もない中世ヨーロッパで発症したこの契約形態は、一番身近な親族のために生まれ、後に信託という契約形態として定着したものと解されているからなのです。
 
 従って、民事信託は、現在では様々な利用形態がありますが、もともとは家族との関係で契約される利用形態で、家族間での信託契約が最も親和性がある利用形態であるといってもいいでしょう。
 
 民事信託とは、
 
 
私の大切な人のために 財産を信頼する人に移転し
 
その信頼する人は 私に代わって 大切にしている人のために
 
その財産から得る利益を 私の大切な人に与える という契約です
 
 
▼民事信託という用語の意味
 
 民事信託という用語は、商事信託という用語の反対語です。
 
 民事信託も契約なので、何らかの法律上の根拠が必要になります。この国では、その法律の名称を「信託法」といいます。この信託法に基づき、私達は信託契約を締結する事ができるのです。
 
 そして、商事信託は、この信託法の特別法である「信託業法」によって規制された信託になります。因みに、信託法は私達の生活を規定する基本法である民法の特別法に当たります。
 
 つまり、商売で信託をしようとする人達、この国では信託銀行や信託会社は、信託法によって基礎付けられた信託業法の規制に服して商売をしなければならないという事であり、この法律関係で締結された信託を特に「商事信託」と呼んでいます。
 
 そして、民法の特別法である信託法を利用して、私人である個人が信託契約をしようと考えたとき、その契約を「民事信託」と呼んでいるのです。
 
 従って、「民事信託」も「商事信託」も法律用語ではなく、業界用語又は日常用語という事になります。「民事信託」や「商事信託」という用語で法律を調べても該当する法律が無いのはそのためです。
 
 今、注目を浴びているのは、「民事信託」の事です。
 
 この民事信託の契約種類として、福祉型民事信託や資産管理型民事信託、自己実現支援民事信託、株式民事信託、事業民事信託、自己民事信託等適宜名称が付いた種類の活用事例があり、例えば、福祉型民事信託の類型には、福祉型家族民事信託といった利用形態が位置付けられるでしょう。
 
 そして、この中で最もポピュラーな民事信託の契約種類は福祉型民事信託で、類型は福祉型家族民事信託という事になります
 
 
▼民事信託の法的特性
 
 
「信託はあぶない」
 
 
 という事が言われたりしますが、この場合の「信託」とは「商事信託」の事です。何しろ、信託をビジネスとして行っていますで、常に利益が必要になり、信託する人はハイリスク・ハイリターンを狙って信託銀行等に自身の財産を信託するわけですから。例えば、株式信託等が典型例になります。勿論、元本保証の商品も有りますが、信託銀行等に信託する人達の多くは生活費が十分に有り、不動産も所有していて、更にお金(マネー)がある富裕層が中心で、この人達は現金を銀行に預けていても増えないので、余ったお金を増やす事に関心がある人達になります。従って、少々損をしても、利益が多く出る可能性があれば信託するのです。
 
 
民事信託は 商事信託とは 違う
 
 
 今注目を浴びている信託は、「民事信託」であり、信託業法によって制限されたビジネスとは違う信託で、営利目的ではない事から、その信託法を利用した契約の活用事例の自由度は想像以上のものになります。
 
 民事信託の根拠は信託法にありますが、この信託法は民法の特別法であり、基本法である民法ができない事、禁止している事の枠を超えて契約ができるところにその特長があります。
 
 民事信託も商事信託も信託法に基づく信託という意味では変わりありませんが、このこのニュ-スレターでは、民事信託をテーマにしていますので、商事信託の内容になる事項は解説の中に入りませんので、ご了承下さい。
 
 民事信託は基本法である民法の特別法である信託法に基づき利用されるという意味は、それは基本法ではできない事を特別法ではできるという意味になります。
 
 その最も特別な内容は、「財産の移転」方法にあります。民事信託は財産を移転して、名義まで変えてしまう方法なので、抵抗感があるという方が多いと思いますが、そもそも民事信託は特別法により財産を移転させる事ができるから、有用性があるのであり、財産を移転させなければならないという発想はありません。
 
