ニュースレター2020 ➊ 家事事件・人事訴訟法務
  
 
 
 離婚事件の真相!
 
 現代社会の離婚問題をデータで見る!!
 
 -日本の離婚事情を明らかに-
 
 
 
 ニュースレター2020の第1回家事事件・人事訴訟法務は、離婚事件を取上げます。今回はその中で、世界の離婚事情、日本の離婚時の男女の年齢、件数、婚姻と離婚の割合、未成年の子の存在の有無、親権、時代背景、そして我が国の離婚の傾向をデータに基づき検証し、その時代背景と結婚・離婚事情を考察していきます。
 
 我が国の離婚事情から、現在、婚姻生活で悩んでいる方々、これから離婚を考えている方々、既に離婚について協議等を行っている方々のための、一つの指針になればと思います。
 
 まず、世界における離婚事情からです。一つの国際的指標があります。これは、世界の各国で人口が異なるので、1,000人当たり何組が離婚しているかというもので、「離婚率」といいます。この指標に基づき、日本と関係の深い先進国を中心とする10カ国を見てい行きましょう。
 
 この指標によると、1位はロシアで4.7組、2位はアメリカで2.5組、3位は韓国で2.1組、4位はオーストラリアで2.0組、同順位はドイツで2.0組、6位はイギリスで1.9組、同順位でフランスも1.9組、8位は中国で1.8組、9位はイスラエルで1.7組、そして同順位で日本も1.7組となっています(総務省統計局「世界の統計2018」より)。
 
 ロシアの離婚率は、ダントツです。ロシアはソ連邦の中心的な国家でしたが、1991年12月25日のクーデターにより共産党が解散を余儀なくされ、ソ連邦は崩壊しました。この歴史的事実を背景に国民の意識や生活が変化した事や大陸大国ではありますが経済大国ではない国情により国民の経済的困窮も影響しているのかもしれません。アメリカは離婚数が多い事で知られていますが、実に婚姻したカップルの2組に1組が離婚しているとの事です。社会民主主義のフランスは、人権や男女平等、女性の社会進出が進んでおり、離婚率も高いというイメージがありますが、実際は日本より若干高いという状況でとても意外に感じる方も多いのではないでしょうか。中国は、一国二制度で目覚ましい経済発展を遂げ、裕福な人々が多数出現してきたこと、また核家族化が進んだ事が原因になっているのか、離婚率も急増しているとの事です。
 
 日本では、2018年(平成30年)の婚姻数は586,481組(婚姻率 人口1,000人当たり4.7組)、離婚数は208,333組(離婚率 人口1,000人当たり1.70組)でした。(厚生労働省 平成30年(2018年)人口動態統計(確定数)の概況より)。
 
 この統計を見ると、我が国では大体1分に1組が結婚し、3分に1組が離婚している事になります。
 
 年代に同居し届け出た者について、婚姻件数を年齢階級別に年次推移をみると、夫・妻とも30〜34歳、35歳以上は1945年(昭和20年)代後半から増加傾向が続いていたが、夫の30〜34歳は2007年(平成19年)以降減少を続けている。統計を取り始めて以来、夫は25歳から29歳、妻は20歳から24歳が婚姻齢の中心を占めてきたが、2016年(28年)では夫は35歳以上の16万3396人、妻は25〜29歳の18万3655人と最も多く、次いで夫は25〜29歳の15万6407人、30〜34歳の12万132人、 妻は35歳以上の11万4309人、30〜34歳の11万3510人となった。
 
 夫・妻の平均初婚年齢の年次推移をみると、1947年(昭和22年)では夫26.1歳、妻22.9歳であり、その後、昭和20年代半ばから 30年代半ばにかけて上昇した。第2次婚姻ブーム期の1972年(昭和47年)前後に低下したが、その後再び上昇し続け、2016年(平成28年)には夫31.1、妻29.4歳となった。2016年(平成28年)は1947年(昭和22年)に比べ夫は5.0歳、妻は6.5歳上昇しており、夫・妻とも晩婚化が進んでいる。
 
 この統計を見ると、平均初婚年齢は1947年(昭和22年)に夫26.1歳、妻22.9歳だったのに対し、2016年(平成28年)には夫31.1歳、妻29.4歳となっており、夫は5歳、妻は6.5歳平均初婚年齢が上昇していることから、後に見るようにこれに伴い、2016年(平成28年)には離婚年齢も男女共30歳代が全体の40%を占め、1947年(昭和22年)当時より5歳程度上昇した事が判ります。
 
