ニュースレター2020 ❸ 家事事件・人事訴訟法務
  
 
 
  離婚事件の真相
 
  離婚問題の法律的解決とその対処内容とは!!
 
 
 
 ニュースレター2020第3回家事事件・人事訴訟法務は、引続き離婚事件を取上げます。今回は、その中で特に離婚問題に至る原因、離婚するためにはどのような過程を経る事になるのか、離婚の際に必要となる忘れてはならない大切な事項とは何か、そして、そもそも婚姻した同士は法律上どのような理由で離婚ができるのか、といった離婚問題に直面している方の法律的解決策とその内容に焦点を当て概説していきます。
 
 
 
 ■離婚事件の概観
 
 離婚事件は、協議離婚、家事調停離婚、裁判離婚の3種類の解決方法があります。どの方法も特徴がありますが、協議離婚と調停離婚及び裁判離婚とは、婚姻している当事者が結論を出すのか、第三者が関与して結論を導き出すのかで大きく異なります。更に、調停離婚と裁判離婚とでは、調停離婚では婚姻している当事者の意思が尊重されるあくまでも話合いであるのに対し、裁判離婚は当事者は自身の主張をし、争いのある事実については証拠より立証をしますが、最後は裁判官が判断する方法になります。
 
 尚、離婚事件では、調停に代わる審判という制度があります。これは、一般家事調停事件である離婚家事調停において不成立の場合、家庭裁判所が実質的な調停内容を生かすため職権で審判をする制度です。例えば、離婚家事調停で離婚については基本合意がされている場合、それに関連する事情について当事者に意見の相違があるため、離婚家事調停自体を成立させる事ができないとき、そこで払われた努力が水泡に帰す事を避けるため、相当と認めるときは、家庭裁判所が職権で離婚の審判をする事ができるというものです。この制度での「離婚審判(審判離婚)」は、実際は殆どされていないので、このニュースレターでは省略させて頂きます。
 
 因みに、離婚事件では、協議離婚、家事調停離婚、裁判離婚のこの3種類の方法のうち、協議離婚が圧倒的に多いといわれています。
 
 また、裁判離婚が認められる場合の離婚事由はその9割が、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」になっているとの事です。
 
 日本では、1分に1組が結婚をし、3分に1組が離婚をしています。
 
 
 
 ■離婚事件の法制度
 
 
 ●裁判所管轄と法律
 
 離婚事件は、人の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする家事事件です。家事事件とは、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持に関係のある身分上又は財産上の事件をいいます。
 
 一般の民事事件は財産関係事件を中心とし、弁論主義の適用により、当事者双方に主張立証を尽くさせ、いってみれば自由競争の原理により結論としての裁判を出す仕組みになっています。
 
 これに対し、家事事件では、主として人の身分関係の解決を図る必要上、裁判所が後見的にその法律関係に介入し、弁論主義ではなく職権探知主義により、当事者の任意の解決を許さない手続きになっています。
 
 離婚事件もこの手続きにより、法的な解決が図られます。そして、この法制度として民事訴訟法の特別法である家事事件手続法と人事訴訟法が制定されています。
 
 第一審の管轄裁判所は、簡易裁判所や地方裁判所ではなく全て家庭裁判所になっています。
 
 
 ●家事事件手続法
 
 家事事件手続法は、家事審判事件及び家事調停事件を規定しています。家事事件手続法上の家事事件とは、家事審判事件と家事調停事件をいいます。
 
 
 ▼家事調停事件
 
 家事調停事件は、次の3種類の事件がらなります。
 
 〇家事事件手続法別表第2家事調停事件
  ※不成立なら自動的に家事審判事件に移行します。非訟事件のため、原則訴訟はできません。
 
 〇特殊家事調停事件
  ※本来的に人事に関する訴訟事件が対象です。当事者間に審判を受ける合意が成立している場合で、申立てに係る原因事実について争いが無い場合、家庭裁判所が調査をした上で、その合意が正当認めるときは、合意に相当する審判が行われます。
 