 
財産を移転させなければならない
 
という制約ではなく
 
財産を移転させる事ができる
 
という発想
 
 
 から得られる利益を目的に、人々はこの民事信託を利用するのです。
 
 それは、この信託という方法が誕生した中世ヨーロッパの人々の必要性から生まれた発想なのです。
 
そうした時代背景の中で選ばれたのが、財産の移転です。
 
 
信託は 中世ヨーロッパの人々の必要性から生まれた
 
それは
 
封建国家の法制度の制約から 自分の家族を守るために選択されたのが
 
財産の移転
 
 
●民事信託の歴史
 
 それでは、民事信託の発祥について見ていきましょう。
 
 
▼信託の発祥
 
 前述しています通り、信託という方法は中世ヨーロッパのイギリスで発祥しました。それは十字軍の遠征や家族間の財産の承継方法として考えられました。
 
 封建社会であった中世イングランドでは、封建制度を支える様々な法制度が存在していました。領主とその支配下にある臣下との関係は、現在の所有権の概念は無く、相続時には領主によって様々な制約が臣下に課され、相続人が存在しない時は、大切な封土は没収となる等、酷い社会でした。簡単に言えば、「お前の物は俺の物、俺の物は俺の物」といった時代であったのです。
 
 そこで、臣下は、
 
 
「長男に相続させ かつ 封建的義務を免れる事ができないか。」
 
「相続人不存在の場合の封土没収を避け 
 
自分の選ぶ者に封土を相続させられないか。」
 
「長男以外に相続させる事はできないか。」
 
 
 といった事を考え、対策を創り出したのです。つまり、
 
 
財産を自分の財産にしておくから 相続時に封土の権利が侵害されるのだ
 
 
 という発想です。
 
 例えば、
 
 
臣下の信頼のおける友人に臣下の財産である土地を譲渡し
 
臣下が生きているうちは臣下のために
 
臣下が死んだ後は臣下の子供にその財産である土地を引渡す
 
 
 という約束をする事です。
 
 この対策は、臣下が領主から自身の財産である土地を侵奪されないためにするものです。つまり、臣下が領主から自身の財産である土地を守るためには、その大切な財産である土地が、臣下の財産でなくなれば、領主の手から逃れる事ができるという考え方です。
 
 ここに、信託の本質的観念があります。普通、私達は、自分の財産は絶対的な物であり、誰からも脅かされないという基本に立って日常を過ごしています。その反射的作用として、自身の財産は自分固有の物であり、手放したら、二度と自分の自由にはならないという観念があるのです。
 
 実際、日本国憲法では、財産権の保障が規定されています。そして、私達の日常を規定している基本法である民法では、この憲法に従って、所有権は、法令の制限において(憲法の規定する範囲においてという意味です。)、自由にその所有物の使用、収益及び処分する権利を有すると規定され、所有権者にその所有物の権利があり、自由に保存、利用、改良、処分ができる事を認めています。
 
 この立憲主義による財産権の保障は、私達の生活の中で、定着しており、財産権は中世ヨーロッパと違い、むやみに侵奪される事はなくなりました。逆に、その観念があるので、財産権を他人に譲渡する事に対する抵抗感が固定観念のとして生まれたのです。
 
 確かに、この国では財産権は絶対的なものです。しかし、この所有権の考え方があるため、現代では不都合な事が起こっているのです。もう一度、所有権について振返ってみましょう。
 
 
所有権者は その財産を 自由に 保存 利用 改良 処分 できる
 
 
 わけですが、それでは例えば処分はどのようにするのでしょうか?
 
 法律上で処分といえば、財産を売却する事です。財産を売却するには所有者の意思が必要になります。所有者の「財産の売却の意思」です。憲法に基づく基本法である民法には、所有権の規定の他に、「法律行為(売買契約等の事です。)の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」という規定があります。
 
 現代は、高齢化社会です。認知症高齢者は500万人とも600万人とも言われ、内閣府の推計では、第一次ベビーブーム(1947年~1949年)の時に生まれた、いわゆる「団塊の世代」が75歳(後期高齢者)に達する2025年には認知症高齢者数は700万人になるとされています。
 