 また、平均再婚年齢をみると、1947年(昭和22年)では夫36.5歳、妻29.3歳であったが、2016年(平成28年)には夫43.0歳、妻39.8歳となり、年々上昇傾向にある(平成30年 我が国の政府統計平成28年までの動向 厚生労働省政務統括官(統計・情報政策担当)『婚姻の動き 夫・妻の年齢階級別にみた婚姻件数及び平均婚姻年齢の年次推移−昭和22年〜平成28年−』」より)。
 
 2016年(平成28年)の離婚件数は21万6798組で前年より9417組減少した。離婚件数の年次推移をみると、戦後最も少なかった1961年(昭和36年)以降長期にわたって増加が続いたものの、1984年(59年)に減少傾向に転じた。1991年(平成3年)以降は再び増加が続き、2002年(14年)には統計の得られていない1044年(昭和19年)から1946年(21年)を除き、現在の形式で統計をとり始めた1899年(明治32年)以降最多となったが、2003年(平成15年)以降は減少傾向が続いている。
 
 同居期間別離婚件数の年次推移をみると、1991年(平成3年)以降すべての期間で増加傾向にあったが、2002年(14年)に5年未満と5年以上10年未満で減少に転じ、その後はすべての期間で減少傾向から横ばいとなっている。また、同居期間20年以上を5年階級別にみると、35年以上の増加の割合が多くなった。
 
 この統計を見ると、同居から5年未満で離婚になっている割合は約31%、同居5年以上10年未満で離婚になっている割合は約20%で、全体の約半分以上を占めている事が判ります。(「平成30年 我が国の政府統計平成28年までの動向 厚生労働省政務統括官(統計・情報政策担当)『離婚の動き 同居期間別にみた離婚件数の年次推移−昭和22年〜平成28年−』」より)。
 
 2016年(平成28年)の離婚件数21万6798組のうち、未成年の子がいる離婚は12万5946組(全体の58.1%)で、親が離婚した未成年の子の数は21万8454人、未成年の子がいない離婚は9万852組(同41.9%)となった。
 
 また、親権を行う者別に離婚件数の年次推移をみると、2016年(平成28年)は「妻が全児の親権を行う」(※「全児」とは全児童の意味)は10万6314組(未成年の子のいる離婚件数に占める割合は84.4%)で、その割合は1965年(昭和40年)代以降増加傾向にある。「夫が全児の親権を行う」は1万5033組(同11.9%)、「夫妻が分け合って親権を行う」4599組(同3.7%)となった。
 
 離婚件数の年齢階級別構成割合の年次推移をみると、20歳代以下は戦後まもなく夫は約50%、妻は約65%であったが、1975年(昭和50年)代に急激に割合が低下し、2016年(平成28年)は夫・妻ともに戦後の割合の3分の1となった。30歳代は戦後から1975年(昭和 50年)代半ばにかけて上昇し、その後は低下傾向ののち再び上昇していたが、2007年(平成19年)以降は低下しており、夫・妻ともに40%を下回っている。40歳代は1965年(昭和40年)代以降上昇傾向にあり、夫は1993年(平成5年)以降、妻は1992年(4年)以降低下が続いたものの、2002年(14年)以降は再び上昇傾向となっており、近年は20%台となっている。50歳以上は1975年(昭和50年)代以降は夫・妻とも上昇傾向にあり、2016年(平成28年)は夫22.0%、妻14.7%となった。尚、「熟年離婚」とは婚姻期間20年以上の夫婦が離婚する事をいいます。(「平成30年 我が国の政府統計平成28年までの動向 厚生労働省政務統括官(統計・情報政策担当)『離婚の動き 夫・妻の年齢階級別にみた離婚件数構成割合の年次推移−昭和25年〜平成28年−』」より)。
 
 この統計から判る事は、婚姻は男女共晩婚化し、離婚は男女共20歳代は減少し、30歳代減少傾向であるものの全体の40%近くを占め、男女共40歳代は2002年以降上昇傾向にあり20%台となっています。そして、50歳以上は男女共上昇傾向にあり、2016年には夫が22.0%、妻が14.7%となっています。また、同居から5年未満で離婚になっている割合は約31%、同居5年以上10年未満で離婚になっている割合は約20%で、全体の半分以上を占めている事が判ります。
 
 婚姻が晩婚化し、離婚が30歳代が最も多く、次いで40際代、50歳代となっているのは、戦後まもなく女性の社会的地位が上昇していった事、女性の社会進出が進んだ事、高度経済成長期で国民が全体として豊かになった事等色々な社会情勢や政治情勢があると考えられますが、特に日本の歴史でもそれまでの生活者にとって大きく社会が変化した時代であった事が挙げられるでしょう。
 