 〇一般家事調停事件
  ※家事事件手続法別表第2家事調停事件及び特殊家事調停事件以外の訴訟事件が対象です。直接人事訴訟を提起するより、当事者の話合いを優先する趣旨です(調停前置主義)。
 
 
 ▼家事審判事件
 
 家事審判事件うち家事事件手続法別表第1審判事件及び家事事件手続法別表第2審判事件は、訴訟手続きではなく本質的には非訟手続きであると解されています。そのため訴訟は提起できません。家事事件は、次の3種類の事件からなります。
 
 〇家事事件手続法別表第1家事審判事件
  ※係争性が無く当事者対立構造を観念できません。
 
 〇家事事件手続法別表第2家事審判事件
  ※係争性はありますが、非訟事件であるため、訴訟を提起できません。係争性があるので、家事調停又は家事審判のいずれでも手続きができます。この事件の類型は調停前置主義が適用されます。但し、人事訴訟法上附帯処分として、家事事件手続法別表第2審判事件の離婚に関する係争関係を人事訴訟(離婚請求訴訟)に附帯して裁判を求める事ができます。
 
 〇他の法律で定める一定の事件
 
 
 ●人事訴訟法
 
 人事に関する訴え、つまり、身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴えを対象としています。特殊家事調停事件、一般家事調停事件、人事に関する訴えがあります。
 
 
 
 ■離婚事件の法的解決方法
 
 離婚事件は、法律的には基本的に次のような段階を踏んで解決に向かいます。
 
 尚、離婚問題の解決方法では、圧倒的に協議離婚の段階で結論が出る場合が多いといわれています。そして、最後の段階での裁判離婚(離婚請求訴訟)では、その離婚理由として「婚姻を継続し難い重大な事由」が9割を占めています。
 
 
 ●離婚協議(いわゆる協議離婚)
 
 ▼夫婦当事者間で離婚か婚姻継続かを協議します。
 
 ↓
 
 ●離婚家事調停(いわゆる調停離婚)(調停前置主義)
 
 ▼離婚家事調停は、家事事件手続法上の一般家事調停事件になります。この離婚家事調停が不成立の場合、なお法律的解決の希望するときは、改めて家庭裁判所に離婚請求訴訟を提起します。従って、離婚事件は家事事件手続法上の家事事件手続法別表第2家事調停事件及び基本的に家事審判事件になっていない事に注意を要します。
 
 ↓
 
 ●離婚請求訴訟(いわゆる裁判離婚)
 
 ▼離婚請求訴訟では、職権探知主義の適用は受けるものの、その本質は「訴訟」であるので、原告(離婚請求訴訟を提起した側)は離婚原因について主張立証責任があり、被告は離婚請求に不服がある場合、その原告の主張事実や証拠による立証内容について、反論の主張をしたり、原告の証拠に対する反対の証拠を提出して反証する事により、裁判官に対し原告被告双方の主張内容を争います。裁判官は、当事者の主張立証内容及び家庭裁判所調査官の調査報告を踏まえ、離婚原因の存否を判断し、最終的に判決を言い渡します。
 
 尚、被告側は、離婚原因の事実が「無い事」の積極的な証明までは必要ありません。
 
 また、離婚事件は当事者の合意による解決がより良い解決方法であるてめ、訴訟係属中に裁判官から訴訟当事者に対し和解勧試(民事訴訟法89条、和解勧告の事です。)が出される可能性もあるでしょう。
 
 人事訴訟法上の附帯処分として、家事事件手続法別表第2審判事件の離婚に関する係争関係を人事訴訟(離婚請求訴訟)に附帯して裁判を求める事ができます。
 
 
 
 ■離婚事件の類型
 
 
 ●協議離婚
 
 婚姻している当事者同士が、離婚するか婚姻を継続するかの結論を出すために話合いをして合意する方法。代理人に依頼する必要性もなく、時間や場所等当事者の自由な希望により、協議をする事ができます。
 
