【REVIEW2021 ❺ 社会

 

 

新型コロナウイルス感染症問題
 
医 療 崩 壊
 
― 放置された生命(いのち) ―

 

 
 
 
 ■新型コロナウィルス感染症感染状況
 
 
 <国内感染状況>
  ※YAHOO! JAPAN HP掲載
  ※2021年1月17日 23時25分更新分
   データ提供:JX通信社/FASTALERT
 
 
 ●感染者数     330,610人
 
 ●新規感染者数     5,759人
 
 ●死亡者数       4,524人
 
 
 
 <世界の感染状況>
  ※YAHOO! JAPAN HP掲載
  ※2021年1月17日10時00分更新分
  ※2021年1月16日現在WHO発表
   米国ジョンズ・ホプキンズ大学のシステム科学工学センター
    (CSSE:Center for Systems Science and Engineerring)
 
 
 ●感染者数   92,506,811人
 
 ●新規感染者数    688,015人
 
 ●死亡者数    2,001,773人
 
 
 
 <東京都検査陽性患者の状況>
  ※東京都HP掲載
  ※2021年1月17日20時00分更新分 東京都
 
  
 ●陽性者数(累計)   85,470人
 
 ●入院者数         3,045人
 
  ▼重症者数         138人
 
  ▼軽症・中等症者数    2,907人
 
 ●宿泊療養者数        831人
 
 ●自宅療養者数       9,043人
 
 ●入院・療養等調整中者数  7,727人
 
 ●死亡者数(累計)      725人
 
 
 
 
 1月8日(金)から2月7日(日)までの期間で、1都3県に我国2回目の緊急事態宣言発出後、10日経ちました。状況は、悪くなるばかりで、改善の兆しが見られません。
 
 
 1月14日(木)には、大阪府、兵庫県、京都府、栃木県、愛知県、岐阜県、福岡県の7府県に対しても2月7日までで緊急事態宣言が発出されました。
 
 
 日本で最初の新型コロナウイルス感染症患者が確認されたのは、昨年の1月15日で、国立感染症研究所にて夜確認され、翌日の16日に新聞で大きく報道されたのは記憶に新しいところだと思います。そして、我国最初の日本人の新型コロナウイルス感染症患者が確認されたのは1月25日の事です。新型コロナウイルスに関連した感染症で、日本人の患者の発生が国内で確認されたのは6例目であり、武漢市への渡航歴がない感染者が確認されたという点でも初めてでした。この日本人の男性は、60歳代のバスツアーの運転手で、中国武漢からのツアー客を乗せ、大阪・東京間を運行したとの事でした。
 
 
 政府は、この新型コロナウイルス感染症対策として、医療体制が崩壊しないようにする事を最も重視してきました。特に、医療体制等の負荷として、病床使用率、重症者用病床使用率を数値化して、逼迫状況に応じて4つのステージを設け、全国の感染状況をモニタリングしてきました。そして、このステージの各指標を総合的に判断すると共に、1都3県の知事からの緊急事態宣言の要請に応じて、今回政府は緊急事態の宣言を発出したのです。
 
 
 例えば、1月15日付公表で、東京都の基準では、病床使用率は82.3%、重症者用病床使用率は56.4%となっています。この数値から、病床使用率も重症者用病床使用率もまだ限界に達していないように見えます。そもそも、緊急事態宣言というものは、国民に対し提供する医療が麻痺する事を防ぐためにする緊急的な措置であるので、各指標が100%になっていないのは当然の事です。
 
 
 しかし、東京都の検査陽性者の状況を見ると、驚くべき事が判ります。それは、軽症・中等症の入院者数は2,907人、重症者の入院者数は138人に対し、宿泊療養は831人、自宅療養は9,043人に上っています。更に驚くべき事は入院・療養等調整中は7,727人と非常に多くの人が医療待機状態になっている事です。
 
