ニュースレター2021 ➊ 個人経済再建法務
  
 
 
自宅を手放したくない! 個人民事再生 
 
-破産をせずに経済再建!!- <制度編>
 
 
 
 ニュースレター2021の第1回は、個人経済再建法務の個人民事再生手続きについて取上げます。
 
 多重債務者の救済方法は、任意整理、特定調停、個人破産が有名ですが、この他に多重債務者の事情に合わせて、より適切に経済的再スタートを切れる方法があります。それが「個人民事再生」です。
 
 例えば、住宅ローンを残したい、つまり自宅を手放したくないという債務者の強い希望や債務者の職種によって個人破産をできない方等、色々な事情があります。そんな人々に有効に機能します。
 
 
 
 今回のニュースレターは、個人民事再生とはどのような法制度で、どのような人がこの法律に適した人達なのかを概説していきます。
 
 
 尚、法律用語については、概説の都合上、その法律用語の使い方は概要的意味での解説とさせて頂き、閲覧者にとって負担を軽減した内容としています。
 
 
 
 
◆債務整理事件の種類
 
 複数の貸金業者からの借金(以下「借入れ」又は「債務」といいます。)で、返済が困難となった方を多重債務者といいます。また、一つの借入先からの多額の借入れに返済が困難となった方もこの多重債務者の一つの類型となります。この多重債務者は、毎月の収入との関係で、生活が困窮しており、貸金業者(債権者)からの督促で、精神的にも疲労している状況である事が予想できます。このような債務者を救済する方法として、我が国では次の4つの方法があります。
 
任意整理(私的手続き)
 
 各貸金業者と個別に交渉し、借入額の減額、将来利息のカット、返済計画の作成(これをリスケージューリング=「リスケ」=「債務返済の繰延べ」といいます。)により、完済を目指す方法です。債務者個人というより、訴訟代理人が各債権者と個別に交渉をし、和解を目指します。各債務額が140万円以内であれば、司法書士の「個人経済再建裁判手続代理法務」を利用する事により、任意整理手続きが可能になります。
 
特定調停(特定調停法)
 
 特定調停法に基づき、簡易裁判所で、特定調停員の仲介の下、債権者と債務者が将来利息のカット、返済計画の作成(リスケージューリング)をし、完済を目指す方法です。債務者が個人で債権者と交渉をする方法としては、中立・公正な調停委員が債務者の経済的再建を念頭に仲介役を果たしますので有効でしょう。特定調停上書面の作成及び提出が必要になりますが、別途、司法書士の「個人経済再建支援法務」を依頼する事で、裁判書類作成を中心とする支援により、申立人の負担を軽減する事ができます。
 
個人破産(破産法)
 
 破産法に基づき、地方裁判所に対し、破産手続開始の申立てをし、裁判所から破産手続開始決定を受け、現在の債務を清算します。そして、免責許可の申立てをし、裁判所の免責許可決定により、残債務の支払い義務の消滅及び免責決定確定により喪失した法律上の制限が当然に復権される手続きです。多重債務者の経済的再建策では最も強力な効果があります。この手続きでは、破産法に基づき書類の作成及び提出が必要になりますが、別途、司法書士の「個人経済再建支援法務」により書類作成を依頼する事で、裁判書類作成を中心とする支援により、申立人の負担を相当程度軽減する事できます。
 
 
個人民事再生(民事再生法)
 
 民事再生法に基づき、地方裁判所に対し、個人民事再生手続の申立てをし、大幅に債務額を軽減し、一定程度の債務を返済計画(リスケジューリング)に従って弁済していく事により完済を目指す方法です。この手続きは、住宅ローンを残したい、つまり自宅を手放したくないという債務者の思いや、債務者の職種が破産手続きをする事により欠格事由に該当し、破産法を利用できない方、破産法に拒絶感の有る方等に有効です。但し、債務者に安定し、継続した収入がある事が要件となります。簡単にいうと、収入はある程度あるが、現在の借入れの返済のために窮している方が主に対象になるでしょう。この手続きも、民事再生法に基づき書類の作成及び提出が必要になりますが、別途、司法書士の「個人経済再建支援法務」により書類作成を依頼する事で、裁判書類作成を中心とする支援により、申立人の負担を相当程度軽減する事ができます。
 
 
 それでは、債務整理事件の中で、個人民事再生につていその要説を概説していきます。
 
 
 
 ◆民事再生法
 
 我が国の倒産処理手続には、1996年(平成8年)当時、清算型手続である破産、特別清算と再建型手続である和議、会社更生、会社整理がありましたが、1999年(平成11年)12月14日に民事再生法が成立し、2000年(平成12年)4月に施行され、和議法が廃止されました。
 
 そして、政府の法制審議会は、2000年(平成12年)9月に「個人債務者の民事再生手続に関する要綱」を総会で決定し、法務大臣に答申しました。この要綱の中に「小規模個人再生(仮称)に関する特則」、「給与所得者等再生(仮称)に関する特則」、「住宅資金貸付債権に関する特則」、「その他」が提案されていました。この提案が今日の個人債務者の新再建手続きの骨格となっています。
 
 この要綱は、2000年(平成12年)11月21日に民事再生法の特則として制定され、同月29日に公布、2001年(平成13年)4月から施行されました。
 
 こうした経緯で導入された個人民事再生は、個人債務者にとっては破産する事なく簡易・迅速に経済的再生を図る事ができ、債権者にとっても債務者が破産した場合よりも多額の弁済を受ける事が可能となる合理的な手続といわれています。
 