 現代は、健康である期間とその後に訪れる高齢の期間を経験する事になり、高齢化社会とはこの高齢の期間が長期間に亘る事を意味しています。本来、高齢化社会は長寿社会で幸福な時代ですが、法律の世界では個人の意思の尊重という理念から、何か法律的行為、つまり契約(お金を払って者やサービスを得るといった行為の事。)をする際には、その当事者に意思能力が必要となります。すなわち、個人の財産はその個人の物で、他人はその財産に手を出す事ができない、これが、所有権の保障であり、それを支える理念が個人の意思の尊重ですが、逆に言えば、財産の持主に意思能力が無い場合、法律的行為ができな事を意味しているのです。
 
 その典型例が、認知症です。具体的には、父親が財産を所有したまま認知症になり、意思能力が減退又は喪失してしまうと、その父親の財産に対する法律的行為をする当事者に意思能力が無いため、利用する事も処分する事もできなくなってしまいます。
 
 そして、その家族は、今まで父親のお金で支援を得ていた場合、途端に父親の財産を宛に出来なくなってしまい、困難な状況に陥る事になるのです。これが、いわゆる「財産凍結」という現象で、この家族が抱える問題が「財産凍結問題」になるのです。
 
 これは、財産の所有者が、財産を持ったまま、認知症になる事によって、惹き起こされる問題です。
 
 
財産凍結問題は
 
財産の所有者が 財産を持ったまま
 
認知症になる事によって 惹き起こされる
 
 
 つまり、
 
所有権絶対の原則という現代社会の下で
 
中世ヨーロッパと同じ困難を
 
私達は抱える事になった
 
 
 のです。
 
 
●我が国の民事信託の法律
 
 我が国の信託法は、財産を所有している人で、その財産を自分の財産から切離す人を「委託者」、その財産を委託者が決めた目的に従って譲受ける者を「受託者」、そして委託者にとってとても大切な人で、財産によって利益を与えようとする者を「受益者」といいます。
 
 これは、あの中世ヨーロッパのイギリスと同じ登場人物ですね。民事信託は、この3者が必ず想定されています。
 
 そして、この信託法では、封建社会の中世のヨーロッパのように超高齢社会の現代社会において、基本法である民法ではできない所有権の条件付き譲渡を可能としているのです。
 
 
▼我が国で「信託」という言葉が初めて法律上で登場したのは
 
 我が国で「信託」という言葉が初めて登場したのは、1900年(明治33年)の日本興業銀行法9条4項だと言われていますが、ここでの「信託」という意味は、単に「預かる」という一般的な意味だったようです。
 
 法制度としての信託が初めて誕生したのは、1905年(明治38年)の担保附社債信託法においての事です。この法律は、多くの社債権者が所有する社債に担保のための抵当権が設定された場合の管理を合理化するために、信託会社に総社債権者のために抵当権を保持さたせ、尚且つ信託会社は、第三者である社債権者のために抵当権を保有させる事を目的として制定されました。
 
 ここで、信託会社に抵当権を保持させるためには、社債権者が信託会社に自分の抵当権を譲渡しなければならず、尚且つ信託会社は自社の利益とは別に総社債権者のために抵当権を保有させる事が必要になったという事です。つまり、この考え方では、社債権者に利益は保持させたまま、社債権者から抵当権を切離し、第三者である信託会社に条件付きに譲渡させる契約形態が必要になったという事です。この契約形態は、所有権絶対の原則で貫かれている基本法である民法では実現不可能であり、信託という考え方が発想されたのです。
 
 
▼法律制度として誕生
 
 こうして我が国でも信託という発想を使い、社会経済秩序を整理し、調える事となりました。しかし、当時、信託法という信託の世界では基本法に当たり、民法の特別法となる法律が存在していなかったため、「信託」という名前を冠した会社が乱立してしまい、経済社会に悪影響が出てきたのです。
 
 こういった会社を規制する必要性から、1912年(大正元年)に規制法である信託業法案という法制度が提案されました。しかし、法制度は規制法が先にあるのではなく、規制法で規制する法制度が先にあるべきです。そこで、1922年(大正11年)に規制法である信託業法と法律関係を定める実体法である信託法がセットで制定されたのです。
 
