【REVIEW2021 ❹ 社会】
新型コロナウイルス感染症問題
新型コロナのドグマ
― 自然感染派の射程 ―
■新型コロナウィルス感染症感染状況
<国内感染状況>(YAHOO! JAPAN HP掲載)
※2021年13月4日 23時25分更新分
データ提供:JX通信社/FASTALERT
●感染者数 304,104人
●新規感染者数 5,871人
●死亡者数 4,275人
<世界の感染状況>(YAHOO! JAPAN HP掲載)
※2021年1月13日10時00分更新分
※2021年1月12日現在WHO発表
米国ジョンズ・ホプキンズ大学のシステム科学工学センター
(CSSE:Center for Systems Science and Engineerring)
●感染者数 89,707,115人
●新規感染者数 566,186人
●死亡者数 1,940,352人
<東京都検査陽性患者の状況>(東京都HP掲載)
※2021年1月13日更新分 東京都
●陽性者数(累計) 78,566人
●入院者数 3,266人
▼重症者数 141人
▼軽症・中等症者数 3,125人
●宿泊療養者数 981人
●自宅療養者数 8,414人
●入院・療養等調整中者数 6,546人
●死亡者数(累計) 704人
今年1月5日(火)に1都3県の知事が「緊急事態行動」を発令し、1月7日(木)24時に首相が2度目の「緊急事態宣言」を発出しました。
そして、これに先立ち、政府の専門的政策提言機関である新型コロナウイルス感染症対策分科会(略称 政府新型コロナ対策分科会)会長は5日(火)夜に、「埼玉、千葉、東京、神奈川の首都圏では、既にステージ4(爆発的感染拡大)に相当する対策が必要な段階に達している」として、我が国初めて「感染爆発」を宣言しました。
1月6日(水)には、日本医師会会長は、医療逼迫状況の下、初の「医療崩壊」を宣言しました。
更に、同月13日(水)、政府は、大阪府、京都附、兵庫県、栃木県、岐阜県、愛知県の7府県に14日(木)から2月7日(日)までの緊急事態宣言を発出する事を発表しました。
つまり、この国は、政府新型コロナ対策分科会会長の言うところの「オーバーシュート」となっています。
現在、新型コロナウイルス感染症の感染者は、この国でも累積で30万人を超え、死亡者数は4,000人を超えました。
もう日本は、感染者数が少ない、死亡者数が少ないという説明や反論、弁解は通用しないところまで達している事は誰もが認める事でしょう。
昨年1月に我国最初の新型コロナウイルス感染者が確認されてから、第1波、第2波、第3波と大きな感染拡大を経験してきた日本政府は、この間殆ど何も積極的な政策をしておらず、逆にGoToキャンペーンで人出を増やす政策で経済を優先してきました。
これだけは避けなければならないアウトブレーク、つまり感染爆発に至った政府及び政府新型コロナ対策分科会の結果責任は極めて大きいのではないでしょうか。
何故、ここまで新型コロナ被害が拡大したか。それは、未知のウイルスに対する適切な政策が無かったからに他なりません。政府が2月から行ってきた新型コロナ対策の指針は全て治療対策であり、重症者数や病床者数等感染した人に対しどのように医療を提供するかといった医療提供体制ばかりでした。
しかし、この新型コロナウイルス感染症は、未知のウイルスであり、従来の感染症法や新型インフルエンザ等対策特別措置法では対応できなかったのです。つまり、この新型コロナウイルス感染症は無症状者が感染を拡大させ、尚且つ他のウイルスより非常に強い感染力があるという事です。これは、今までの人類では経験が無いウイルスでした。
それでは、どのような対策が必要だったか。その答えは、感染拡大予防対策です。感染した人の中で重症者だけに焦点を当てた感染者対策では、この未知のウイルスに対しては限界があります。その上、現在のように市中感染率が桁違いに高い蔓延状況では、感染者数が病床数を上回るレッドゾーンに入る事は目に見えていたのです。
感染者対策より 感染拡大予防策
感染拡大を防ぎ 市中感染率を下げ その先には コロナゼロを目指す
これが、人の命を助け、愛する人の命を守り、社会経済活動の回復をさせる唯一の道ではないでしょうか。