 この個人債務者の再建型倒産手続の導入を司法書士や弁護士は大いに歓迎した事でしょう。個人民事再生手続は司法書士も多数関与し、個人民事再生の申立てについては、司法書士の「個人経済再建支援法務」は大きく貢献しています。
 
 
 
■個人民事再生とは
 
 個人民事再生は、民事再生法の特則として位置付けられています。2001年(平成13年)4月から施行された改正民事再生法には、「小規模個人再生に関する特則」、「給与所得者等再生に関する特則」、「住宅資金貸付に関する特則」等から構成され、個人債務者が簡易に再建を図る規定が整備されています。
 
 
 
■個人民事再生の種類
 
 
●小規模個人再生に関する特則
 
 小規模個人再生は、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ再生再建の総額が5,000万円を超えない個人債務者が利用する事ができます。この利用対象者は、小規模な個人事業者から給与所得者、会社役員等が想定されています。
 
 再生計画に基づく弁済の総額によって2種類の基準が規定されています。
 
 
▼再生計画に基づく弁済総額は、無異議債権及び評価済債権の総額が3,000万円を超え5,000万円以下の場合
 
⇒ 当該金額の10分の1を下回ってはならない。
 
 
▼再生計画に基づく弁済総額は、無異議債権及び評価済債権の総額が3,000万円以下の場合
 
⇒ 当該金額の5分の1又は100万円のいずれか多い額を下回ってはならない。
 
 
但し、無異議債権及び評価済債権の総額が100万円を下回っているときはその同額、無異議債権及び評価済債権の総額の5分の1が300万円を超えるときは300万円を下回ってはならない。
 
 
※ 一般的に、個人がこの民事再生手続を利用する場合、弁済総額は3,000万円以下の場合が殆どであると思います。従って、返済しなければならない額は、300万円以上又は最低額として100万円以上になるでしょう。
 
 
※ 無異議債権とは、再生債務者や他の再生債権者が異議を述べなかった届出再生債権の事です。また、評価済債権とは、再生手続における裁判所の再生債権評価手続によって債権の存否や金額が定められた届出再生債権の事です。
 
 
●給与所得者等再生に関する特則
 
 給与所得者等再生の多くは小規模個人再生の規定が準用されていますが、小規模個人再生と大きな相違点は概ね次の通りです。
 
 給与所得者等再生を利用し得る債務者は、小規模個人再生を利用し得る債務者の内、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれる人になります。従って、給与所得者が対象になるでしょう。
 
 再生計画で定めた計画弁済総額は、原則として、再生計画案の提出前2年間の再生債務者の収入からこれに対する所得税、住民税及び社会保険料の相当する金額を控除した額を2で除した金額から、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した額に2を乗じた額以上である事が必要になります。
 
 すなわち、手取収入から最低生活費を控除した額の概ね2年分以上の金額を3年(特別な事情がある場合に限り最長で5年)で弁済を行う計画になります。
 
 尚、収入から公租公課(税金や保険料)を控除し、最低限度の生活費を更に控除した残額を「可処分所得」といいます。
 
※民事再生法上の「可処分所得要件」の要素である収入から控除される「再生債務者とその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額」は,「再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域,当該扶養を受けるべき者の数,物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める」ものとされています(民事再生法241条3項)。
 
 この政令とは,「民事再生法第241条第3項の額を定める政令」の事です。従って、「再生債務者とその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額」は,債務者が家計上で現実に支出した生活費の額ではない事に注意する必要があります。
 
※ 実際の実務では、給与所得者等再生手続が選択できれば、まず給与所得者等再生手続を選び、支障があるようであれば、その後、小規模個人再生手続に移行するといった戦略も想定されるでしょう。給与所得者等再生手続の場合、可処分所得要件が加わるので、最低弁済額を大きく超過する金額が計画弁済総額の下限となる事もあり得ますので注意を要します。
 
 
●住宅資金貸付債権に関する特則
 
 一般に、「住宅資金特別条項」といいます。住宅資金特別条項とは,住宅ローン等の住宅資金貸付債権について、従来どおり又はリスケジュールして弁済を継続することによって,自宅を処分されないようにしつつ,住宅ローン以外の借入れだけを個人民事再生によって減額・分割払いとする事ができる制度の事です。
 
 従って、この住宅資金貸付債権に関する特則は、まさに住宅ローンを残し、自宅を手放したくない方に有効に機能します。
 
 
 
■個人民事再生のイメージ
 
 個人民事再生は、経済的に困窮して支払不能に陥る恐れが生ずるに至ったものの、継続的な収入の維持がされており、借入れが無ければ本来通常の一般的な自由な生活ができるはずの個人債務者を対象にして、破産しないで、総債務額の相当部分を免除し、残った債務を原則3年間で分割弁済する事により、経済的な再建(再生)を図る手続きという事になります。
 
 個人事業者を対象にした制度として、債務額の一部を返済すればその余の債務は免除する類型。
 
 給与所得者等を対象とした制度として、可処分所得の2年分以上を原則3年で返済すれば残った債務は免除する類型。 
 
 基本的に、給与所得者等に該当すれば、個人事業者にも該当します。つまり、給与所得者等に該当すれば、その個人債務者は個人事業者を対象とした個人民事再生手続きも選択出来る事になります。
 