 
 勿論この入院・療養等調整中の人達に対し投薬等の治療はされません。現在この新型コロナウイルス感染症で承認されている薬は緊急承認されたレムデシビルとステロイド薬のデキサメタゾンだけであり、点滴治療等のため自宅療養者等には処方されていません。希望の未承認適用外処方薬である錠剤のアビガンですら、入院した人には処方される可能性が高い一方、入院・療養等調整中の人達はおろか自宅療養者にも処方されません。
 
 
 首相は昨年5月に、抗インフルエンザ薬のアビガンの緊急承認を目指すと表明しました。それが、年を超えて未だに未承認のままです。まるで薬害訴訟の意趣返しのように。少なくても安全性には問題が無く、ただ新型インフルエンザウイルス感染症のために開発されたという理由だけで、自宅療養者に手を差伸べないのは不公平であり、冷酷な仕打ちというものです。
 
 
 政府や東京都は認めていませんが、日本医師会会長の言う通り、現実は既に医療崩壊になっていると言ってもいいのではないでしょうか。
 
 
 
 
現実は 既に医療崩壊
 
 
 
 
 神奈川県では、1月9日、自宅療養中の60歳代の男性が急変し亡くなった事が判明しました。この男性は、1月3日に陽性が判明し、X線検査で肺炎像があったものの、男性は軽症で発症から10日経過していたことから、国の方針に基づき入院・療養は不要と判断したとの事。市保健所は自宅療養と判断し、県は療養期間を6日までとしました。
 
 
 同月4日22時頃、神奈川県が電話で男性に安否確認をし、その男性から血中酸素飽和度が、入院に相当する通常より大幅に低い値であることを伝えられましたが、男性の応答に問題はなく、神奈川県は誤測定と判断して経過観察としました。この際、手違いで安否確認をする対象者のリストから漏れてしまったとの事です。
 
 
 同月5日、神奈川県は療養期間終了を判断するための電話をしましたが繋がらず、安否確認リストからも漏れていたため、応答がなくても安否確認すべきだとの考えには至らなかったという事です。
 
 
 同月6日に不審に思った親族が男性宅を訪れ、倒れている男性を発見しました。
 
 
 神奈川県は、今後、データ入力のチェックを徹底し、酸素飽和度が正確に測れない場合は医師の判断を仰ぐ新たなルールを作るといっています。
 
 
 新型コロナウイルス感染症は、昨年の早い段階から「急変」が問題な感染症である事は周知の事実です。この事実は今、日本全国で、本来入院や医師の診察が必要な患者が病院で医療を受けられないのが現状になっている事を物語る典型例です。
 
 
 
 
急変 新型コロナウイルス感染症の深刻な大問題
 
 
 
 
 法律的に見ると、この男性に対する神奈川県や市保健所の対応には大きな問題があると考えます。第一に、この男性の初期対応です。新型コロナウイルス感染症で陽性と判定されている患者を自宅療養とした事です。60歳代は重症化・死亡リスクが極めて高く、このケースでは、X線検査で肺炎の所見が見付かっており、X線検査だけではなく、更に詳細な検査をすると共に、例え発症から何日経っていようと年齢、症状、肺炎の所見等を考慮し、即入院とする選択肢もありました。ここで疑問なのは、この男性が軽症であると判断した事です。因みに、新型コロナウイルス感染症は、発症から10日経っていれば。他人に感染させる事は無いという見識が有りますが、このケースでは、そのような問題ではなく、患者本人の命の問題なのです。
 
 
 また、市保健所が自宅療養と判断したとの事ですが、市保健所で通常対応している職員の多くは保健師です。仮に、保健所所属の医師が診断したのであれば、診察はいつしたのでしょうか。
 
