ニュースレター2020 ❷ 個人経済再建法務
  
 
 
 借入額の軽減策 リスケジュール!
 
 任意整理事件と過払金返還請求事件とは!!
 
 
 
 ニュースレター2020個人経済再建法務の第2回は、借金(以下「借入れ」といいます。)の返済に困っている方々のための法律的な方策の中で、「任意整理事件」
とこれに関連する「過払金返還請求事件」を取上げます。
 
 複数の金融機関から少額とはいえない額の借入れをして、返済が殆どできない状況になっている方々がいます。いわゆる「多重債務者」です。この多重債務者の方々は、この借入れの返済で毎日の生活が困難になっているだけでなく、借入先からの督促に日々悩まされているとても厳しいい状況に陥っています。
 
 法律は、「お金のために人生が狂わされるのなら、そのお金の問題をその人の日常生活から取除き、平穏な日々を送れるようにする事が必要である」と考えています。
 
 お金は何かと交換する道具であり、人の人生以上に価値のあるものではないからです。この考え方は、人権を重んじる世界の国々で共通の考え方であり、命の尊さを大切に考える証です。
 
 この日本でも多重債務者の方々のために、次のような有効な方策があります。
 
 
●任意整理(私的整理)
 
●特定調停(特定調停法)
 
●個人破産(いわゆる自己破産。破産法)
 
●個人民事再生(民事再生法)
  
 
 このどれかの方策で、殆どの人は経済的再スタートを切る事ができます。尚、過払金返還請求権とは、昔、金利が高い違法な時代に起きた現象で、払過ぎた金利を取戻す事により、自身の借入れ(債務)を正しい借入額にし(以下「引直計算」といいます。)、負担が重かった借入れを軽減する事できる他、その際、払過ぎた金利で既に債務が完済されていた場合は、現金が戻ってくる場合のその請求権の事です。
 
 現在では、いわゆる過払バブルも2009年(平成21年)に既にピークアウトし、現在では終息しつつありますので、この過払金を主要原資にして借入額が大きく変わったり、帳消しになったり、更には高額なキャッシュが手に入ったりする事はもはやないでしょう。
 
 現在では、多重債務者救済は基本原則通り、任意整理、特定調停、個人破産、個人民事再生になっています。
 
 今回のニュースレター2020 個人経済再建法務の第2回では、この多重債務者救済のための任意整理、特定調停、個人破産、個人民事再生(以下総じて「債務整理」といいます。)の中で、特に任意整理事件とこれに伴う過払金返還請求事件の要説を概説していきます。
 
 
 
  
●債務整理事件の種類
 
 消費者金融や信販会社、クレジット会社からの借入れにより、生活が困難となっている人に対する救済策が債務整理です。債務整理には、次の4種類の方法があり、借入れしている人(「債務者」といいます。)の借入額(「債務額」といいます。)、収入、支出、仕事、住宅ローンの有無、消費者金融や信販会社、クレジット会社数、取立ての現状、延滞状況、現在及び過去の借入れ状況、債務者の手続き上の希望等により、司法書士や弁護士が適切な処方箋を書き対処していきます。
 
 
〇任意整理
 
 借入先(貸金業者やクレジット会社等を「債権者」といいます。)との個人的、個別的な交渉で、借入額を減額し、将来利息を免除して、返済計画(「リスケージュル」といいます。)を立て、裁判所が入らず、債権者と債務者との私的な合意で完済を目指す方法です。
 
 返済期間は原則3年、例外5年までで、債務者の収入との関係で、返済できるか否かがポイントになります。通常、司法書士等の債権者への受任通知により取立てが停止します。債権者との私的な交渉のため、債務額の減額や将来利息のカット、リスケジュールが合意できない場合、この方法は採用できません。
 
 
〇特定調停
 
 特定調停法は、1999年(平成11年)に制定された民事調停法の特別法です。特定調停は、支払不能に陥る恐れのある債務者等の経済的再生に資するための手続きです。原則として、全ての債権者との間で債務の支払い等の調整を求める調停を簡易裁判所に申立て、簡易裁判所において債務者と各債権者が調停委員を交えて支払額や支払条件、担保関係の変更等について話合う事により債権者との間でこれらについて調停を成立させ、債務者は調停によって定められた債務者にとって有利な返済条件に従って返済をしていく事によって債務者の救済を図る手続きになります。
 