 そして、住宅資金特別条項を採用する事により、個人事業者や給与所得者等の個人債務者は、住宅ローンに影響する事なく、つまり住宅を失わないで経済的再建(経済的再生)を果たす事ができるオプションも用意されています。
 
 
 
■個人民事再生手続の流れ(イメージ)
 
 
●相談者からの司法書士に対する相談
 
 相談者から司法書士に対して、借入れと支払いの問題で、相談を受けます。この段階は、相談者の事情並びに債権者一覧表及び相談者の収支、1カ月の家計等を事情聴取し、現在の状況を把握します。
 
 司法書士から各債務整理の利点、欠点を説明し、質疑応答を行い、相談者の事情や希望も踏まえ、債務整理の暫定的な方針を立てます。この回のニュースレターでは、個人民事再生がテーマなので、個人民事再生手続(本件事案)を採用します。
 
 その上で、相談者から司法書士に対し、事案の依頼がありましたら、相談者が初期費用を支払い、委任契約書等に双方が署名押印をして、委任契約が成立し、効力が発生し、本件事案が法律的手続きの対処として事件化してます。
 
 
●各債権者宛に受任通知発送
 
 相談者からの事情聴取も基に、各債権者宛に法律的手続きに入った事を知らせるため、司法書士より受任通知(事実の通知)を発送します。この際、この受任通知に債権調査依頼及び取引履歴開示請求依頼(事実の調査通知)を併記します。
 
 
●債権調査
 
 相談者の債務額がこの段階で初めて確定します。
 
 
●基本方針の暫定的決定
 
 この段階で、正式に債務整理、つまり本件の場合は、個人民事再生手続についての基本方針を決定します。本件では、依頼者は住宅資金特別条項を定める事を希望しています。この暫定的に決定する債務整理の手続きで、返済計画が困難な場合は、この暫定的方針の見直しを行う事になります。
 
 
●返済計画の具体的なシュミレーション
 
 次の要素を基に、依頼者の返済計画の具体的なシュミレーションを立案します。
 
 
▼依頼者の家族構成
 
 
▼依頼者の負債(住宅ローン、貸金業者からの借入れ等)
 
 
▼再生手続開始の原因たる事実
 
 
▼依頼者の資産(不動産、債権、動産、預貯金、現金、その他)
 
 〇不動産→土地、建物
 
 〇債権→生命保険解約返戻金、退職金見込額、ゴルフ会員権、敷金・保証金、出資金、売掛金等
 
 〇動産→自動車、電話加入権、
 
 〇預貯金→普通預金等
 
 〇現金→手持ちの金銭
 
 
▼家計状況(収入、支出)
 
 〇収入→依頼者や配偶者の給与、ボーナス等
 
 〇支出→食費、水光熱費、電話代、新聞代、保険掛金、ガソリン代、被服費、教育費、交際費、住宅ローン、貸金業者への返済等
 
 
●個人民事再生手続の申立て決定
 
 債権調査及び返済計画のシュミレーションを基にした返済計画の立案を踏まえ、個人民事再生手続開始の要件に適合する事を確認し、また管轄裁判所を調査し、依頼者の債務整理手続事件は、個人民事再生手続に正式に決定します。
 
 
▼個人民事再生手続開始の要件
 
 事業者の民事再生手続の申立原因は、「事業の継続に著しい支障を来たす事なく弁済期にある債務を弁済する事ができないとき」です。また、自然人の民事再生手続の申立原因は、「債務者に破産の原因たる事実の生ずる恐れがあるとき」です。
 
 そしてこれに加えて民事再生法上、簡易・迅速に再生を図る事がきるよう、「再生債権総額の上限」や「収入要件」、「再生計画上の計画弁済総額」等を規定しています。
 
 
 個人民事再生の申立てをするには、「破産の原因たる事実=支払不能のおそれ」が要件として必要になります。
  
 
 〇支払不能の意味
 
 支払不能とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます。一時的にお金が無い場合は、支払不能に該当しません。支払い不能状態は、客観的状態である事が必要で、債務者自らの主観的な判断では評価されません。
 
 
 〇支払不能の一般的基準
 
 一般的に、手取り収入から必要最小限度の生活費を控除した可処分所得で、毎月の返済をできない場合は、借入れのために返済を繰返さざるを得ず、いわゆる自転車操業の状態となるので、支払不能となります。
 
 この生活費の算出方法ですが、一般的な世帯が消費する様々な生活に必要な物資の合計額であり、極端に生活レベルを落として算出しなければならないものではありません。感覚としては、毎月収入があり、借入れの返済がなければ普通に生活できる場合、その返済額により、必要以上に生活費が圧縮され、生活が困難となっている方が該当するでしょう。生活費は、その人その人の生活状況で変わってきます。他人の暮らしと比べるものではありません。生活が困窮している場合は、まず個人経済再建法務を取扱分野としている司法書士に相談する事が賢明でしょう。
 
 
▼裁判所管轄
 
 個人民事再生事件は、再生債務者が営業者であるときは、主たる営業所の所在地、営業者でないときは、その普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所、つまり再生債務者の住所地を管轄する地方裁判所が管轄になります。
 