 
▼新信託法制定
 
 この頃の我が国の信託法は、信託会社の乱立を規制する目的で信託業法が、そして、その信託業法の基本法である実体法が信託法という制定過程を経て、施行されたもので、信託法や信託業法が、様々な信託を容易に行えるようにする、というよりも、規制色がく出ている法制度となっていました。
 
 お解りでしょうか? ここが、我が国の信託法とイギリス式信託法の根本的発想の違いです。イギリスでは、自分達の自由を実現するために信託という考え方を発想したのに対し、我が国では、迷惑行為を規制するために国家が制定したのが信託なのです。
 
 従って、立法事実、つまり、立法的判断の基礎となっている事実であり、「法律を制定する場合の基礎を形成し、かつその合理性を支える一般的事実、すなわち社会的、経済的、政治的もしくは科学的事実」の事で、簡単に言えば、何故、その法律を制定する事が必要なのかといった根本原理を支える事実が、イギリスと我が国では完全に反対になっているという事です。
 
 そのため、イギリスで発祥した信託法は、その後ヨーロッパに拡がり、海を渡りアメリカでも、もう50年以上も前から一般的な家族間の財産承継方法として利用されていいるのに対し、日本では使い勝手が悪く、社会経済や国民生活に浸透はしなかったのです。
 
 このような時代背景の中、我が国の信託法は、大改正を迎える事になるのです。
 
 信託法は、2006年(平成18年)3月13日大改正がされ、同年12月15日公布、2007年(平成19年)9月30日施行、1922年(大正11年)制定の旧信託法から84年ぶりに最先端の新信託法として新たに誕生しました。この大改正は、従前の「信託」という物自体の常識を根本的に変えたばかりではなく、我が国の民事法体系全体の常識をも大きく覆すものになったと言われています。
 
 
●福祉型民事信託
 
▼民事信託の変遷
 
 民事信託とは、信託法を営利目的とせず、個人間で設定する契約の事です。一番の特徴は、世界の歴史的に見て、民事信託を構成する当事者は、信頼関係が強く、強い絆で結ばれている人々によって受継がれ、継承されて生きている歴史があるという事です。
 
 そして、現代の民事信託は、更に発展した利用の仕方が研究され、高度な設計が提案されており、今後益々進化した利用方法が提案されていく事でしょう。
 
 
▼民事信託の登場者
 
 財産を所有していて、その財産を大切な人のために利用したいと考えている人を委託者、その財産を譲渡され、委託者の信頼の基、委託者の大切な人のために財産を管理する人を受託者、委託者の大切な人を受益者といいます。
 
 民事信託は、この委託者、受託者、受益者の3者を基本構造として設計され、運用していく事になります。
 
 現代日本で、最も多くの事例があるのが福祉型家族民事信託です。ここからは、福祉型家族民事信託に焦点を当てて、その大まかな概要をみていきましょう。
 
 
▼福祉型家族民事信託とは
 
 
 〇民事信託の2つの効果
 
 民事信託には、大きく分けて次の2つの法律上の効果があります。
 
 
 ▽法制度の補完効果
 
  現行の法制度だけでは不十分な部分を補完して、十分な能力を発揮させる効果の事です。
 
 ▽法制度の超越効果
 
  現行の法制度を十分に適用しても限界があり、その限界を超える新たな能力を発揮させるための効果の事です。
 
 
 法制度補完効果は、例えば、父親が認知症になり、その財産が凍結してしまうのを事前に防ぐために利用する機能です。この機能は、最低限の支障を回避でき、個人の生前に機能し、能力を発揮させる福祉型家族民事信託の最もポピュラーな機能なります。
 
 そして、法制度超越効果は、例えば、遺言では自身の遺産の承継先は法定相続人(受遺者)に限られていますが、孫やその子供にまで自身の遺産を承継させたいという既成の法律的制約から抜け出し、現在の法律的効果以上の願いを叶えるために利用する機能です。
 
 
 〇福祉型民事信託とは
 
 民事信託の契約種類の中で、いわゆる福祉型民事信託というものがあります。福祉型民事信託とは、現在又は将来において認知症となる可能性のある人を対象として、その人の財産管理を適切に行う事によって生活基盤を安定させ、かつ相続やその後の諸手続き等を円滑にする事を目的とする民事信託をいいます。この福祉型民事信託の法律的効果は、法制度補完型になります。
 