 「協議」という用語から、対立的ではなく、各当事者の主張の違いを前提に、お互い結論を協力して出すという明示又は黙示の合意による共同行為という事ができるでしょう。
 
 従って、DVや相手の居住先や連絡方法が不明等そもそも深刻な感情対立が潜在している状況や身の安全が保たれる状況でないない事態等事実上話合いができない状況で、明示又は黙示の話合いによる問題解決の合意がある又は期待できる協議ができない場合は、協議離婚を選択する事は困難となります。
 
 ●家事調停離婚
 
 本来、婚姻している当事者がお互い話し合い解決を目指しますが、当事者同士では生産的な話が難しい又は話合いをしたがその結論に自信が持てない場合に、裁判所で、第三者(調停官や調停員)を交えて、有効な結論を導き出そうとする合意による話合いでの問題解決方法です。
 
 従って、裁判所での第三者を交えた話合いなので、当事者の話合いがまとまらなければ、又はまとまる見込みが無ければ、調停は不調に終わり結論は出ません。
 
 ●離婚訴訟(裁判離婚)
 
 婚姻している当事者同士のお互いの主張が激しく、その内容に開きがあり、当事者同士では結論を導き出せない場合、裁判所で訴訟手続きによって離婚するか婚姻を継続するかの判断を裁判官に委ね、その判断に従う方法。離婚問題を訴訟の形式で判断しますが、訴訟の目的が離婚という当事者の判断が最も優先される問題であるため、審理の最中に、特に当事者の主張・立証がいいつくされた段階で、裁判官から和解勧試が出される事もあります。
 
 そして、本人訴訟が原則の我が国ですが、協議や調停と異なり厳格な訴訟手続きのため、離婚請求訴訟を提起する初めの段階から司法書士の本人訴訟支援や訴訟代理人(弁護士)が就く事もあるでしょう。
 
 また、裁判離婚では、原則直接裁判所へ訴訟を提起する事はできず、まず調停を申立て、離婚調停により調停を行った後、更に離婚問題の法的解決が必要な場合に、改めて訴訟を提起して離婚訴訟をする事が必要です(これを「調停前置主義」といいます。)。
 
 
 ●何故、調停前置主義なのか?
 
 離婚問題は、第三者ではなく、できるだけ当事者同士での話合いでの解決が望ましい事によると考えられます。
 
 通常のいわゆる損得問題といった経済事件とは異なり、お互いの主義・主張が前提となる問題であり、又、訴訟手続きという事実の存否と証拠による証明という純粋な法律判断に基づく裁判官(第三者)の判断を前提とした問題解決方法には必ずしも親和性があるとはいえないからです。
 
 法制度(手続法)上も、通常訴訟が民事訴訟法に基づく簡易裁判所や地方裁判所といった通常裁判所で行われるのに対し、離婚事件は民事訴訟法の特別法である家事事件手続法による家事調停事件、同じく民事訴訟法の特別法である人事訴訟法による離婚請求訴訟事件として家庭裁判所で行われます。
 
 
 ●離婚問題の解決が比較的容易な類型
 
 子供を持たない共働き夫婦です。このパターンは比較的離婚問題が深刻化しないと考えられるのは、お互いの主張が折り合わない場合は、そもそも共同生活ができず、更に仕事をしているため独立し易いので、お互いの将来を考えた場合、早期に離婚して、一人で自由に暮らしていくか、しばらくして新たな相手を見付けて婚姻等の共同生活を選択した方がお互いの人生にとって有意義だと考える人達が多いと思われるからです。離婚請求訴訟でも、家庭裁判所は特段の事情がない限り、共同生活の継続と各当事者の新たな生活との選択では、後者の方を選択し易いのではないかと考えます。
 
 
 ●離婚問題の解決が比較的困難な類型
 
 未成年の子がいる類型です。そもそも婚姻は両性の合意のみにより成立しますが、離婚は当事者の自由にできるものではありません。離婚問題は、その多くが婚姻をした当事者が惹き起こす問題であり、又子供は親を選べません。離婚問題を考える上で、一番大事な問題は婚姻をした当事者の事ではなく、子供の事です。子供にとって離婚した方が良いのか、婚姻を継続した方が良いのかを熟慮が必要であり、更に離婚する場合も大人の事情だけで、独り善がりな結論を出してはいないかを時間を掛けて十分に考えなければならない問題だからです。
 
