【ニュースレター 2022 ➊ 民事訴訟法務】
<ポイント解説>
交 通 事 故 事 件
法務費用特約保険(通称 弁護士費用特約保険)
による物損事故対策!!
今回のニュースレター2022第1回民事訴訟法務は、<ポント解説>交通事故事件 法務費用特約保険(いわゆる弁護士費用特約保険。この特約保険は、被保険者が法律事件として自身の事故に対処するときに利用するものであり、各保険会社は各々固有の名称を付けていますが、必ずしもその趣旨と合致した固有名詞が付けられているとは言えないので、誤解を避ける為このニュースレターでは一律に「法務費用特約保険」とする事とします。)による物損事故対策について取上げます。
交通事故事件に関しては、2019年の【ニュースレター❷及び❸民事訴訟法務】にて、その法律的事件処理の流れを取上げましたが、今回はポイント解説と題して、物損事故対策に焦点を当て、その要説を解説していきます。
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<CONTENTS>
■ 交通事故事件の物損事故の為の基礎知識
■ 実際の物損事故対策
■ 法務費用特約保険の必要性と有用性
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■交通事故事件の物損事故の為の基礎知識
交通事故には、大きく分けて人身事故と物損事故があります。物損事故に比べ人身事故の方が複雑であり、損害賠償額や訴訟費用が掛かり、その額は大きく異なる事が一般的です。
各損害保険会社が自動車保険に附帯する特約として、法務費用特約保険を商品化しています。この法務費用特約保険は、人身事故や物損事故に遭った際、被害者や加害者に代わって司法書士や弁護士(法律実務家)が、その相手方と交渉をしたり、訴訟を支援したりするときに、その訴訟費用等を補償するための保険になります。
この法務費用特約保険は、保険金の上限はあるものの、交通事故に遭った当事者にとっては、とても心強い保険であり、加入者数も右肩上がりに増加しているようです。皆さんも聞いた事があったり、既に加入している人もいるのではないでしょうか。今後は常識化する特約保険の一つになると考えられます。
今回は、自動車と自動車が交通事故を起こした場合に焦点を当て掲載します。
●交通事故の種類
交通事故の種類は、人身事故と物損事故の2種類のどちらかになります。人身事故の場合は、大抵物損事故、つまり自動車の損賠が発生している可能性があります。従って、人身事故の場合、物損事故が伴います。
物損事故の場合は、人身事故が伴う事故かそれとも人身事故が伴わない事故に分かれます。従って、物損事故の場合、その事故は人身事故としても対処しなければならないのか、それとも人身事故は発生していない事故なのかを見極めなければならない事になります。
つまり、自動車と自動車との事故の場合は、次の類型になります。
①人身事故及び物損事故
②人身事故を伴わない物損事故(純粋な物損事故)
③人身事故は発生したが、現実的には物損事故のみの対処ですむ事故
の3種類になります。
従って、今回のニュースレターのテーマである物損事故の類型は、②及び③になります。この②及び③を射程範囲にして概説していきます。
ここで③の場合は、例えば自動車に自動車が後ろから追突し、前のドライバーの首に衝撃があったが、痛みは殆ど無く、病院には行かないで済んだとき等が挙げれると思います。又は、首の痛みにより当日救急車で病院に搬送されたが、検査の結果、軽度の打撲で骨にも神経にも損傷がない場合で、自賠責保険で十分間に合ったとき等もあると思います。
尚、我が国の免許は「点数制度」が採られており、運転者の過去3年間の違反点数の累積に応じて免許の停止や取消し等の行政処分が行われます。交通事故を起こした場合、一般的に器物損壊だけであれば、それだけで行政処分がなされる事はありません。余程の事があった場合に、安全運転義務違反による減点がある程度です。他方、死傷者が出た場合、その事故の程度により減点される事になります。
行政処分は民事賠償や刑事処分の手続きの進行とは関係なく進みます。そのため、刑事処分で不起訴処分となっていも、免許取消しや停止になる事もあります。