 
●個人民事再生手続の開始申立書起案
 
 個人民事再生は、債務者又は債権者の申立てによって開始します。再生手続に関する申立ては、特別の定めがある場合を除き、書面でしなければなりません。
  
 
▼個人民事再生開始の申立書
 
 〇小規模個人再生・給与所得者等再生共通の必要的記載事項
 
 ①申立人の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所
 
 ②再生債務者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所
 
 ③申立ての趣旨
 
 ④再生手続開始の原因たる事実
 
 ⑤再生計画案の作成の方針につていの申立人意見
 
 
 〇小規模個人再生の必要的記載事項
 
 小規模個人再生を行う事を求める再生手続開始の申立書には、次の事項をも記載しなければなりません。
 
 ①小規模個人再生を行う事を求める旨の申述が小規模個人再生の手続開始の要件に規定する要件に該当しない事が明らかとなった場合における通常の再生手続の開始を求める意思の有無。
 
 ②再生債務者の職業、収入その他の生活の状況
 
 ③再生債権の総額
 
 
▼給与所得者等再生の必要的記載事項
 
 給与所得者等再生を行う事を求める再生手続開始の申立書には、次の事項をも記載しなければなりません。
 
 ①給与所得者等再生を行う事を求める旨の申述が小規模個人再生の手続開始の要件等に該当しない事が明らかとなった場合のおける通常の再生手続の開始を求める意思の有無。
 
 ②給与所得者再生を行う事を求める旨の申述が要件に該当しない事が明らかとなった場合における小規模個人再生による手続の開始を求める意思の有無。
 
 ④再生債務者の職業、収入、家族関係その他の生活の状況。
 
 ⑤再生債務者において、過去に再生計画の遂行、ハードシップ免責の決定確定した事、破産法による免責の決定が確定した事のいずれかがある場合には、各々の定める日から7年以内に再生手続開始の申述がされたものでない事。
 
 
▼その他の記載事項
 
 再生手続開始の申立書には、必要的記載事項の他、次の事項を記載する事とされています。
 
 ①再生債務者が事業を行っているときは、その事業の内容及び状況、営業所又は事業の名称及び所在地並びに使用人その他の従業員の状況
 
 ②再生債務者の資産、負債その他の財産状況
 
 ③再生手続開始の原因たる事実が生ずるに至った事情
 
 ④再生債務者の財産に関してされている他の手続又は処分で申込人に知れているもの
 
 ⑤再生債務者の使用人その他の従業員で組織する労働組合があるときは、その名称、主たる事務所の所在地、組合員の数及び代表者の氏名、再生債務者の使用人その他の従業員の過半数を代表する者があるときは、当該債務者の使用人その他の従業員の過半数を代表する者があるときは、当該者の氏名及び住所
 
 ⑥再生債務者についてが外国管財人との協力の規定にかんする規定する外国倒産処理手続があるときは、その旨
 
 ⑦原則的な管轄権を有しない裁判所に再生手続開所の申立てをするときは、当該再生事件が継続する裁判所、事件の表示及び再生債務者の氏名又は名称
 
 
●再生手続開始の申立書の添付書類
 
 
▼小規模個人再生・給与所得者等再生共通の添付書類
 
 再生手続開始の申立書には、次の書類を添付するものとされています。
 
 ①再生債務者の住民票の写し
 
 ②債権者一覧表
 
 ③再生債務者の財産目録
 
 ④再生債務者が事業を行っているときは、再生手続開始の申立ての日前3年以内に法令の期待に基づき作成された再生債務者の貸借対照表及び損益計算書(確定申告時等に作成している場合には、添付を要します。)
 
 ⑤再生債務者が事業を行っているときは、再生手続開始の申立ての日前1年間の再生債務者の資金繰りの実績を明らかにする書面及び再生手続開始の申立ての日以後6カ月間の再生債務者の資金繰りの実績を明らかにする書面
 
 ⑥再生債務者の財産に属する権利で登記又は登録がされたものについては、登記事項証明書又は登録原簿に記載されている事項を証明した書面(裁判所が必要と判断したとき。)
 
 
 〇小規模個人再生の添付書類
 
 小規模個人再生を行う事を求める再生手続開始の申立書には、次の書面をも添付しなければなりません。
 
 ①確定申告書の写し、源泉徴収票の写しその他再生債務者の収入の額を明らかにする書類
 
 ②財産目録に記載された財産の価格を明らかにする書面
 
 ③住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨を記載した債権者一覧表を提出するときは、次の書面
 
  ㋐住宅資金貸付契約の内容を記載した証書の写し
 
  ㋑住宅費金貸付条項に定める各弁済期における弁済すべき額を明らかにする書面
 
  ㋒住宅及び住宅の敷地の登記事項証明書
 
  ㋓住宅以外の不動産にも抵当権が設定されているときは、当該不動産の登記事項証明書
 
  ㋔再生債務者の住宅において自己の居住の様に供されない部分があるときは、当該部分の『床面積を明らかにする書面
 
  ㋕保守会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務の全部を履行したときは、当該履行により当該保証債務が消滅した日を明らかにする書面
 
 
 〇給与所得者等再生の添付書面
 
 給与所得者等再生を行う事を求める再生手続開始の申立書には、次の書面を添付しなければなりません。
 
 ①所得税等に相当する額を控除した平均収入年額
 
 ②財産目録に記載した財産の価格を明らかにする書面及び実務上は可処分所得の計算書等
 
 
●個人民事再生手続開始の申立て
 
 管轄裁判所に依頼者(申立人)の個人民事再生手続開始の申立てを行います。
 
 
●裁判所による再生手続開始決定が宣言
 
 裁判所は、小規模個人再生及び給与所得者等再生による再生手続を求める旨の申述があった場合、棄却又は要件に該当しない事が明らかな場合を除き、再生手続開始の決定がなされます。
 