 また、法律上でも離婚する場合、婚姻費用の分担、財産分与、親権の帰属や養育費の額、子との面会交流、慰謝料が大きな問題となる事が容易に想定でき、最終段階での離婚訴訟でも長期に争われる事態に発展してしまいます。更に、離婚訴訟で訴訟代理人が就いた場合、その訴訟代理人が当事者の主張内容やその整理、証拠の存否及びその収集を行いますが、高額な裁判費用を要し、離婚をした当事者から結婚する時の数十倍離婚をするのが大変だったとの感想を聞くのもこのためでしょう。
 
 
 ■法律上の離婚の可否
 
 上述してきましたように、離婚問題は本来当事者同士で解決が付けられる問題であり、又そうすべき問題です。実際、離婚問題は協議離婚で解決しているのが殆どです。しかし、当事者同士の話し合いで解決ができず、最終段階の離婚訴訟まで至った場合は、もはや当事者の主張のみでは離婚問題は解決できません。
 
 それでは、法律上、どのような理由(これを法律用語で「要件」又は「主要事実」といいます。)が必要なのか、更にその要件に当てはまる事実(又は「事由」)があるか(これを法律用語で「法律要件該当性」といいます。)について検討していきます。
 
 
 ●法律上の離婚要件
 
 民法第770条(裁判上の離婚)
 
 第一項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
 
 第一号 配偶者に不貞な行為があったとき。
 第二号 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 第三号 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
 第四号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
 第五号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
 
 第二項 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当を認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
 
 
 ●法律上の離婚要件を検討する前に
 
 離婚訴訟は、法律上の要件を満たさなければ原則離婚できません。しかし、その前提として、確認しておかなければならない事実があります。それは、当事者の一方に離婚問題を惹き起こす端緒となった非行行為(これを法律用語で「有責事由」といいます。)があるか、及び別居の事実はあるか、という2点です。
 
 有責事由がある当事者は、離婚訴訟を提起した場合でも離婚が認められる可能性は低い事、又別居の有無は、その期間の長さが法律上の要件該当性に影響を及ぼすからです。例えば、別居期間が長期に亘る場合、不倫が不貞と認定されない場合があります。 
 
 
 ①第1号該当性(不貞行為)
 
 離婚訴訟では、当事者の主張・立証にその成否が掛かっていますが、不貞の有無はその立証が大きな争点になります。そして、不貞の立証は、単に疑わしい程度では十分ではないとされています。
 
 この離婚要件で離婚訴訟を提起する場合は、同居している段階からできるだけ証拠である相手の情報を収集しておくべきです。別居してしまうと証拠収集が困難になり、更に離婚原因の不貞行為も相手が不倫を解消した後では、より一層困難となります。
 
 尚、不貞の事実が存在して、離婚原因の要件に該当すれば、後に相手がその不倫を解消しても離婚原因の要件該当性に影響はでないと考えられます。
 
 
 ②第2号該当性(悪意の遺棄)
 
 この要件が離婚の原因として認められた事件はあまりないのではないでしょうか。ただ、第五号の要件該当性の問題として認定された事例はあるようです。
 
 
 ③第三号(3年以上の生死不明)
 
 夫婦の一方が3年以上生死不明の状況にあって、残された配偶者が再婚の意思を有している場合にこの要件該当性に当てはまります。
 
 生死不明の理由は問わないとされています。
 
 
 ④第四号(強度の精神病)
 
 病名だけで判断されるものではなく、一般的に躁鬱病、痴ほう症、アルツハイマー病(いわゆる認知症)、統合失調症等が該当性があります。「強度の」とは、夫婦間の「協力義務」(民法第752条の「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という義務)を果たせない程度の精神障害を意味するとされたいます。この要件も、要件該当性が判然としない場合は、第五号該当性の問題として評価されることになります。
 
 
 ⑤第五号(婚姻を継続し難い重大な事由)
 