 調停委員会が提示する調停条項案は、将来利息を発生させないものとなるのが一般的です。また、通常、調停申立て後は、貸金業者からの督促は停止されます。調停が成立すると、債権者は債務名義を取得する事から、調停条項に従って弁済をしなければ、債務者は強制執行を受ける恐れがあります。
 
  
〇個人破産
 
 いわゆる自己破産です。破産法という法律上の手続きの中で、裁判所が債務者の債務を精算し、残債務を免責する方法です。破産法の当事者は債権者と債務者ですが、債務者自身が破産を申立てる場合を「自己破産」といいます。このニュースレターでは、個人破産は自己破産を想定して解説していきます。この手続きは、それまでの債務額をゼロにする究極の債務者再建策です。
 
 「自己破産」というイメージに拒否感を持っている債務者や破産法に対する誤解のある債務者、自宅は所有し続けたいという思いのある債務者、自身の職種が破産との関係で欠格事由に該当する債務者には採用が難しくなります。この個人破産も通常、手続が開始した際は、取立ては停止します。
 
 
〇個人民事再生
 
 民事再生法上の手続で、個人民事再生は民事再生法の特則として機能します。処方箋としては、任意整理での解決が困難であり、また債務者が住宅ローンだけは残したい、つまり自宅は所有し続けたいという希望があったり、個人破産が仕事上の欠格事由となる職種に当たる債務者に対し、この個人民事再生は有効に機能します。
 
 任意整理や個人破産より手続きが複雑で、一般的にこの法制度は、難解な制度と言われており、債務整理事件により異なりますが、一般に任意整理や個人破産より費用と時間が掛かる場合があります。また、この続きの債務者は、一定程度の継続した、安定的な収入がある事が条件になります。この個人民事再生も通常、手続が開始した際は、取立てが停止します。
 
 
●債務整理事件の選択基準概要
 
 債務者への事実関係の事情聴取、債務者の事情や希望により、債務者との話合いでどの手続きを採用するかを決めていきますが、簡単にいって、大きな目安は次の通りになります。
 
 
〇債務額が多額で、債務者の収入を基準に債権者との交渉で合意に達する期待が低い場合は任意整理は困難となります。つまり、債権者との交渉は、債務額の減額、将来利息のカットを交渉し、原則3年以内での完済ができるか否かがメルクマールになります。
 
 従って、債務者の収入で公租公課(税金や保険料)を控除し、また生活上での必要経費を除いた額(「可処分所得」といいます。)が、ある程度残る方は任意整理の選択により、生活を維持し、自由な暮らしを取戻すためのリスケジュールは有効です。
 
 
〇特定調停は、基本的に債務者本人が各債権者と交渉する意向のある場合に有効です。債務者代理人を依頼せず、自身で交渉する意向のある人にとっては、適していると思います。一人でといっても、簡易裁判所の調停委員が仲裁役として参加しますでの、一般の方でも少し基礎知識を勉強し、自身の債務整理の方針をしっかりと立て、交渉に臨めれば目的は達成できるでしょう。
 
 従って、債権者との合意ができるかがポイントとなります。また、過払金が発生している場合は、過払金の返還手続きはこの特定調停手続きの射程範囲外となりますので、別途過払金返還請求訴訟等を提起しなければなりません。そのため、債権調査の結果、過払金が発生している場合は、特定調停の採用時期を検討する事になります。尚、特定調停申立代理人(債務者代理人)を依頼しなくて、債務者本人が特定調停に臨む場合にも、司法書士の「個人経済再建支援法務」で、特定調停関係の書類作成を中心に司法書士からの支援を得る方法もあります。
 
 
〇住宅ローンが無く、またあっても自宅の所有維持は望まない場合、債務者の職種が破産手続きにより欠格事由に該当しない場合、自己破産に拒否感が無い場合は究極の経済的再建策の選択として、個人破産が最も望ましいでしょう。
 