 この宣言は、あくまでも個人再生手続の開始決定の宣言であり、個人再生手続の認可が決定した旨の宣言ではありません。
 
 この個人再生手続の中で、裁判所は次の重要な手続を行います。
 
 
 ▼裁判所による利害関係人に対する広告及び通知
 
 〇債権の手続内確定と簡便な債権調査
 
 〇再生債権の評価
 
 
 ▼再生債務者の財産の調査及び確保
 
 
●裁判所による利害関係にに対する広告及び通知
 
 小規模個人再生手続開始の決定又は給与所得者等再生手続開始の決定をしたときは、直ちに、裁判所の担当書記官は、再生手続開始の決定の主文及び再生債権の届出をすべき期間、届出があった再生債権に対して異議を述べる事ができる期間を広告しなければなりません。
 
 また、裁判所の担当書記官は、再生債務者、知れている債権者に対しては、再生手続の決定の主文及び再生債権の届出をすべき期間、届出があった再生債権に対しては異議を述べる事ができる期間を記載した書面を送達しなければなりません。
 
 
 ▼債権の手続内確定と簡便な債権調査
 
 
 〇個人民事再生における再生債権の調査においては、通常の民事再生のような債権の実体的確定手続は行われず、単に手続内における確定が行われるのみになります。つまり、確定した債権には、既判力や執行力は付与されません。
 
 〇異議のあった再生債権につていは、決定手続である評価の手続によって、その存否と額が判断されます。
 
 
 ▼再生債権の評価の申立て
 
 再生債権の評価の申立てがあると、裁判所は、再生債権の評価に関し裁判所を補助する事を目的として、必要的に個人再生委員を選任します。裁判所は、評価申立てのあった再生債権の調査を行った個人再生員の意見を聴いた上で、当該再生債権について、その債権の存否及び額又は担保不足見込額を定めます。
 
 裁判所の評価を経た再生債権は評価済再建と呼ばれ、無意義債権と同様、書面決儀で議決権を得る他、基準債権総額を計算する事や最低弁済額要件でも考慮され、再生計画に基づいて再生期間中に弁済を受けられるようになります。
 
 
●再生債務者の財産の調査及び確保
 
 個人民事再生の申立てをするには、「破産の原因たる事実=支払不能のおそれ」が要件として必要になります。再生債務者の財産や収入を調査し、その内容を把握する事は、債権の調査と同様、非常に重要な事になります。
 
 再生債務者は、再生手続開始後遅滞なく、再生債務者に属する一切の財産について再生手続開始のときにおける価額を評定しなければなりません。
 
 評定は、財産を処分(強制競売)した場合の評価(清算価値)によるのが原則となります。裁判所は、個人再生委員を選任して財産調査をさせるのが実務となります。
 
 計画弁済総額が、再生債務者が仮に破産した場合の再生債権者が受ける配当よりも少ない場合には「一般の利益に反する」と解されています。そのため、清算価値を財産評価の基準としました。
 
 財産評定は、小規模個人再生においては再生計画案の決議に際し、給与所得者等再生においては再生計画案の対する意見陳述に際し、再生債権者にとって重要な判断資料となりますし、再生裁判所にとっても再生計画の認可・不認可の判断に際し基礎的な資料となります。
 
 個人民事再生における財産評定に関しては、通常の民事再生と異なって貸借対照表の作成は不要であり、又、財産状況報告集会も行われません。再生債務者の財産は、専ら財産状況報告書におって開示される事にまります。
 
 
●個人再生手続の申立人の財産目録作成
 
 再生債務者は、財産評定を完了したときは、直ちに再生手続開始のときにおける財産目得を作成して裁判所に提出しなければなりません。
 
 個人民事再生に関しては、再生手続開始の申立書に添付した財産目録の記載を引用する事も出来ます。
 
 再生債務者は、財産目録を裁判所に提出したときは、再生債権者の閲覧に供するため、再生計画の認可又は不認可の決定が確定するまで、写しを相当と認める場所に備え置かなければなりません。
 
 
●再生債務者の報告書
 
 再生債務者は、再生手続開始後遅滞なく、次の事項を記載した報告書を裁判所に提出しなければならないとされています。
 
 
 ▼再生手続に至った事情
 
 ▼再生債務者の業務及び財産に関する経過及び現状
 
 ▼その他再生手続に関し必要な事項
 
 
 また、再生債務者は報告書を裁判所に提出したときは、写しを相当と認める場所に備え置かなければなりません。
 
 
●再生計画案の策定
 
 再生計画案とは、再生債権者の権利の変更を通じて再生債務者の事業又は経済生活の再生を目的とした再建計画の案です。再生計画案では、権利変更の内容として、債務の免除(免除率)、分割弁済による期限の猶予(返済期間)その他の権利変更の一般的基準を定めます。
 
 
●再生計画案作成のポイント
 
 再生計画案の作成に当たっては、小規模個人再生の場合と給与所得者等再生の場合とでポイントが変わってきます。
 
 
▼小規模個人再生の場合
 
 計画弁済総額は、最低弁済額以上でなければならず、かつ、清算価値保障原則をも満たしているものでなければなりません。小規模個人再生において再生計画が認可されるためには、その前提として債権者の法定多数の同意が必要になります。そのため、清算価値保障原則を満たすような再生計画案の策定が必要です。
 