●交通事故と保険
交通事故で物損事故の場合、保険の種類は、一般的に次のようになっています。
▼任意加入保険(物損事故)
損害保険 → 対物賠償責任保険、車両保険
相手方が物損に関して任意保険に加入していない場合、相手方の保険会社が修理費の先払いを拒否している場合、依頼者側に過失がある事によって修理費の全額が支払われる見込みが少なかったりする場合には、依頼者側の車両保険を利用する事が考えられます。
因みに、強制加入保険である自賠責保険は、人身事故を対象としており、物損事故は原則対象外になります。但し、義肢や眼鏡等の費用は人身損害としてい補償の対象になります。
▼社会保険
労災保険 → 被害者が業務遂行中又は通勤中に交通事故に遭い負傷した場合に、被害者が希望したとき利用する事ができます。自賠責保険に比べ治療費、休業損害、慰謝料の面で補償範囲が狭くなります。その反面過失相殺を問題としないため、被害者の過失割合が大きい場合や加害者と過失割合について争いがある場合には、労災保険を先行して利用する利点があります。
健康保険 → 被害者が業務外で交通事故に遭い負傷した場合に、被害者が希望したとき利用する事ができます。健康保険組合は、立替えた治療費のうち、加害者の過失割合に応じた負担部分を加害者の自賠責保険会社や任意保険会社に求償する事ができます。
●交通事故と保険との関係
物損事故の交通事故の類型は、人身事故を伴わない物損事故(純粋な物損事故)及び人身事故は発生したが、現実的には物損事故のみの対処ですむ事故(準物損事故)になりますが、便宜上、前者を純粋物損事故、後者を準物損事故という事にします。
尚、社会保険は、本人が事情により希望して利用する保険になるため、今回のニュースレターでは複雑さを回避する観点から解説を省略します。
▼純粋物損事故
純粋物損事故の対処をする場合、自身で支払うか、保険を利用する事になりますが、利用する保険の種類は、対物賠償責任保険及び車両保険の2種類です。
一般的に被害者は、自身で支払う事は避けたいと考えますので、保険に頼る事になります。しかし、自動車損害保険は通常、等級制を採用しており、一度利用すると保険等級が3段階程度下がってしまい、その後の保険料が上がる事になり、例えば損害額が比較的少額の場合はできるだけ利用しない事が賢明になるでしょう。
この場合は、過失割合にもよりますが、できるだけ相手方加害者への損害賠償請求で、自身の車両の修理ができれば最善です。
そこで、相手方加害者との交渉が必要になるのです。
▼準物損事故
準物損事故の対処をする場合、まず人身事故は事実上発生していますので、治療費も問題になります。事故直後衝撃があり痛みがあったが、支障がない場合はともかく事故後救急車で病院に搬送され検査を受け、軽度の打棒等と診断を受けた場合は、少なくとも薬と経過観察のための通院は必要になります。
しかし、この場合は自賠責保険を利用する事により、通常は十分対処が可能と考えられます。自賠責保険は、利用したからと言って任意保険のような保険等級はありませんので、安心して利用でき、交通事故の中で人身事故の部分は基本的に自身の支払いや相手方加害者との交渉は基本的に不要になります。
次に、物損事故の部分ですが、この対処は純粋物損事故と基本的に同じ対処方法で解決がつきます。
●物損事故の類型とその対処方法
このように、純粋物損事故も準物損事故も結論的にいうと純粋物損事故の対象方法で解決がつく事になります。
つまり、車両の修理代等は、自身の支払いはせず、また任意保険も利用は避け、できるだけ相手方加害者への請求で解決したいという事です。
物損事故の場合
自身の支払いはせず
任意保険も利用は避け
できるだけ相手方加害者への請求で解決を
●紛争解決手続きの種類
この交通事故の紛争解決手続きは、次のようないくつかの方法が用意されています。
▼示談交渉(私的解決) → 交通事故当事者やその代理人による私的話合いによる合意
▼ADR(裁判外紛争解決手続。ADR法)→ 司法書士会調停センター
日弁連交通事故相談センター
交通事故紛争処理センター
弁護士会民事紛争解決センター