 従って、任意整理では困難さがあり、住宅ローンも残す事を希望しない場合、本来的な債務者の経済的再建を果たす事ができる個人破産が有効です。
 
 
〇住宅ローンを残したい、自宅の所有を維持したい、債務者の職種が破産に影響する場合、破産に拒否感がある場合は、個人民事再生を選択する事になります。但し、債務者に一定程度の収入が、継続的、安定的に有る場合が条件です。
 
 従って、可処分所得がある程度あり、ただ現在多重債務のため生活に窮しているだけの方に個人民事再生は適しています。特に、富裕層に入る方々には、ある程度大きな負債があっても、破産をせず経済的再建が果たせるため魅力的ではないでしょうか。
 
 
●相談者からの事情聴取事項
 
 多重債務を抱える相談者の多くは、ある業者に返済するために他の業者から借入れをするという自転車操業に陥っているか、若しくは、既に借入れの限度額を超え万策尽きた状態にあります。
 
 一般的に司法書士が相談者から事情を聴取する際、次の点を重点的かつ詳細に聴き取っていきます。
 
 
〇相談者の事情
 
 ▽相談者の職業
 
  職種、雇用形態、勤続年数、給与額、退職金の有無、今後の勤務状況等
 
 ▽相談者の家族構成
 
  同居人数、同居する家族の収入の有無、子供の年齢、別居する家族からの援助の有無等
 
 ▽負債の原因
 
 
〇相談者の収入及び資産
 
 現在の手取収入(給与、賞与、退職金、年金、公的手当て等)、預貯金、有価証券、ゴルフ会員権、貸付金、保険、不動産、自動車、その他の高価な動産類等。
 
 
〇相談者の負債状況
 
 債権者一覧表等を作り整理して確認します。内容は、債権者名、債権額(債務額)、所在地及び連絡先、契約した支店名、その支店の所在地及び連絡先、契約日、最初の借入れ年月日、借入額、現在の債務額(残高)、借入れ原因、保証人、担保の有無、訴訟及び差押えの有無、完済日です。
 
 
●相談時の注意事項
 
 
〇偏頗弁済(へんぱべんさい)とは
 
 複数の債権者(貸金業者等)からの借入れがある場合で、その債権者に公平に返済(法律用語で「弁済」といいます。)ができない状況での、一部若しくは全部に限らず債権者に対して弁済する事をいいます。このような弁済の仕方は、債権者平等の原則に反し、後で破産手続きを選択する場合に問題となり得る行為となります。
 
 但し、水光熱費や家賃等の日常生活を営む上で必要最低限の費用は偏頗弁済とはなりません。
 
 
〇虚偽の申告
 
 事情聴取の際、虚偽の申告をした場合、破産法上の免責不許可事由として問題になる可能性があります。つまり、破産による債務の免責が受けられない場合があるという事です。例えば、具体的には虚偽の債権者名簿の作成及び提出が挙げられます。
 
 
●初回の相談で相談者に用意が必要な資料及び書類
 
 初回の相談では、相談者の状況をより詳しく知り、法律的判断に繋げるため、次の資料や書類が必要になります。但し、初回の相談では、相談者におかれては、できるだけ集めて持参頂ければ、相談者の大まかな状況は解るため、全ての資料や書類の持参は必ずしも必要ありません。
 
 尚、裁判所からの送達書類は必要になります。裁判所の手続きには必ず期限が付されており、その期限を超過した場合は、債務者にとって不利益になる可能性が高いからです。裁判所の手続きは、後日、個別の事情を理由に、決められた規定に対する例外的対応はなされません。
 
 
〇相談者の面談時事情聴取シートの記入
 
〇債権者一覧表の作成
 
〇一カ月の家計簿
 
〇預貯金通帳
 
〇消費者金融会社、信販会社、カード発行会社が発行したカード
 
〇収入及び資産に関する資料(給与明細、年金通知書、源泉徴収票、確定申告書の控え、保険関係書類、自動車車検証、不動産登記事項証明書等)
 