 この福祉型民事信託の利用例が、家族民事信託になります。つまり、父親の認知症発症に備え、予め父親の財産を譲渡しておき、父親が元気なうちは父親のために、そして父親が認知症を発症した後は、その譲渡された子供等が父親に代わって、父親のためにその財産を管理するという利用類型です。
 
 この場合、父親が委託者、子供が受託者、父親が受益者となる設計をします。
 
 信託法の特徴である財産の譲渡(移転)、つまり、財産の所有者からその財産の切離しが起こっていますね。父親は子供に自身の財産を譲渡しましたので、その後は例え自分が認知症になって法律行為ができなくなってしまっても、既に財産は受託者である子供に「名義」が移転していますので、財産は凍結される事なく、何の制限もされず、法律上は、あたかも父親が健康に生活しているのと同じ状態を作り出す事ができます。 
 
 これが、福祉型家族民事信託の財産凍結防止効果です。
 
 
●福祉型家族民事信託の本質的要素と有効要件、精神的要件
 
 福祉型家族民事信託の本質は、財産の所有者がその財産を信頼できる者に譲渡して、その財産の名義人から外れ、譲渡された者が財産の名義人となり、その後はその譲渡人である元の財産の所有者のために、その財産を管理するというスキームになります。
 
 このスキームから、民事信託の本質的要素とは、次の4つになるでしょう。
 
 
譲渡する財産が存在している事 = 財産の特定性
 
 
財産が譲渡される事 = 信託財産の所有者からの切断性
 
 
譲渡された財産の譲受人は、自分のためではなく、譲渡人が定めた目的に従って譲渡人のために財産を管理する事 = 信託の目的性
 
 
譲受人は譲渡財産と固有財産を分別管理する事 = 信託財産の分別管理性
 
 
 この4つがそのまま民事信託特有の有効要件となると思います。
 
 そして、民事信託の主役は、委託者と受益者であり、民事信託を支える最も大事な精神的要件は、受益者と受託者との信認関係になります。「信認関係」とは、信託法における受益者と受託者の信頼関係の事です。
 
 
民事信託の主役は
 
委託者と受益者
 
 
民事信託を支える精神的要件
 
それは
 
受益者と受託者との信認関係
 
 
そして
 
信託は受益者のためのもの
 
 
 
 そして、具体的には、委託者と受託者で民事信託契約を締結して、運用を始める事になります。
 
 尚、民事信託の設定行為は、信託法上、契約、遺言、宣言の3つがありますが、このニュースレターでは、最もポピュラーな契約行為で設定する信託契約を取上げています。
 
 その他、委託者、受託者、受益者の設計方法によって、様々なスキームを作る事ができますが、今回のニュースレターでは、代表例を挙げました。
 
 更に、「福祉型民事信託」等の用語は、当事務所にて使用している名称であり、一般的な法律用語や実務用語等ではありません。
 
 
 
 
 
 いかがでしたでしょうか。
 
 
 民事信託の発祥から発展を概括してきました。今回のニュースレターでは、様々な民事信託の利用形態について知って頂く前に、まず、民事信託の正体についてアップしました。
 
 
 今回のニュースレターで、民事信託の正体をご理解頂けたのではないでしょうか。正体さえ知ってしまえば、恐れる事もありません。民事信託は違法行為でも脱法行為でもない、国民にとってとても有用な法制度であり、欧米では普通に利用されている考え方であるという事です。
 
 
 今後、このニュースレターを基礎知識として、民事信託の利用方法の理解を深めていって頂けれ幸いです。
 
 
 民事信託のご相談は、民事信託法務を専門分野又は取扱分野としている法務事務所の司法書士にご相談下さい。
 
 
 
 
 
 
願いが叶う画期的な法技術 民事信託で明日への希望を
 
 
 
 
 
 
※司法書士は、法律問題全般を扱う身近な暮らしの中の法律専門実務家です。
 
 
 
(2021年4月5日(月) リリース)