 
 そして、神奈川県では、この男性に対し療養期間を6日までとしたとの事。神奈川県に常駐の医師の判断だったのでしょうか。
 
 
 もし、軽症と判断した事も含め、いずれも医師の判断が加わっていなければ、保健師、もっと悪い場合は、市保健所や神奈川県の職員が決定した事になります。国の方針はこのような事案の場合、自宅療養とする事が標準的であったかも疑問です。国の方針に基づき判断したとの事ですが、神奈川県はもっと詳細に説明すべきです。
 
 
 更に、神奈川県職員の安否確認リストへの登録を失念した事は論外です。神奈川県は、感染者急増で対応できなかったとの事ですが、人の命の問題であり、神奈川県や市保健所は、一般人とは違う職責やそれに伴う厳格な注意義務がありますので、法律上、この重大な結果に対する抗弁とはならず、そのような話が受け入れられる事はないでしょう。
 
 
 また、神奈川県が自宅療養中の男性に対し、安否確認をした際、血中酸素飽和度が大幅に低い値である事の連絡を受けたにも拘らず、男性の応答には問題が無く、誤測定と判断して経過観察とした事です。しかも、その確認は電話でした。仮に、血中酸素飽和度が90%を切っていた場合、医療の常識として即入院のはずです。にも拘らず、その値を血中酸素飽和度を測定する機器の誤作動と判断した事に、どのような理由があるのかも疑問です。そもそも例えばパルスオキシメーターは就寝中に指先に装着して血中酸素飽和度の測定をしたりするものですが、誤作動が頻繁に起きるとは思えません。仮に誤作動というのなら、何故再度測定すべき血中酸素飽和度を取らなかったのでしょうか。
 
 
 神奈川県の説明で、「男性の応答に問題は無く・・・」とされていますが、この男性は既に亡くなっているので、本当に応答に問題が無かったかも実際のところ不明です。
 
 
 更に、重大な間違いは、安否確認リストが不手際無く、100%との確率で機能するのであれば深刻な問題には発展しにくいと思いますが、例えば、急変した患者にはその役割が十分に期待する事ができず、場合によっては無力という事もあります。安否確認が可能な場合とは、その電話に出られる事が必要条件です。就寝中や外出中の場合は、どのように判断するのでしょうか。そして、例えば、電話で話した直後に容態が急変した場合、自分で電話も架電できず、次の安否確認の電話が入電されるまでに亡くなってしまう事も十分考えられます。安否確認リストを設置しているから手続きに問題無いとは言い切れないのです。つまり、安否確認リストの設置は、客観的に言って行政や保健所の弁解や便法のために必要としているだけではないでしょうか。すなわち、新型コロナウイルス感染症患者に対する経過観察は、遠隔では不可能という事です。
 
 
 
 
 新型コロナウイルス感染症患者に対する経過観察は
 
 
遠隔では不可能
 
 
 
 
 このように検証してみると、この男性に対する神奈川県、市保健所の対応は、勝手な思い込み、事務手続きのミス、陽性患者の治療・療養への稚拙な対応等、善管注意義務に過失があった可能性が高く、また無資格診療による違法行為の疑いもあり、更にこの男性の適切な医療を受ける権利を侵害した事に対し、この男性の遺族の方々は、神奈川県や市保健所に対し納得のいく十分な説明を求める事ができるでしょう。
 
 
 
 
対応は勝手な思い込み
 
 
事務手続きのミス
 
 
治療・療養への稚拙な対応
 
 
 
 
 この他にも、1月9日、70歳代の男性は、発熱があったため検査を受け、軽症と判断されて帰宅し、10日に陽性と判明しました。保健所は11日に医療機関から発生届を受け、13日~15日に男性の携帯電話と自宅に計9回電話しましたが繋らず、15日に消防隊員が自宅で死亡している男性を発見したとの事です。
 
 
 東京都では、1月7日、陽性だが軽症と判断された自宅療養中の高血圧の基礎疾患がある女性が自宅で倒れているところを家族に発見され、1月11日、同じく陽性だが軽症と判断された自宅療養中の糖尿病の基礎疾患がある男性が急変し、お二方とも救急搬送されて亡くなっています。
 