▼調停(民事調停法) → 一般民事調停(簡易裁判所管轄又は地方裁判所管轄)
▼訴訟(民事訴訟法等) → 示談やADR、調停で交通事故当事者の合意に基づく解決が図れない場合の最終的解決方法(簡易裁判所又は地方裁判所)
●交通事故の交渉と法務費用特約保険
物損事故では、純粋物損事故も準物損事故も双方とも単純な物損事故としての対処で解決が可能である事が解りました。
そして、解決方法として最も最善な方法は、交通事故の相手方との交渉で、できるだけ自身の任意保険の利用は避け、相手方への損害賠償請求で解決する方法でした。
●物損事故による不法行為責任とその類型
▼一般不法行為に基づく損害賠償
▼使用者責任に基づく損害賠償
▼監督者責任に基づく損害賠償
▼共同不法行為に基づく損害賠償
●損害項目(物的損害の種類)
▼修理費
▼買替差額
▼登録手続関係費(買替諸費用)
▼評価損
▼台車使用料
▼休車損
▼雑費
▼営業損益
▼積荷その他の損害
▼物損に関する慰謝料
▼ペットに関する損害
●損害賠償請求訴訟の立証責任
物損事故の場合、加害者側との訴訟では、被害者側に加害者の過失や故意がある事の立証責任があります(Cf.自動車損害賠償保障法3条。民法709条、715条、719条)。
物損事故で高額な損害がある場合以外は、現実的には訴訟まで発展するケースがあまりないでしょう。しかし、被害者が加害者と交渉をする場合、その交渉過程で色々な事があり、保険会社や加害者側の司法書士や弁護士が介入してきて複雑化し、訴訟前の交渉段階では必ずしも被害者の言い分が支障無く通る事ができない事があります。
つまり、交渉と訴訟は別物ではなく、交渉段階では、訴訟まで踏まえた態度が被害者にある事が必要であり、その事によって最後は訴訟前に加害者側との和解まで出来る可能性が高まります。
●消滅時効
加害者に対する請求 → 被害者が損害と加害者と知った時から3年。また不法行為の時から20年
●時効の完成猶予と更新
時効の完成猶予と更新ですが、まず時効の完成猶予とは、ある権利の時効について、法律上、時効の完成猶予事由が生じたら、一旦、その権利の時効の完成が猶予されるという状態になり、時効の完成が猶予された権利の存在が法律上、確定した時点から、時効期間が更新され、その後、10年間時効は完成しないという法律上決まった関係の事です。
▼時効の完成猶予事由
〇支払督促
〇和解(民事訴訟法)又は調停(民事調停法)
〇破産手続参加又は更生手続参加、更生手続参加(破産法等)
▼時効の更新事由
〇確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定した時
〇権利の承認があった時
〇強制執行
〇担保権の実行
尚、仮差押え又は仮処分、催告等は、時効の完成猶予事由になりますが、時効の更新事由にはなりません。
つまり、仮差押え等で一旦時効の完成を阻止しますが、更に、これを更新したいときは、その猶予期間中に、裁判上の請求等をするか、相手方から権利の承認を得る必要があります。
●高額な車両との交通事故
交通事故に遭った場合、自身が被害者であっても損害賠償額が加害者より多くなる場合もあります。例えば、過失割合が自身3対相手方7で、損害は自身に生じた額が50万円、相手方に生じた額が200万円であった場合、自身の請求額は35万円なのに対し相手方への支払額は60万円となり、被害者側にとっては加害者より高額な損害賠償の支払いを求められる事になります。
この場合は、加害者の損害額が高額なため、過失割合が適正でも、結果として加害者より高額の支払いになり、司法書士等の費用や訴訟費用まで想定した交渉は、訴訟を提起して勝訴した場合でも、結果として被害者側の赤字になる可能性があるため、事実上、困難になってしまいます。
高額車両との物損事故
過失割合が自身に有利でも
相手方への支払額は高額になる
この場合
司法書士費用や訴訟費用まで想定した交渉は事実上困難
●加害者が無保険の場合
自動車事故の場合、相手方は保険に加入していると考えている人も多いかと思いますが、例えば加害者が無保険であった場合、本当に被害を受けた額の賠償がされるかという問題に突き当たる事になります。