 
 ※ 計画弁済総額とは、無異議債権及び評価済債権に一定の免除率を乗じた金額を基準債権から控除した金額が計画弁済総額といいます。
 
 ※ 最低弁済額とは、基準債権に対する民事再生法上の再生計画に基づく弁済額の総額について、民事再生法の個人民事再生の特則によって規定された弁済額の基準を満たす最低額をいいます。
 
 ※ 基準債権とは,無異議債権及び評価済債権の中で、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び民事再生法上の一定の請求権を除く届出再生債権をいいます。
 
 ※ 清算価値保障原則とは、再生債務者が破産した場合の予想配当額(清算価値)を上回らなければならないという原則をいいます。
 
 
▼給与所得者等再生の場合
 
 給与所得者等再生においては、可処分所得基準最低弁済額清算価値保障原則の3つの要件を全て満たす再生計画案を立案する事が必要です。この3つの要件を満たした再生計画案の作成が困難と予想される場合は、再生債務者が給与所得者等再生の対象者であったとしても小規模個人再生の申立てを検討すべきです。
 
 
●ハードシップ免責
 
 再生計画遂行中に次の4つの要件をすべて満たした場合、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定を行う事ができます。尚、住宅資金特別条項を定めた再生債務者もハードシップ免責の申立ては可能ですが、免責決定を得た場合であっても、銀行等の有する抵当権等には影響を及ぼさない事から、最終的に抵当権の実行により自宅を手放す事になるでしょう。
 
 ①再生債務者がその責めに帰す事ができない事由により再生計画を遂行する事が極めて困難となった事
 
 ②一般的基準により変更さてた後の各基準債権に対しその4分の3以上の弁済を終えている事
 
 ③面積の決定をする事が再生債権者の一般の利益に反する者でない事(清算価値保障原則)
 
 ④再生計画の変更をする事が極めて困難である事
 
 
●小規模個人再生における再生計画案の提出
 
 再生債務者は、債権届け出期間の満了後、裁判所の定める期間内(一般異議申述期間の末日から2カ月以内)に、再生計画案を作成して裁判所に提出しなければなりません。再生計画案が期限内に提出できなかった場合、再生手続は廃止される事になります。
 
 
▼届け出債権者の決議
 
 裁判所は、異議申述機関が経過し、かつ、報告書が提出された後でなければ、再生計画案を決議に付する事ができません。異議申述期間内に届出債権に対する異議が述べられた場合には、異議申述期間の末日から3週間の不変期間が経過するまでの間も再生計画案を決議に付する事はできません。
 
 
▼裁判所による再生計画案の調査
 
 裁判所は、再生計画案について法定所定の事由(法174条2項各号(3号を除く)又は法231条2項各号)に該当すると認める場合は、その再生計画案を決議に付する事ができません。
 
 
▼再生計画案の書面による決議
 
 再生計画案の提出があった場合、裁判所は、事件の記録の調査の結果不認可事由がないと考えられるときは、再生計画案を書面による決議に付する事を決定します。小規模個人再生は、通常の民事再生とは異なり、債権者集会による決議の方法は採用されておらず、債権者の決議は、書面決議によりのみ行われます。裁判所は、
、hsnい決議権を行使できある再生債権者(議決権者)に対し、再生計画案を書面及び再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間(回答期間)内にその旨を回答すべき旨を記載した書面を送達します。
 
 議決権者は、異議申述期間内に異議を述べなかった再生債権(無意義債権)と再生債権の評価の申立てにより裁判所が債権の額又は担保不足見込額を定めた再生債権(評価済債権)を有する者です。未届債権者、異議が申述されたが評価の申立てがなされなかった債権者(異議債権)、評価の申立てがなされたが認めれらなかった債権者(未評価債権)は議決権を有しません。
 
 
▼再生計画案の決議要件
 
 小規模個人再生の再生計画案の可決要件は、債権者の再生計画案に対する積極的賛成を求めるものではなく、回答期間内に再生計画案に同意しない旨を書面で回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の2分の1を超えない事とされています(消極的同意)。届出再生債権者は、無異議債権、評価済債権の額に応じて、各々議決権を行使する事ができます。
 
 
▼再生計画案の認可決定
 
 再生計画案が債権者により可決されたのち、裁判所は再生計画案について認可・不認可の判断を行う事となります。
 
 
▼再生計画案の認可と効力
 
 個人民事再生は、再生計画認可決定の確定により、自動的に終了します。再生計画の認可決定が確定したときは、再生債権である限り、再生計画の一般的基準に従って権利が変更されます。
 
 
●給与所得者等再生における再生計画案の提出
 
 給与所得者等再生における再生改革案の認可手続は小規模個人再生に比較して簡素化されています。つまり、裁判所が再生債権者の意見を聴く事を必要としているだけで、再生債権者の決議は必要とはされていません。このことから、小規模個人再生より給与所得者等再生の方が簡易、迅速な再生手続が可能となっています。裁判所は給与所得者等再生について法の定める不認可事由が存在しないと確認できれば、再生計画案を認可します。給与所得者等再生は、小規模個人再生と比較して、利用対象債務者及び再生計画認可の要件に厳格な制限がある代わりに手続きが簡素・合理化しているのが特徴です。
 