〇負債に関する資料(契約書、振込書、領収書、債権譲渡通知書、裁判所からの送達書類等
 
 
●司法書士が相談者の事案を受任した場合の必要書類
 
 相談者の事情を把握し、債務整理の方針が決まった場合、相談者からの依頼が有れば原則として司法書士が受任する事になります。その際の必要書類は次の通りです。
 
 
〇依頼者と司法書士との委任契約書、依頼書の司法委書士に対する裁判所等への委任状等
 
 
●信用情報機関とは
 
 「信用情報機関」とは、貸金業者を利用している人、また過去に利用した人の借入れ状況や支払い状況等の信用情報を管理している会社や一般社団法人の事です。
 
 カードを新しく作ったり、新たにお金を借りようとするとき、消費者金融会社や信販会社、カード会社は、その人が現在他社からどのような借入れをしていて、支払状況がどうかという信用情報を各々加盟している「信用情報機関」に照会を掛けて調べます。
 
 信用情報機関は、主に次の3です。
 
 
〇株式会社日本信用情報機構(通称「JICC」)
 
 主に消費者金融会社が加盟していますが、現在では信販会社、クレジットカード会社、保証会社、リース会社も多く会員となっています。
 
 
〇株式会社シー・アイ・シー(通称「CIC])
 
 主に信販会社やクレジットカード会社、保証会社、リース会社が加盟していますが、現在では消費者金融会社も多く加盟しています。
 
 
〇一般社団法人全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター(通称「全銀協」)
 
 主に銀行が加盟しています。
 
 
 尚、JICCとCICは、発足当時の会員の種類は違いますが、現在ではほぼ共通の会員で組織されています。従って、JICCとCICで管理されている情報は共通ですが、各々その管理方法が微妙に異なっており、自身の信用情報を確実に確認したい場合は、JICCとCICの情報の両方を確認する必要があります。
 
 また、全銀協は、銀行が会員のため、JICCとCICの情報とはその内容も管理方法も異なっています。
 
 従って、貸金業者の利用のみの場合は、全銀協への調査は基本的に不要になり、住宅ローン等の銀行からの借入れの場合は、JICCやCICの情報は基本的に不要です。
 
 但し、この3種類の信用情報機関の間では、定期的な情報交換がなされていると言われています。
 
 
●信用事故情報とは
 
 消費者金融会社や信販会社を利用している人が、支払い延滞、債務整理、差押え等が有った場合、その情報が信用情報機関に登録される事になります。この情報をいわゆる「信用事故情報」といいます。
 
 この信用事故情報の登録方法は、各信用情報期間によって異なり、特にJICCとCICでは微妙に違うため、1つの情報をもって一概には判断する事ができません。
 
 例えば、延滞を3回連続した利用者には事故情報が登録され、基本的にその情報が5年間削除されないため、新たにカードを作成する際、審査に通らないという現象に繋がります。
 
 全銀協の場合、信用情報が登録されると基本的に10年間削除されない事になっています。
 
 信用事故情報の各信用情報機関の登録方法や登録内容は、各々のホームページに掲載されたいるため確認できます。
 
 尚、一般的に信用情報が問題となるケースは、利用者が新たにカードを作成する際の審査の局面であり、継続してカードを利用している場合に、途中でそのカードが利用できなくなる事はあまりないでしょう。何故なら、貸金業者が審査をするタイミングは基本的に新たにサービスを提供する場合、つまり、新たにカードを作成する時であり、その最初の審査に合格したカードに改めて審査をする事は原則無いからです。
 
 しかし、場合によっては、継続中のカードの利用限度枠が減額する事はあるかもしれません。
 
 
●任意整理を採用する指針
 
 任意整理の採用指針ですが、原則的に最も重要なメルクマールは3年間で交渉後の債務が完成できるか、という事です。
 
 公租公課、生活経費を除いた可処分所得が返済額の基礎になりますが、例えば、支払可能額が月5万円であれば、3年間で180万円が返済可能額になります。
 
 逆に言えば、元本減額、将来利息カット、リスケジュールで任意整理後の残債務額が180万円以内であれば、任意整理は成功する事になります。
 
 従って、生活経費、つまり、食費代、水光熱費、家賃、通信費、交際費、日用品購入費、生命保険料、被服代、医療費、教育費、交通費、自動車ローン、駐車場代、小遣い等の生活経費をどれだけ圧縮できるかが決め手になります。
 
