【REVIEW2020 ❷ 社会

 

 

新型コロナウイルス感染症問題
 
P C R 検 査 問 題 の 真 相
 
― 「4日ルール」の真実 ―

  

 PCR検査の実施数が増加しない状況が続いています。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学によると日本時間14日12時32分現在の世界の状況は次のようになっています。
 
 
<感染者数>     434万7,124人
<死者数>       29万7,197人
<致死率>       6.84%
 
 
<国別感染者数> ➊ アメリカ  139万0,390人
         ❷ ロシア連邦  24万2,271人
         ❸ イギリス   23万0,985人
         ❹ スペイン   22万8,691人
         ❺ イタリア   22万2,104人
 
 
<国別死亡者数> ➊ アメリカ    8万4,119人(致死率 6.05%)
         ❷ イギリス    3万3,262人
         ❸ イタリア    3万1,106人
         ❹ スぺイン    2万7,104人
         ❺ フランス    2万7,077人
 
 
<国別致死率>※OECD加盟国
         ➊ ベルギー    16.38%
         ❷ フランス    15.20%
         ❸ イギリス    14.40%
         ❹ イタリア    14.01%
         ❺ ハンガリー   12.87%
         ❻ オランダ    12.86%
         ❼ スウェーデン  12.40%
         ❽ スペイン    11.85%
         ❾ カナダ      7.37%
         ❿ スロベニア    7.04%
 
 
 ちなみに、ドイツと韓国は次の通りです。
 
 ●ドイツ
 
<感染者数>  17万4,098人
<死亡者数>     7,861人
<致死率>       4.52%
 
 
 ●韓国
 
<感染者数>   1万0,991人
<死亡者数>       260人
<致死率>       2.37% 
 
 
 
 日本は、次の通りとなっています。
 
<感染者数>   1万6,049人
<死亡者数>       678人 
<致死率>       4.22%
 
 
 OECD各国の感染(確認)者数からみて、日本の場合は桁違いに感染(確認)者数が少ない事が判ります。この新型コロナウイルス感染症問題でよく比較されるのが医療水準が似ているドイツですが、感染(確認)者数が一桁多いです。この事から、どのような事が判るのでしょうか。
 
 ドイツの場合、ドイツ政府の政策として、できるだけ多くの国民にPCR検査を実施し、感染者と非感染者とを判別し、感染者を早期発見、早期隔離、早期治療の方針の基、この未知のウイルスである新型コロナウイルスによる感染を封じ込めようとしている事が解ります。
 
 世界でも成功例として挙げられる韓国も同じ方針を、しかも感染が国内で問題になる前から徹底して新型コロナウイルスによる感染を封じ込めようと大統領自らが陣頭指揮を執って、見事に封じ込めに成功した模範となる国として日本をはじめ世界から注目を浴びています。
 
 ドイツのPCR検査数は5月3日時点で1日約7万件で、今後1日20万件まで検査件数を拡大する目標を持っています。これに対して、現在でも日本のPCR検査数が1日約9,000件程度であり、そのPCR検査件数の目標である1日2万件にも到達していない状況です。
 
 そして、同時に日本での死亡者数は正確なのかという疑問も沸いてきます。
 
 このPCR検査数問題は、1月16日に初めて感染者が確認された翌月の2月からこの国でも国会やマスコミで指摘されていました。そして、何故我が国でPCR検査数が増加しないのかの疑問に対し、当時、有力な専門家の一部は、この国にはPCR検査体制が需要を満たす程存在していない事、一般にPCR検査の臨床検査技師は熟練された人でなければ勤まらず、その人数が十分ではない事、検体の郵送に労力が掛かる事等の理由を挙げていた事はご存じの通りです。
 
 しかし、現在、PCR検査機関は民間を利用すれば諸外国並みに実施できるだけの対応力がある事、PCR検査についても通常の季節性インフルエンザウイルスをはじめとするウイルス、細菌の陽性・陰性判定の検査に利用されており、特別なものではなく、新型コロナウイルスのPCR検査も同じようにするればいい事から臨床検査技師に特別の技能を求めるまでもなく、一般の臨床検査技師であるなら誰でもできる事、複数の検査機関を利用すれば、通常通りの工程で行えるため遠隔地への検体の輸送という問題もこの非常時に取立てて問題にする事も無い事により、その有力な専門家の説明に特段の根拠が無かった事が明らかになってきました。
 
 尚、一部に保健所が輻輳しているためPCR検査が受けられず、結果としてPCR検査数が増加しないという説明をする専門家もいますが、それは間違いです。確かに保健所へ朝9時に架電し、繋がったのが午後3時とか夕刻の4時という話も聞きますが、保健所がPCR検査に積極的であれば保健所が輻輳中でも保健師に繋がったわけなので、その検査希望者や診断した医師はPCR検査が許可されたはずです。ところが実態は、却下された事例が大多数なのです。つまり、保健所は明確な意思表示を持ってPCR検査を受付けていない態度なので、そもそも保健所が輻輳しているか否かは問題とならず、的外れな説明である事は明らかです。
 
 我が国のPCR検査スキームは地方の衛生研究所を配下に持つ国立感染症研究所体制の行政検査であり、PCR検査体制全体の拡充を求める強い声を背景に3月6日に保険適用になりました。これで当時、国民の期待が高まりましたが、その後も想定したように増える事はなく、現在に至っています。
 
 世界ではPCR検査は一人でも多くの国民に対し行うとの大方針の基、桁違いの検査を実施していますが、何故日本ではPCR検査数が期待される程伸びないのかは21世紀の世界の不思議の1つといっても過言ではない事件です。
 
 そんな中、政府専門家会議委員は、4月22日に帰国者・接触者相談センターへの相談目安は体調の悪い人は我慢せずに積極的に病院へ来て頂くためのものであるとコメントしており、厚生労働大臣は5月6日に帰国者・接触者相談センターへの相談目安としていた「37.5以上の発熱が4日以上続く場合」という内容を削除する考えを示しました。そして、5月8日の記者会見では、「37.5度、4日以上」は検査要件ではないとの発言をし、このいわゆる「4日ルール」は国民の誤解との認識を示したのです。
 
 この前、3月の終わり近くには、新型コロナウイルス感染症により著名人の容態が急変し亡くなったり、4月には医師の指示で4日から5日様子を見るとの診断に、その間に容態が急変し亡くなる等の出来事が続いており、更に一般の人達も検査受けられないまま自宅静養中に容態が急変し亡くなる等、PCR検査ができず適切な医療が受けられないで命を落とした疑いのある事例が次々と出た時期であり、大変ショッキングな出来事でした。
 
 
 本当に「4日ルール」は存在しなかったのでしょうか?
 
 
 国民の一方的な誤解だったと言えるのでしょうか?
 
 
 国民がPCR検査を受けられず、PCR検査数も諸外国に比べ桁違いに低次元で推移しているのは、医師が必要と判断しても、更に医師が時間を掛けて説得しても、保健所がPCR検査の受付を断ってしまっていたからではないでしょうか?
 
 国会の予算委員会での質疑では、この国の3月中旬でのPCR検査依頼相談件数に占める保健所のPCR検査受付許可件数がわずか5%であった事、更には5月に入っても6%程度でしかない状況であるとの事です。
 
 
 
 政府や政府専門家会議が国民の命を第一に考えていると信じられるようになるには、まだ時間が掛かりそうです。
 
 
 
 
(2020年5月15日(金) リリース)