 再生債務者は、債権届出期間の満了後、裁判所の定める期間内に再生計画案を作成して裁判所に提出しなけらばなりません。当該期間内に再生計画案が提出されないときは、裁判所の職権で当該再生手続が廃止になります。
 
 裁判所は、提出された再生計画案が適切なものであるかどうかを調査した上で、これを認可するか、若しくは不認可とするかを決定します。再生計画案を債権者の決議に付す必要がない代わりに、その代替措置として債権者の意見を聴取しなければなりません。
 
 
▼再生弁済額及び清算価値保障原則
 
 再生計画案では、再生債権者に対する債務の減免の一般的基準を定める事となりますが、一般的には、債務の減免を受ける比率を表示する事によって行うため、基準債権から基準債権に免除率を乗じてた金額を控除して計画弁済総額が算出されます。
 
 基準債権に対する再生計画に基づく弁済額の総額(計画弁済総額)が、債務額が3,000万円を超え5,000万円以下の場合には総債務額の10分の1以上の額、債務総額が3,000万円以下の場合には総債務額の5分の1又は1000万円のいずれか多い額(但し、総債務額の5分の1が300万円以上の場合は300万円)を満たすものでなければなりません(最低弁済額)。
 
 また、計画弁済総額は、再生債務者が破産した場合の予想配当額(清算価値)を上回るものでなければらず(清算価値保障原則)、予想配当額に満たない弁済率を定める再生計画案は再生債権者の一般の利益に反するのもとされています。
 
 この要件は、小規模個人再生における要件にお同じです。
 
 
▼可処分所得要件
 
 給与所得者等再生は再生計画案について債権者の同意を得る必要が無い事から、債権者の同意に代わる要件として可処分所得要件が定められています。計画弁済総額はこの要件をも満たすものでなければなりません。
 
 ①再生計画案提出前2年間の再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額から所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民事税又は特別区民税並びに社会保険料に相当する額を控除した額を2で除した額。
 
 ②再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な政令で定める1年分の費用の額。
 
 ③①の金額から②の金額を控除した額に2を乗じた額。
 
 
▼再生計画案の意見聴取
 
 給与所得者等再生では、再生債務者から再生計画案の提出があった場合には、一定の場合を除き、裁判所は再生計画案を認可すべきかというどうかについて、届出債権者の意見を聴く旨を決定します。
 
 裁判所は、上記決定後、届出再生債権者の意見を聴く旨を広告し、かつ、届出再生債権者に対しては、再生計画案を記載した書面を送付するとともに、再生計画案について不認可事由に該当する事由の有る旨の意見がある者は裁判所の定める期間内にその旨及び当該自由を具体的に記載した書面を提出づべき旨を記載した書面を送付します。上記の意見聴取期間は、届出再生債権者の意見を聴く旨の決定の日から2週間以上2カ月以下の範囲内で、裁判所が定めます。
 
 
▼再生計画案の認可決定
 
 裁判所は、給与所得者等再生について一定の不認可事由に該当する場合を除き、再生計画認可の決定をします。
 
 
▼再生計画案の認可と効力
 
 個人民事再生は、再生計画認可決定の確定により、自動的に終了します。再生計画の認可決定が確定したときは、再生債権である限り、再生計画の一般的基準に従って権利が変更されます。
 
 
●再生計画案等の書面(給与所得者等再生の場合)
 
 ①再生計画案
 
 ②物件目録
 
 ③抵当権目録
 
 ④債権者株式会社再生銀行についていの住宅資金特別条項(住宅資金特別条項の定めがある場合)
 
 ⑤上申書(例えば弁済期間を5年間とするための上申書)
 
 ⑥再生計画による弁済計画表
 
 
●住宅資金貸付債権に関する特則
 
 この制度は、バブル崩壊後の「住宅ローン倒産」の急増の救済措置として2000年(平成12年)に民事再生法の改正により創設されました。
 
 住宅資金貸付債権とは、住宅の建設若しくは購入に必要な資金、又は、住宅の改良に必要な資金の貸付に係る分割払いの定めのある再生債権であって、当該債権、又は、当該債権に係る債務の保証人の求償債権を担保するために抵当権が住宅に設定さてれいるものになります。
 
 住宅資金特別条項とは、再生債権者の有する住宅資金貸付債権の全部又は一部を変更する再生計画の条項をいい、住宅資金貸付契約とは、住宅資金貸付債権に係る資金の貸付契約をいいます。
 
 
●住宅資金貸付債権に関する特則適用の要件
 
 
 ①住宅資金貸付債権である事。
 
 ②住宅ローン関係の抵当権以外の担保権が設定されていない事
 
 
●住宅資金貸付債権の弁済許可制度
 
 再生手続の開始により、再生債権に対する手続外の弁済が禁止されるため、債務者が残元本全額に対して期限の利益を喪失することとなって、その後、再生計画認可決定の確定時までに多額の遅延損賠金が発生するという事態が生ずる事になります。これを回避するため、2002年(平成14年)改正ににより住宅資金貸付債権に対する弁済許可制度が創設されました。
 
 
●抵当権の実行手続の中止命令
 
 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合に、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて、住宅又は再生債務者が有する住宅の敷地に設定されている抵当権の実行手続の中止を求める事ができます。
 