 離婚事件の中心をなす要件該当性となります。実際に離婚が認められる事件の9割以上がこの第五号を理由とするものといわれています。
 
 尚、「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、「婚姻関係が破綻」している場合です。言換えると、「婚姻関係が修復不可能で、元に戻らない状態」の事をいいます。
 
 
 
 ■離婚に際し必要となる重要な事項
 
 離婚事件では、次の事項が大事な問題として、議題に上がります。離婚事件は、単に離婚だけでなく、この7つの事項の解決も念頭に話し合わなければなりません。
 
 
 ①婚姻費用の分担(別表第2審判事件→家事調停から家事審判に当然に移行する類型)
 
 離婚問題が協議されている間の生活費の問題です。離婚を主張する側の当事者は、生活費を負担しない場合もあり、又離婚を主張する側若しくは主張される側の収入面での問題で生活が困難となる場合、特に婚姻費用の分担について早急な協議と解決が必要になります。
 
 通常このような場合、離婚調停と婚姻費用分担の調停とは同時に申立てし、家事調停では離婚及び婚姻費用の分担の調停は併合して行われる事になります。
 
 婚姻費用は、結婚生活をする上で当事者が負担する費用なので、家事調停では負担する側の収入に基づき算定される金額を基本に当事者が協議をし、決めます。
 
 
 ②財産分与(別表第2審判事件→家事調停から家事審判に当然に移行する類型)
 
 離婚に際して夫婦の一方から他方に対して給付する財産の総称を「離婚給付」といいます。
 
 清算的財産分与(婚姻後に築き上げた夫婦財産の清算)、扶養的財産分与(離婚後の生活費の工面)、慰謝料(離婚に関する損害賠償)の3つの要素からなっています。但し、実際には清算的財産分与の側面が大きいと思われます。又、慰謝料的財産分与は、精神的苦痛による慰謝料請求が発生する場合には別途慰謝料として定める事が多いでしょう。
 
 尚、相手方が相続によって資産を得た場合、相続財産は財産分与の対象とはなりません。
 
 また、別居期間が長期に亘る場合、別居時点の財産の価格が基準となる事もあります。
 
 家事調停が不成立になった場合には、調停申立て時に審判の申立てがあったものとみなされ、当然に審判に移行します。
 
 財産分与の申立期間は、離婚時から2年となりますので注意が必要です。
 
 
 ③年金分割(別表第2審判事件→家事調停から家事審判に当然に移行する類型)
 
 年金分割制度とは、離婚時に対象となる期間の年金の保険料納付記録を分割し、分割を受けた側は自身の保険料納付記録と分割を受けた納付記録に基づき計算された年金を受取る事ができる制度です。
 
 配偶者が厚生年金又は共済年金に加入している場合には、年金分割請求の検討も必要になります。年金分割の実体は案分割合を決める事です。これを公正証書で定める事もできますが、当事者で協議が成立しない場合は、家事調停事件(別表第2審判事件を家事調停手続きで処理している場合)、家事審判事件で定める事になります(別表第2審判事件)。調停が不成立になった場合には、調停申立て時に審判の申立てがあったものとみなされ、当然に審判に移行します。
 
 特別な理由が無い限り0.5の審判が出るのが通常となります。
 
 まずは、年金分割のための情報通知書の取得から始める事になります。
 
 尚、家事調停事件や家事審判事件を経るだけでは足りず、原則、離婚成立から2年以内に日本年金機構に必要書類を添付して請求する必要がある事に注意が必要です。
 
 
 ④親権・監護権(別表第2審判事件→家事調停から家事審判に当然に移行する類型)
 
 親権者の決定は離婚の条件であるので、離婚調停を申立てた場合、離婚調停の中で親権者につてい協議する事ができます。
 
 親権者を決めるに当たっては、あくまでも子供の利益を最優先で検討され、判断されます。判断要素としては、親の経済力、実家の援助、子供と接触する時間といった親側の事情や子供の意思、学習環境、兄弟姉妹との関係といった子供の側の事情が総合考慮して判断されます。
 
 家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせる事ができます。調査の結果を調査報告書にまとめ、調停の資料とする事になります(家事事件手続法及び人事訴訟の職権探知主義)。
 