 しかし、生活困難な計上での可処分所得は非現実的であり、合理的な算定をする事がとても大事です。
 
 
●任意整理手続きのメリットとデメリット
 
 任意整理手続きのメリットとデメリットは次のようなものが挙げられます。
 
 
〇メリット
 
 裁判所を利用した法的手続きではないので、簡易かつ弾力的な和解契約が可能です。裁判費用もかかりません。任意整理手続きと並行して過払金を請求できます。また、資格制限が問題となりません。更に、破産法上の免責不許可事由があっても利用できます。
 
 
〇デメリット
 
 債務が残ってしまいます。利息制限法上の引直計算額まで減額可能ですが、それ以上の減額は必ずしもできるとは限りません。貸金業者の中には、分割払い等を認めない会社もあります。更に、原則3年間以内での弁済で、その間に挫折する可能性がある。司法書士が法律的手続きに関与した旨の貸金業者宛の受任通知を発送した時点、又は任意整理を開始した時点で、信用事故情報が付く事が殆どです。 
 
 
●司法書士の受任通知発送の効果
 
 多重債務者は、生活に窮しているだけでなく、貸金業者からの督促等で精神的にも追いつめられています。
 
 この窮状を救う事から債務者の経済的再建はスタートします。司法書士が各貸金業者宛に相談者の法的手続きをするために依頼を受任した旨の通知を「受任通知」と言います。この通知により、法的手続きが開始した事が各貸金業者に判明するため、督促は一旦停止します。
 
 この債務者に対する貸金業者からの督促状等の停止は、生活に困窮していて、精神的にも追いつめられている債務者にとって、これからの経済的再開に向けての新たな検討を始めるきっかけになります。
 
 落ち着いて、自身の客観的な状況を認識する事によって、次の施策を決定できる事が非常に有効です。
 
 
●任意整理手続での「積立金」の有効利用とは
 
 司法書士の受任通知の各貸金業者への通知により、依頼者は一旦元通りの生活を取戻す事ができます。
 
 しかし、油断大敵です。一挙に自由になるお金が増えますので、今までの窮屈な生活からの反動で浪費に走ってしまい、折角の任意整理が失敗に終わる危険があるのです。
 
 そこで、依頼者にとっては再び戻った元通りの生活ですが、可処分所得を基に返済原資となる額を毎月積立てておく事をお勧めしています。これを任意整理手続きにおける「積立金」と言ったりしますが、司法書士が各貸金業者宛に受任通知を発送して、債権調査をし、交渉を重ね、各貸金業者との和解が成立するまで、少なくとも数カ月は掛かります。場合によっては1年程度の期間を要する場合もあります。
 
 この司法書士が受任通知を発送し、各貸金業者との和解が成立するまでの数カ月から1年程度の期間を利用して、任意整理手続きが成功するための担保をするのです。
 
 実際に返済をスタートすれば、その分自由なお金が減りますが、返済スタート時点で急には生活を元に戻す事が難しいと思います。そこで、実際に返済がスタートするまでの生活と実際に返済がスタートした後の生活を大きく変えないようにするわけです。
 
 この事により、任意整理手続きを経て、リスケジュール通りの返済が担保でき、任意整理手続きが成功する効果を生みます。
 
 尚、この積立金は、返済がスタートするまで積算されていきますから、依頼者の自由なお金として利用できますし、任意整理手続きの費用等に充当すれば、新たな負債を作らなくて済むため、有効活用が期待できます。 
 
 
●任意整理事件の具体的手続きのイメージ
 
 任意整理手続きは、一般的に次のような流れで進行していきます。
  
 
〇債務者の司法書士への相談
 
 
〇司法書士の事情聴取
 
 ▽相談者の情報(職業、雇用形態、勤続年数、給与額、退職金の有無、今後の勤務状況、家族構成、子供の教育費、別居の家族や親族からの援助の有無等)
 
 ▽相談者の収入・資産(支払い能力の有無の確認のため、供与・賞与、退職金、年金、公的手当て、預貯金、有価証券、ゴルフ会員権、貸付金、保険、不動産・自動車、担保の有無、その他高額な動産類等)
 