自動車どうしの接触や軽い衝突、追突の場合、首に痛みや違和感を覚え、救急車で搬送され、診断された結果、軽いむち打ち症と言われた場合等は、自動車損害賠償責任保険(略称 自賠責保険)で補償されており特に問題はありませんでしたが、大事な愛車に物損が生じており、この問題の解決が残ってしまいます。
自賠責保険は基本的に人身事故で適用され、物損事故は対象外となります。偶発的事故の場合、加害者の事が知らない事が殆どであり、交渉しても愛車の修理費を支払える資産があるかわ判りません。
この状況では、最悪自身の車の修理代を自分で払う事になりかねず、司法書士等に依頼して加害者側と交渉や訴訟まで出来るわけもありません。
■実際の物損事故対策
●交通事故に対する初期段階の情報収集(証拠資料等の収集)
交通事故は発生した場合、事実関係の確認が最も大事であり、初期段階で必要な情報(証拠)を収集しておく事が後の事故対応に有効となります。
▼被害者の損害保険会社名及び担当者名と所属、連絡先
▼相談者の運転免許証
▼刑事事件記録(刑事事件の有無・進捗状況等の情報把握。訴訟では最も証拠力があります。)
※捜査資料は、捜査の必要性のため、刑事処分(起訴又は不起訴処分)がなされるまで開示されません。
〇実況見分調書(自動車運転処罰法)
※犯罪被害者保護法(第1回公判後)、文書送付嘱託等。刑事事件の確定記録は原則として誰でも閲覧・謄写は可能です(刑事確定記録法、記録事務規程)。
※死傷者がある場合には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(通称 自動車運転処罰法)による処罰の可能性があるため、実況見分調書を作成し、加害者(被疑者)を立件するための捜査を行います。死傷者が無い場合は、例えば被害が器物損壊のみの場合は、物件事故報告書が作成されます。
〇物件事故報告書
※物損事故の場合には、一般的に実況見分調書を作成せず、物件事故報告書が作成されるのみとなります。物件事故は刑事事件にならないので、交通事故証明書と同程度の情報と簡易な図面が記載されている程度の報告書となります。しかし、公的な書面なので、物損事故の場合には必要に応じて取り寄せなければなりません。
※相談の交通事故が人身事故か物件事故かは、交通事故証明書の記載から判別します。
〇交通事故証明書
※自動車安全運転センターへの交付申請。
▼事故現場の写真
▼被害車両の写真
▼カーナビのGPS記録情報
▼損害保険会社作成の自動車損害調査報告書
▼車検証
▼修理費及び代車使用料
※修理の概念
〇物理的全損→事故車両が物理的に修理不能である場合。この場合は車両時価の評価額が損害となります。
〇経済的全損→修理費が車両時価を超える場合。この場合は車両時価が損害の上限となります。
〇一般的修理費→物理的に修理可能である場合。この場合は修理費が損害となります。
※自動車の買替費用に伴い発生する自動車の名義移転費用や登録料等の費用につていは、損害として認められる場合があります。
※マイカーであっても日常的に利用する必要性がある場合等、修理期間中に車を利用する必要がある場合には、代車代は損害に含まれます。但し、代車に関しては、その必要性と相当性(利用期間の妥当性)が相手方や相手方保険会社と問題になる可能性がありますので、相手から保険会社と交渉をした上で利用を検討した方が安全です。既に代車の利用を開始しているような場合は、最終的に代車代が認められないリスクもありえます。
▼レッカー代、駐車料金、タクシー代、事故で破損した物等の領収書
▼交渉経過を記載したメモ
▼保険会社や相手方代理人からの通知書
▼目撃者の目撃証言
▼目撃証言の供述調書
▼街の設置カメラや道路付近のコンビニエンスストアーの防犯カメラ
※保存期間に要注意。
▼損害保険会社の法務費用特約保険の保険証書
●物損事故における証拠保全の重要性
交通事故の場合、人身事故か物損事故がの2種類に区別されますが、実際の交通事故対応を考えた時、いずれにしろ大事な事は「証拠の保全」です。
最初にすべき事は、警察に連絡する事です。この事により警察は必要な調書を作成します。これが、後日の加害者との交渉や訴訟に重要な意義を持つ事になります。