そのためには何が必要か。それは政府や都道府県知事が国民や住民にマスクの着用を呼び掛け、手洗い、うがい、消毒を励行させることではありません。政府が積極的にPCR検査を実施する事です。この理論により多くの諸外国では、何時でも、何処でも、誰でも、何回でもPCR検査ができるような政策を執っています。
しかし、ちょっと待って下さい。この理屈は少し考えれば誰でも判る結論ではないでしょうか? 実は、この国の問題は、この理屈自体の真偽ではないように思います。仮に、この理屈を認めない抵抗勢力がいたとしたら、それは新型コロナ対策が思うに任せない理由も理解できるのではないでしょうか。
そこで、問題となるのが政府新型コロナ対策分科会の存在です。この新型コロナ対策分科会では医学系から経済学系、そして弁護士まで専門分野が異なる各々の専門家が新型コロナウイルス感染症に対する政策的審議をし、政府に提言しています。
しかし、その中心は厚生労働省を背景にした旧政府新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の構成員であった医学系専門家であり、この政府新型コロナ対策分科会の基本方針は、昨年2月に設置された旧政府新型コロナ対策専門家会議が打出した方針のままです。
当時、彼らの多くは、「PCR検査をしたら医療崩壊が起きる」と言っていました。その後、諸外国の対策を見てみると、そんな事が無い事がハッキリしますが、大事な事はこの「PCR検査をしたら医療崩壊が起きる}という思想です。
PCR検査をしたら 医療崩壊が起きる
新型コロナウイルス感染症は、当時、未知のウイルスであり、特効薬もワクチンも有りませんでした。そのような状況で
「PCR検査を大規模にすれば病院はパニックになる。例え、入院させられたとしても感染者に対し有効な投薬はできない。ただ病院のベットに寝かせて置くだけで、医師も病院も何もできず、看護師はその患者の世話をするだけの状況になる。それは決して医師の使命を果たす事にはならない。医師は、検査して、診察し、診断して、処方箋を書き、患者を治す事そのものに価値があるのだ。」
という思想が有ったように思います。
だから、昨年2月に政府新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が設置されたとき、早々「PCR検査は症状が有り、その中の重症者に対してだけ実施する。その理由は、医療資源に限りがあり、重症者の治療を優先すべきだからだ。」という趣旨の基本方針を提言したのです。
つまり、
政府は この間PCR検査体制の拡充は訴えてきましたが
初めから PCR検査数の拡充には関心が無かったのです
それが証拠に、その後、無症状者に対応していない現行の感染症法の改正は、この新型コロナウイルス感染症問題が終息した後に行うという決定までしています。法治国家の我が国での基本的法制度である感染症法の改正は凍結され、運用上のPCR検査の限定的制限による抑制策と、手足を縛られた新型コロナウイルス感染症対策で、まともな成果は上げられなかった事は、現在我々が目の当たりにしている通りです。
政府新型コロナウイルス感染症対策は、自然感染を問題にせず、ただ人口呼吸器やECMO(人工心肺装置)を装着しなければならない医師の手当てが必要な重症者にターゲットが絞られ、後は季節性インフルエンザと同じように普通に生活していく中で自然に治癒するだろうという自然感染派が、政府の新型コロナウイルス感染症対策の主要政策提言機関の方針を恒定したのです。その結果、この国では、感染者は、検査も受けられず、自宅療養を強いられ、いつ急変するか判らない心労に耐え、また家庭内感染の恐怖に怯え、その家族は命の危険に曝される事になりました。
PCR検査をしたら 医療崩壊が起きる
彼らにとってみたら我が国の対策は、決して行当りばったりの場当たり的な新型コロナ対策ではなかったのであり、秘められたドグマの下、初めから想定した予定調和の中に我々はいる事になります。
民間検査や駅前検査といった検査は、PCR検査には違いが無いのに、それを正面から認めないのもそのためなのではないでしょうか。
この国の新型コロナウイルス感染症対策は戦略が無いと言われていますが、ある特定の「専門家」によって、我々の命が左右されているとしたら、それは日本史上かつてない出来事を我々は現在(いま)、目の当たりにしている事になります。
(2021年1月14日(木) リリース)