 
 医師によって病気や老衰などの「自然死」と判断されずに、犯罪によるものとの疑いがある死や事故死を「変死」といいます。この場合は、通常の医師では病院で亡くなっているのではないため死亡診断書を書けず、司法検視が行われます。
 
 
 全国の警察が2020年3月~12月に取扱った変死事案のうち、新型コロナウイルスに感染していた人が122人に上ったとの事です。
 
 
 122人は24都道府県から見付かり、最も多かったのは東京都の36人。以下、大阪府25人、兵庫県11人と続き、月別では4月の21人を除いて、11月まで10人以下で推移していましたが、新型コロナ感染症の第3波に合わせたかのように、12月は56人に急増していたとの事です。
 
 
 この中で、生前に陽性が判明していた32人の中には、入院はせず自宅療養していた人が含まれるとみられています。
 
 
 医学系の専門家によると、医師によって病死であると明確に判断された死体以外を指す『異状死体』(変死体)の9割近くは解剖されずに死因がつけられ、PCR検査をすることもないとの事。老衰、誤嚥性肺炎、虚血性疾患等の死因がついたご遺体の中には、ある程度の新型コロナウイルス感染症の陽性者が紛れ込んでいると考えられるとの事です。そして、10カ月で122人の新型コロナウイルス感染症の陽性者は少な過ぎると指摘しています。
 
 
 つまり、この変死事案は氷山の一角で、実際は自宅で、急変に対応できず亡くなっている方々はもっと多くいる可能性が高いという事です。
 
 
 新型コロナウイルス感染症では、第1波、第2波、第3波と容態の急変が大きな問題となっています。この新型コロナウイルス感染症の医療対応では、他の季節性インフルエンザ等と違い、自宅療養を採用する事はできないという事です。
 
 
 自宅療養での問題はこの急変以外にも、家庭内感染を惹き起こすという大問題があります。部屋を別にしろ、トイレを分けろ、入浴は感染者を一番最後にし、使用した後はよく浴室内を洗い流せという事をいう人がいますが、この新型コロナウイルス感染症の怖さが全く解っていないと感じます。何故なら、クリニックで検体を採取する数分の間でも、医師は完全感染防護である事からも、指定感染症の陽性者と一緒に生活する事は不可能です。
 
 
 
 
新型コロナで 自宅療養は不可能
 
 
 
 
 また、例え一人暮らしであった場合でも、食料の調達等で外出しなければならず、感染を拡大させてしまう恐れがあります。
 
 
 政府や都道府県は、直ちに自宅療養の措置を取消し、少なくても医師と看護師が常駐し、必要最低限の医療設備を設置した宿泊療養施設を用意し、止むを得ない患者を除き、今すぐ全自宅療養者を移すべきです。
 
 
 厚生労働省は16日、新型コロナウイルス感染症の自宅療養者数(13日午前0時時点)が全国で3,0208人になったと発表した。自宅療養者は、東京都が1週間に3千人以上増え、8,518人と最も多く、病床使用率がステージ4相当となったのは、福島、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、大阪、兵庫、広島、福岡、長崎、熊本、沖縄との事です。
  
 
 政府や都道府県は、医療崩壊を認めていません。そして、感染拡大に伴って保健所の業務が逼迫している事で、聞取り調査が進まずに、十分な医療の提供ができない事や療養先の決定が遅れているという感染拡大自体を理由とする説明を繰返すばかりです。しかし、冬にこのような事態が発生する事は容易に想定されたにも拘らずる、昨年の春から冬に掛けて何もしてこなかった事にその原因があるはずです。
 
 
 
 
亡くなった人は 還ってきません
 
 
 
 
 今、我々国民、住民は、大きな声を上げて、この秩序の無い医療体制を批判し、自分の身は自分で守るという確固たる意志を持つ時ではないでしょうか。
 
 
 
 
(2021年1月18日(月) リリース)