また、事故直後、首や腰、腕、顔等を打撲する事が想定できますので、痛みが酷くなくても人身事故として警察に申告して下さい。事故直後、痛みがあまりなくても、病院の検査で骨折や内臓の損傷が判明する事もあります。
更に重要な事は、警察はまず発生した事故が人身事故か物損事故かを確認します。そして、人身事故、物損事故各々に対応した調書の作成を行います。ここが最も重要な事ですが、人身事故と物損事故とでは警察が作成する調書等の書類に大きな違いがあります。例え最終的に物損事故になった場合でも、交渉過程や訴訟係属中にその事実が争われた場合、人身事故扱いで作成された調書は物損事故として作成された調書に比べ比較にならない程詳細に作成されます。交通事故は時間が経つにつれ、証拠が失われていきます。事故直後に警察によって作成された調書はその後の被害者の立場を有利にする大切な証拠となるのです。
●証拠の入手方法
▼任意の提出
▼訴え提起前の証拠保全手続き
▼証拠保全
●過失相殺
過失相殺とは、「損害の衡平な分担」の観点から、被害者に過失がある場合に、それを斟酌して損害賠償額を減額する事をいいます。
交通事故の当事者(加害者、被害者)が自動車事故を起こした場合、その注意義務違反の割合を相対的に表し、その過失割合に従って、各々が損害賠償を請求します。
物損事故の場合、この過失割合が争点になる事が殆どでしょう。
●損益相殺
損益相殺とは、被害者が交通事故により損害を被ると共に、利益を受けた場合、損害賠償額からその利益相当額を控除する事をいいます。これは、法律上の規定にはありませんが、衡平の観点から法律実務上当然に認められているものです。一般的に実務上、任意保険会社との示談交渉では、被害者に有利となるように過失相殺前に損益相殺を行う事が多いとされています。
●消滅時効
物損事故の場合も被害者から加害者への損害賠償請求には時効があります。長く放置していると、証拠も失われる危険もあり、法律上の請求権も消滅してしまいますので注意が必要です。
■法務費用特約保険の必要性と有用性
●不法行為責任に基づく損害賠償請求
物損事故が発生した場合、不法行為責任に基づき損害賠償請求をします。この不法行為責任には主に次の4つがあります。
▼一般不法行為責任
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の適用のない事故の場合。
▼使用者責任
司法者が事業のために従業員を使用し、従業員が外形上その事業の執行について交通事故を起こした場合。
▼監督者責任
親権者等の監督者に対し監督者責任を追及する場合。
▼共同不法行為責任
複数数の加害者がいる交通事故の場合。
このような類型において、交通事故の被害者が法的責任を追及する事は、基本的な知識の必要性や日常の仕事等で困難な状況に陥る方が殆どではないでしょうか。
更に、司法書士費用や訴訟費用の問題も加害者への損害賠償責任の追及に二の足を踏む原因になります。物損事故の態様にもよりますが、数十万程度の損害で、訴訟を
検討する事は、返って赤字になりかねません。
しかし、自身の任意保険で修理代を捻出すれば、保険等級が下がり、これからの自身の保険料が上がっていしまいます。かといって、自身の支払いで全額を賄う事は出費が大きいのではないでしょうか。
そんな困難な中、法務費用特約権があれば、司法書士等の費用や訴訟費用を気にする事なっく、事故対応に当たる事ができます。
自動車事故の場合、無保険でいる事は不測の損害があった際、とても不利になる事なのです。
また、加害者が無保険であった場合も法務費用特約保険は、一般的に司法書士等に対する報酬や訴訟費用を補償するものであり、物損事故であればほぼ全ての費用はこの法務費用特約保険で手当てができ、例え相手方が任意保険に加入しているかしていないかが不明であっても、法律専門実務家である司法書士等に依頼し、少なくても交渉や訴訟に対する司法書士等の費用は気にする事無く物損事故に対する対処が可能になるのです。
尚、この法務費用特約保険では、物損事故の態様を明らかにする観点から、私的鑑定等(非破壊検査、交通事故鑑定等)の調査費用も補償の対象とされている場合もあり、費用を要する立証についても諦める必要がなくなります。