 親権調査に当たっては、最初に当事者に「親権に関する陳述書」を提出させる事になっています。
 
 家庭裁判所調査官が当事者との面接、当事者の給与明細、診断書、家の間取り等の調査、子供が通う保育園等の園長、担当教諭等との面接等子供の生活環境の調査等を行い調査報告書を作成します。家事調停期日又は家事審判期日には、その調査報告書を基に、調停官又は審判官が調査報告書で不明な点等を明らかにするため、補足的に当事者に対し質問がある場合があります。その場合、当事者の説明に対し、都度反対当事者から反論が出る事もあります。又、当事者は調査報告書に対する反論や追加の主張・立証をした家事調停事件主張書面又は家事審判事件主張書面を一定の期限までに提出する事も可能です。
 
 家事調停事件の場合、最終的に当事者の合意が無ければ和解成立とはならないので、調査結果はあくまでも資料に過ぎず、それにより親権が決定するわけではありません。
 
 又、家事審判事件では、家庭裁判所調査官の報告書に基づき、審判官が当事者のどちらを親権者とするかの審判を行います。この審判に対しては不服申立てができるようになっています。
 
 
 ⑤養育費(別表第2審判事件→家事調停から家事審判に当然に移行する類型)
 
 養育費は、婚姻生活上、当事者が負担する費用ですが、離婚問題の場合に問題となります。通常は、大学卒業までの費用となるでしょう。
 
 尚、養育費とは「未成熟子」が独立して生計を立てる能力を得るまでに必要な費用のことであり、「未成熟子」とは未成年者の範囲とは必ずしも一致しない概念であると解されます。この論点は、子供が全身の重度の麻痺や知的障害といった場合に問題となります。
 
 
 子共の面会交流(別表第2審判事件→家事調停から家事審判に当然に移行する類型)
 
 面会交流とは,離婚後又は別居中に子どもを養育・監護していない方の親が子どもと面会等を行うことです。面会交流の具体的な内容や方法については,まずは父母が話し合って決めることになりますが,話合いがまとまらない場合や話合いができない場合には,家庭裁判所に調停又は審判の申立てをして,面会交流に関する取り決めを求めることができます。この手続は,離婚前であっても,両親が別居中で子どもとの面会交流についての話合いがまとまらない場合にも,利用することができます。なお,話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,裁判官が,一切の事情を考慮して,審判をすることになります。
 
 
 ⑦慰謝料(一般調停事件→家事調停から家事審判に当然に移行しない類型)
 
 協議離婚後の慰謝料請求は、一般調停事件となります。訴訟事項であり、調停前置主義の対象となります。
 
 又、家事調停が成立せず(不調である場合)、又家庭裁判所が調停に代わる審判をしないときは、審判に移行せず、事件は終了します。裁判手続きを継続する場合は、当然に審判に移行しないため改め人事訴訟を提起する必要があります。但し、終了通知を受けた時から2週間以内に訴えを提起した場合は、家事調停申立時に訴えの提起があったものとみなし、訴状には所定額と調停申立て時に貼付した印紙との差額分の印紙で足りる事なります。
 
 
 ※家事事件手続法別表第1に関する家事調停事件は存在しません。家事調停事件は、当事者の協議(話合い)で合意(解決)を目指す手続きであるのに対し、家事事件手続法別表第1事件は、そもそも当事者の合意による解決を観念できないためです。
 
 
 ●離婚請求訴訟
 
 離婚請求訴訟は、職権探知主義の適用はあるものの協議や調停とは異なり、訴訟手続きです。従って、基本的に事実と証拠に基づき裁判官が判決を言い渡しますので、特にこの離婚事件の場合、当事者の希望する結論にならない可能性も十分想定できます。また実際に、離婚問題が訴訟にまで発展する事例も少ないといわれています。そして、訴訟であれば、第一審の判決に不服があれば控訴し、第二審で争い、更にその判決に不服があれば上告するといった事で長い年月を要する事にもなりかねません。
 