 
●住宅資金特別条項の形式的要件
 
 ①住宅資金特別条項を定めた再生計画案は、再生債務者のみが提出できます。
 
 ②住宅資金特別条項は、住宅資金特別条項である旨及び一定の事項を明示しなければなりません。
 
 ③再生債務者は、住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出するときは、住宅資金貸付契約の内容を記載した証書の写し等一定の書面を添付しなければなりません。
 
 
●住宅資金貸付条項の内容
 
 住宅資金貸付条項の内容については、次の2種類があります。
 
 ①住宅資金貸付債権者の同意を要せずにリスケジュールを可能にする「同意不要型」
 
 ②住宅資金貸付債権者の同意を要する「同意型」
 
 
 同意不要型の住宅資金特別条項は、次の3種類の類型があります。
 
 ①期限の利益回復型(「そのまま型」含む。)
 
 ②最終弁済期延長型
 
 ③元本据置型
 
 
 尚、同意型は各同意不要型に定められた変更以外の変更をする事を内容とする住宅資金特別条項を定める事ができます。
 
 
●住宅資金特別条項を定めた再生計画案の決議
 
 住宅資金特別条項を定めた再生計画案が提出されたときは、裁判所は、当該住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者の意見を聴かなければなりません。
 
 
●住宅資金特別条項を定めた再生計画案が可決
 
 住宅資金特別条項を定めた再生計画案が可決された場合は、裁判所は不認可事由に該当しなければ、再生計画認可の決定をします。
 
 
●住宅資金特別条項を定めた再生計画案の認可決定の効果
 
 民事再生法は、再生計画は別除権者の担保権や再生債権者が再生債務者の保証人・連帯債務者・物上保証人に対して有する権利に影響を及ぼさない事を原則としていますが、住宅資金特別条項を定めた再生計画は、この原則の例外の効果が生じるようになります。この事により、住宅ローンは守られる事となります。
 
 
 
 
 
 いかがでしたでしょうか?
 
 
 個人民事再生法は、個人経済再建法務(倒産法務)の中で、最も重厚なスキームで、一般的に難解な法制度であると言われたいます。
 
 
 しかし、債務整理の中で、住宅ローンを残し、自宅を手放さず、住み続ける事ができる事、債務者の職種により破産ができない場合に利用出来る事、更に破産という言葉に抵抗感の有る債務者の方にとって有効です。
 
 
 特に、年収は一般の生活者より高く、住宅ローンを除き、他の貸金業者からの借入れで困窮している方にとっては、極めて有効な制度ではないでしょうか。
 
 
 債務整理は、大きく分けて4種類ありますが、この個人民事再生も視野に入れてみるのもいいのではないかと思います。
 
 
 相談の際は、個人経済再建法務(倒産法務)を専門分野又は取扱分野としている法務事務所の司法書士にご相談下さい。
 
 
 
 
 
 
 
 人の人生は幾つになってもやり直しがききます
 
 
 
 けっして遅いという事はありません
 
  
 
 
 
 
「個人経済再建法務」とは
 
 「倒産法」という名称は法律用語でもなく、また法の制度趣旨を適切に表している言葉でもないため、当事務所では、個人の生活の経済的再スタートのための法律上の手続きを「個人経済再建法務」としています。
 
 
「個人経済再建支援法務」「個人経済再建裁判手続代理法務」とは
 
 「個人経済再建法務」は、各法律手続により異なりますが「個人経済再建支援法務」又は「個人経済再建裁判手続代理法務」の2種類の法律上の業務からなります。
 
 「個人経済再建支援法務」とは、一般的な法律相談の他、依頼者の意思決定の基、依頼者に代わり、依頼者からの事情聴取をしながら裁判所等に提出する書類の作成を中心に、司法書士が依頼者の裁判手続き等を支援する法律上の業務です。司法書士の「個人経済再建支援法務」は、裁判所等に提出する書類作成に関しては、取扱う事件に制限はありません
 
 「個人経済再建裁判手続代理法務」とは、一般的な法律相談の他、簡易裁判所管轄で、訴額140万円以内の事件において、司法書士が依頼者の裁判手続代理人として、依頼者と協議をしながら、司法書士自身が主体的に裁判手続きをする民事上における法律上の業務です。
 
 一般的に、「個人経済再建裁判手続代理法務」に比べ「個人経済再建支援法務」の方が、裁判手続きに掛かる費用が低額で済み、法律問題の解決を図る事ができます。
 
 
「認定司法書士」とは
 
 「認定司法書士」とは、訴訟代理資格を修得するための特別の研修を修了し、その認定試験に合格した簡裁訴訟代理等関係業務法務大臣認定司法書士の事を言います。民事における法律事件に関する訴訟代理の専門性は公式に認められています。
 
 
「簡裁訴訟代理等関係業務」とは
 
 「簡裁訴訟代理等関係業務」とは、簡易裁判所において取扱う事ができる民事事件(訴訟の目的の価格が140万円以内の事件)についての代理業務等であり、主な業務は次の通りです。
 
 民事訴訟手続き
 ②民事訴訟法上の和解の手続き
 ③民事訴訟法上の支払い督促手続き
 ④民事訴訟法上の訴え提起前における証拠保全手続き
 ⑤民事保全法上の手続き
 ⑥民事調停法上の手続き
 ⑦民事執行法上の少額訴訟債権執行手続き
 ⑧民事に関する紛争の相談、仲裁手続き、裁判外の和解手続き 
  
 
 
(2021年3月4日(木) リリース)