また、一般的に、この法務費用特約保険を利用をした場合であっても、損害保険本体の保険等級が下がる事は無く、翌年からの保険料が上がる心配はありません。
●法務費用特約保険(通称 弁護士費用特約保険)の種類
現在、主に損害保険会社で法務費用特約保険が1つの商品として発売されています。一般的に、どの損害保険会社からの法務費用特約保険でもその補償額にそんなに大きな差は無いようです。
▼司法書士費用や訴訟費用の補償として300万円まで
▼法律相談費用で最高10万円まで
しかし、注意が必要なのは、法務費用特約保険が適用になる事故の類型です。ある損害保険会社では故意・過失を問わない補償内容になっていたり、またある損害保険会社では偶発的事故と一般不法行為事故とでは、その補償額に差を設けていたりする違いあります。
尚、損害保険会社にもよりますが、複数の損害保険会社の法務費用特約保険に加入している場合、ある損害保険会社の法務費用特約保険で不足する場合、他の損害保険会社の法務費用特約保険で、その足りない部分を補填するといった利用の仕方も出来るようです。但し、この場合は足りない部分の補填での利用であり、複数の損害保険会社の法務費用特約保険を同時に利用する事はできないのは保険という趣旨からいうまでもありません。
保険料は、各々損害保険会社によって異なりますが、概ね月数百円程度です。
●保険会社の示談交渉代行サービスに注意
保険会社は各々事故に遭った場合、その当事者に代わり相手方と示談交渉のサービスを行っている事が多いと思います。しかし、この示談交渉は法律専門実務家が直接関与していないケースが多く、訴訟になった場合等は交通事故の当事者の代わりに裁判手続きを適法に行う事ができません。
更に、保険会社の示談代行サービスで支障が起こり、司法書士等の法律専門実務家に引継ぎがなされた場合、その示談交渉の内容が必ずしも当事者に有利に働くかは疑問です。司法書士が最初から交渉をスタートさせようと思っても、事実上、この示談交渉代行サービスでの交渉内容が交渉の出発点になってしまい、思うように交渉が進められない事態も想定されます。
事故当初は、気が動転していて保険会社の示談交渉代行サービスの利用も止むを得ない場合もあるかと思いますが、その後は速やかに法務費用特約保険を活用して、司法書士等の法律専門実務家にご相談される事をお勧めします。
●物損交通事故での執るべき対策
物損事故の場合、自動車損害賠償責任保険(通称 自賠責保険)が利用できず、愛車の修理費や代車使用料、物損に対する慰謝料等をどのように支払うかが問題です。
この支払方法は、過失割合等の問題もあり、自身の車の修理費等を自身の任意保険の車両保険で支払う事になった場合、保険等級との関係も大きな問題です。
修理費等を自身の出費で支払う場合も、その額はできるだけ低額な方が助かります。まして、不合理な過失割合で必要以上の出費はもっての他です。
ベストな解決方法は、任意保険を利用せず、また自身の出費をできるだけ抑えて、保険等級を下げず、将来の大きな事故に備える事です。相手方も同じ事を考えているはずです。
そこで、物損事故の対策としては、法務費用特約保険に加入し、不測の事故の際、自身の側に必要十分な交渉力を確保しておく事です。司法書士等に対する費用や訴訟費用に心配していたのでは、十分な交渉はできません。また、必要な証拠も収集する事が困難となります。訴訟では証拠が最も重要なのです。
自動車事故での証拠としては、事故車両や事故現場の写真、目撃者、コンビニ等の防犯カメラの映像、スマホでの事故直後のビデオ撮影等が考えられますが、最も適しているのがドライブレコーダーです。又GPSのカーナビも大変有効です。性能の良いGPSのカーナビは、自車の位置を記録する機能が搭載されているので、自車の位置の記録と信号の周期との関係で、赤信号で交差点に入ったのか、青信号で交差点に入ったのかを確認出来、後に重要な証拠となります。但し、ドライブレコーダーもGPSカーナビゲーションも、一定期間や一定走行後、新しい記録が上書きされてしまいますので、注意が必要です。
そして、事故に遭った際は、法律専門実務家にご相談して頂く事が最も賢明になります。
いかがでしたでしょうか?