 ▽相談者の負債状況(債権者との個別の交渉が必要になるため、現在及び過去の債権者一覧表の作成)
 
 ▽相談者の一カ月の家計簿(毎月の収入・支出をベースに返済額を決定するため)
 
 
〇債務整理手続きで、事情聴取から任意整理の採用を決定
 
 
〇司法書士が本件事件を受任
 
 
〇司法書士が各債権者へ受任通知を発送
 
 
〇債務者への督促が停止
 
 
〇任意整理手続きでの積立金開始
 
 
〇司法書士の債権調査
 
 ▽各債権者宛に取引履歴を請求します。
 
 
〇利息制限法による引直計算の実施
 
 ▽取引履歴を基に利息制限法による引直計算を行います。
 
 
〇債務者の実際の債務額が決定
 
 
〇司法書士による各債権者との個別の交渉開始
 
 ▽引直計算された債務額を基に債務額の元本減額、将来利息カット、返済期間の確保について司法書士が各債権者と交渉します。
 
 
〇各債権者とリスケージュールについて合意成立
 
 
〇任意整理手続き終了
 
 
〇債務者が返済計画に従って返済開始
 
 
 
 
 
 
 いかがでしたでしょうか。
 
 
 
 多重債務の方の経済的再建には4種類の手続きがありますが、この任意整理手続きでの債務整理も数多くされています。
 
 
 
 債務過剰でお困りの方は、個人経済再建法務を専門分野又は取扱分野としている法務事務所の司法書士にご相談してみてはいかがでしょうか。
 
 
 
 
 
人の人生は幾つになってもやり直しがききます
 
 
 
けっして遅いという事はありません
 
  
 
 
 
 
 
※「個人経済再建法務」とは
 
 「倒産法」という名称は法律用語でもなく、また法の制度趣旨を適切に表している言葉でもないため、当事務所では、個人の倒産法に基づく法律上の倒産手続きを「個人経済再建法務」としています。
 
 
 
「個人経済再建支援法務」とは
 
 個人経済再建法務の任意整理事件における司法書士の法律上の業務は、「個人経済再建支援法務」又は「裁判手続代理法務」です。
 
 「個人経済再建支援法務」とは、一般的な法律相談の他、依頼者の意思決定の基、依頼者に代わり、依頼者からの事情聴取をしながら裁判所等に提出する書類の作成を中心に、司法書士が依頼者の裁判手続き等を支援する法律上の業務です。司法書士の「個人経済再建支援法務」は、裁判所等に提出する書類作成に関しては、取扱う事件に制限はありません
 
 「裁判手続代理法務」とは、一般的な法律相談の他、簡易裁判所管轄で、訴額140万円以内の事件において、司法書士が依頼者の裁判手続代理人として、依頼者と協議をしながら、司法書士自身が主体的に裁判手続きをする民事上における法律上の業務です。
 
 一般的に、「裁判手続代理法務」に比べ「個人経済再建支援法務」の方が、裁判手続きに掛かる費用が低額で済み、法律問題の解決を図る事ができます。
 
 
 
認定司法書士とは
 
 訴訟代理資格を修得するための特別の研修を修了し、その認定試験に合格した簡裁訴訟代理等関係業務法務大臣認定司法書士の事を言います。民事における法律事件に関する訴訟代理の専門性は保証されます。
 
 
 
簡裁訴訟代理等関係業務とは
 
 簡裁訴訟代理等関係業務とは、簡易裁判所において取扱う事ができる民事事件(訴訟の目的の価格が140万円以内の事件)についての代理業務等であり、主な業務は次の通りです。
 
 民事訴訟手続き
 ②民事訴訟法上の和解の手続き
 ③民事訴訟法上の支払い督促手続き
 ④民事訴訟法上の訴え提起前における証拠保全手続き
 ⑤民事保全法上の手続き
 ⑥民事調停法上の手続き
 ⑦民事執行法上の少額訴訟債権執行手続き
 ⑧民事に関する紛争の相談、仲裁手続き、裁判外の和解手続き 
 
 
 
(2020年10月6日(火) リリース)