 小泉内閣(在任期間 2001年4月26日-2006年9月26日)の小泉構造改革で、財政再建での財政支出の多方面での極端な削減、「働き方の自由」の名の下に労働者派遣法改正、最後のセーフティネットである生活保護費の削減、少子化対策と逆行する児童扶養手当の削減、若年層と高齢者層を無用に対立させ、社会を担い次の世代が謳歌できる将来を創造してきた高齢者への敬意をどこかに放置した後期高齢者医療制度の導入等で、後に民主党政権下で主張されたいわゆる子ども手当を模した児童手当が創設された程度で、生活者、特に労働者への影響が高まっていく時代背景があり、婚姻もその昔のように自由にできず、経済力が伴う世代になって初めて実現できる社会に変容していった事が主な要因の1つと考えられます。
 
 また離婚は、若年層のほんの一部の経済的余裕のあるいわゆる勝ち組と呼ばれる若者が婚姻できる社会になり、その分相手をよく見定め、将来設計を見込める者同士が婚姻するため離婚率もその昔に比べ低下し、また婚姻が晩婚化した結果、離婚時期もその分後ろ倒しになったと言えるのではないでしょうか。
 
 この社会政策による社会情勢の変容及び経済における新自由主義の台頭による市場経済のグローバル化、つまりトリクルダウンに象徴されるエリート層による労働者層への支配的思想により、その昔に比べ、人々は労働により1人分の生活費しか収入を得る事ができない社会になり、結婚する事もままならない状況となって、更に離婚するにも養育費等生活費が重くのし掛かり、結果として少子化に拍車が掛かった事も否めない事実であると思います。
 
 
 
 統計から見えてくる事は、現代社会の実情です。
 
 我が国では大体1分に1組が結婚し、3分に1組が離婚しています。
 
 離婚年齢では、男女共30歳代が最も多く、全体の40%近くを占めています。
 
 また、離婚件数のうち、未成年の子がいる離婚件数の割合は全体の58.1%、未成年の子がいない離婚件数は全体の41.9%となっています。
 
 更に、親権については、妻が親権を行う件数の割合は全体の84.4%、夫は親権を行う件数の割合は全体の11.9%、夫婦は分け合って親権を行う件数の割合は全体の3.7%となっています。
 
 同居から5年未満で離婚になっている割合は約31%、同居5年以上10年未満で離婚になっている割合は約20%で、全体の半分以上を占めている事が判ります。
 
 離婚年齢では、30歳代が最も多く、未成年の子がいる離婚件数が全体の58.1%であり、妻が親権を行う件数が全体の84.4%という実態で、同居から5年未満の離婚率は約31%、5年以上10年未満の離婚率は約20%で全体の半分以上を占めているのが我が国の実情のようです。
 
 
 
 
 
 いかがでしたでしょうか?
 
 
 離婚は、我が国だけではなく世界の国で起こっている出来事ですが、婚姻を続けられるのか、続けられないのか、当事者一人ひとりの事情は異なるでしょう。夫婦の間に子供がいなければ、当事者同士だけの問題で、比較的解決し易い面もあります。しかし、お子さんがいらっしゃる場合、その子の心情も深く考え、決めなくてはなりません。
 
 
 自身が子供だった頃、両親の不和に傷付き、誰にも言えず悩んだ時代はなかったでしょうか? この世で一人しかいないお父さん、お母さんを子供は選べません。子供にとっては、両親がいて、家族仲良く協力し合って、また時には我がままを言って、解り合いながら楽しく生活できる事が何よりです。
 
 
 しかし、その反面、婚姻は夫婦の理解で成り立ちます。当事者の一方の努力だけではとうしようもない状況もあるでしょう。
 
 
 離婚をし、一人で自由気ままに生きる人生もあります。また、夫婦が十分に話合い、婚姻生活を再スタートさせ、家族で幸せな人生を送っている人達もいます。
 
 
 因みに、再婚年齢の平均では、2016年(平成28年)には夫43.0歳、妻39.8歳で、1947年(昭和22年)から年々上昇傾向にあり、離婚してから暫く一人で過ごし、また婚姻するカップルもいて、40歳代で二度目の結婚をし、第二の人生を送っている幸せな人達がいる事もまた事実のようです。
 
 
 
 
 
 婚姻生活に行き詰っている方々は、この機会に、もう一度自身の事、子供の事、今後の生活の事、自身の人生の事を熟慮し、一番良い方法を選んで頂く事を願っています。
 
 
 
 
 
(2020年6月2日(火) リリース)