自動車事故の対処をする場合において、無保険である事は大変不利である事がご理解頂けたのではないでしょうか。
特に物損事故ではこの法務費用特約保険での補償額で、その殆どに対しカバーできる必要十分な内容になっていると思います。
今回は、物損事故に焦点を当て、最近話題の法務費用特約保険での対策について概説しました。加害者との交渉が上手く行かない、過失割合に納得いかない、保険等級を下げたくない、法的知識が不足していて困難な状況にある等、物損事故でお困りの方は、民事訴訟法務を専門分野又は取扱分野としている法務事務所の司法書士にご相談してみてはいかがでしょうか。
最後は法律的解決しかありません あなたには最後の手段が残っています
※「民事訴訟法務」とは
「民事訴訟法務」とは、訴訟費用が比較的低額で、自身の権利の主張に有用な「本人訴訟支援」を原則に、依頼者の権利の実現を目的とした法律支援実務です。司法書士の「本人訴訟支援法務」は「訴訟代理法務」と異なり、裁判所等に提出する書類作成関係に関しては、取扱う事件に制限はありません。また、簡易裁判所管轄で、訴額が140万円以内であれば、「訴訟代理人」としての受任も可能です。
※「本人訴訟支援法務」と「訴訟代理法務」とは
「本人訴訟支援法務」とは、一般的な法律相談の他、依頼者の意思決定の基、依頼者に代わり、依頼者から事情聴取をしながら裁判所等に提出する訴状や答弁書等の書類作成を中心に、法律専門実務家である司法書士が、いかに依頼者の権利が正当に判断されなければならないかをその書類作成に基づき、裁判手続き等を通じて支援する法律上の業務です。そして、司法書士の「本人訴訟支援法務」は、裁判所等に提出する書類作成に関しては、取扱う事件に制限はありません。
「訴訟代理法務」とは、一般的な法律相談の他、簡易裁判所管轄で、訴額140万円以内の事件において、司法書士が依頼者の訴訟代理人として、依頼者と協議をしながら、司法書士自身が主体的に裁判手続きをする民事上における法律上の業務です。
一般的に、「訴訟代理法務」に比べ「本人訴訟支援法務」の方が、裁判手続きに掛かる費用が低額で済み、法律問題の解決を図る事ができます。「本人訴訟支援法務」の事件対象は、比較的複雑でない生活関係、家族関係(身分関係)、仕事関係、事故関係、迷惑行為等の不法行為関係といった日常的に生じる法律事件に有効です。
※「認定司法書士」とは
「認定司法書士」とは、訴訟代理資格を修得するための特別の研修を修了し、その認定試験に合格した簡裁訴訟代理等関係業務法務大臣認定司法書士の事を言います。民事における法律事件に関する訴訟代理の専門性は公式に認められています。
※「簡裁訴訟代理等関係業務」とは
「