 離婚か婚姻を継続するかは、当事者の人生にも直接関わる問題であり、更に、子供にとっても一大事です。そのような意味でも、できるだけ協議、調停で解決を図る事が有効であると思います。
 
 尚、人事訴訟法上の附帯処分として、家事事件手続法別表第2審判事件等の離婚に関する係争関係(①~⑥。尚、⑦については当然に訴訟提起できます。)を人事訴訟(離婚請求訴訟)に附帯して裁判を求める事ができます。
 
 
 
 
 ■離婚事件の法律的解決方法のまとめ
 
 離婚事件は、協議離婚→調停離婚→裁判離婚という順序で進みます。
 
 協議離婚→当事者同士の協議(話合い)
 
 調停離婚→当事者同士の協議が進展しない場合や協議自体が難しい場合家庭裁判所で行う協議(話合い)です。
 
 裁判離婚→家事調停での協議が不成立の場合、初めて家庭裁判所に離婚請求訴訟を提起します。
 
 
 
 
 
 いかがでしたでしょうか。
 
 
 これまで見てきてように、離婚問題は当事者の自由意思で結論を見出す事が一番好ましい事といえるでしょう。現に、離婚問題はその殆どが協議離婚で終結しています。
 
 
 
 しかし、当事者で話合いができない場合、家事調停を申立てる事も有用です。お互いの話合いでは解り合えない事も調停官や調停員といった問題解決の専門家が関与する事で、より合理的な結論を見出せる可能性があるからです。
 
 
 
 また、離婚事件の場合、不貞行為(不倫)やDV等相手方に問題があったり、未成年の子供がいる場合は、その親権・監護権や養育費、子供の面会交流といった問題も併せて合意の議題に加わってきます。更に、財産分与や慰謝料ともなると、協議の内容が複雑化し、中々自身だけで解決する事も難しい状況にもなってきます。
 
 
 
 そして、離婚に際し、一番大切な事は子供の事です。婚姻を継続した方がいいのか、離婚した方がいいのか、子供の情操や福祉、今後の生活、更に子供の将来の事を第一に考え、「大人の事情」だけで結論を出さないよう慎重に判断して下さい。
 
 
 
 子供は、お父さん、お母さんを選べません。
 
 
 
 裁判手続きでは、調停官や調停員は、その職責上、中立、公正が求められ、調停期間の中で当事者の疑問や要望に応える事が難しいと感じる当事者もいるのではないでないでしょうか。
 
 
 
 そのため、調停官や調停員とは別に、自身の立場に立って話を聴いてくれる法律の専門家がいれば助かる事もあります。
 
 
 
 離婚問題が、当事者同士の話合いでは上手く行かないとき、更に家庭裁判所での家事調停をも視野に入れた解決策を検討されている方々は、家事事件・人事訴訟法務を専門分野又は取扱分野にしている司法書士に相談する事も方法の1つとしてお考えになってはいかがでしょうか。
 
 
 
 離婚問題は、当事者を悩ませる問題です。よく考えて、一番良い結論を導き出す事を願いっています。
 
 
 
 
 
 
 
あなたは独りではありません   法律の専門家 司法書士がいます
 
 
 
 
 
 
 
「本人訴訟支援」とは
 
 家事事件における司法書士の法律上の業務は、「本人訴訟支援法務」になります。
 
 「本人訴訟支援」とは、一般的な法律相談の他、依頼者の意思決定の基、依頼者に代わり、依頼者からの事情聴取をしながら裁判所等に提出する訴状や答弁書等の書類の作成代行を中心に、司法書士が依頼者の裁判手続き等を支援する法律上の業務です。司法書士の「本人訴訟支援」は、裁判所等に提出する書類作成に関しては、取扱う事件に制限はありません
 
 一般的に、「訴訟代理」に比べ「本人訴訟支援」の方が、裁判手続きに掛かる費用が低額で済み、法律問題の解決を図る事ができます。「本人訴訟支援」の事件対象は、比較的複雑でない生活関係、家族関係(身分関係)、仕事関係、迷惑行為等の不法行為関係といった日常的に生じる法律的事件に有効です。 
 
 
 
 
 
(2020年8月11日(火) リリース)