【REVIEW2021 ❻ 社会】
新型コロナウイルス感染症問題
トリアージ <前編>
― 命の選別 ―
■新型コロナウィルス感染症感染状況
<国内感染状況>
※YAHOO! JAPAN HP掲載
※2021年1月20日 23時55分更新分
データ提供:JX通信社/FASTALERT
●感染者数 346,382人
●新規感染者数 5,532人
●死亡者数 4,778人
<世界の感染状況>
※YAHOO! JAPAN HP掲載
※2021年1月20日10時00分更新分
※2021年1月19日現在WHO発表
米国ジョンズ・ホプキンズ大学のシステム科学工学センター
(CSSE:Center for Systems Science and Engineerring)
●感染者数 94,124,612人
●新規感染者数 312,202人
●死亡者数 2,034,527人
<東京都検査陽性患者の状況>
※東京都HP掲載
※2021年1月20日20時00分更新分 東京都
※チャーター機帰国者、クルーズ船乗客等は含まれていない。
※「重症」は、人工呼吸器管理(ECMOを含む)が必要な患者数を計上。
●陽性者数(累計) 89,188人
●入院者数 2,893人
▼重症者数 160人
▼軽症・中等症者数 2,733人
●宿泊療養者数 876人
●自宅療養者数 8,965人
●入院・療養等調整中者数 6,799人
●死亡者数(累計) 754人
1月8日(金)午前0時に、1都3県で我が国2度目の緊急事態宣言が発出されました。これに先立ち、1月6日(水)の定例記者会見で、日本医師会会長は、医療現場では新型コロナ対応で通常医療との両立が困難になっていると指摘し、「現実は既に医療崩壊だ」と強い危機感を示し、事実上の医療崩壊を宣言しました。
関東のあるクリニックでは、1日300人の発熱患者が来院し、全てにPCR検査をして、診断を確定しているとの事です。このような事態は開業後初めてとの事で、医療の限界と強い危機感を訴えていました。現在の関東の陽性率は10%から30%を超える程になっているという報道もあります。
報道により、大阪府内の病院では信じられないような事が行われていた事が判りました。それは、新型コロナウイルス感染症に感染して入院していた80歳代の父親を持つ兵庫県在住の50歳代の女性の話から明らかになりました。
人工呼吸器を使う事はそんなに悪いのか
重症者病床が逼迫する中、その女性は人工呼吸器を父親に使うかどうか、病院側から7回も問われたとの事。勿論、愛する父親を助けたいと思いましたが、何と病院側から「年齢もお高い」と暗に断念を迫られたというのです。この事実に対し、女性は「私が『要らない』と言えば、父は死ぬ。元気だった父がコロナになり、人工呼吸器を使う事はそんなに悪いのか」と声を震わせたとの事です。
女性の父親は認知症の妻を7年程介護していましたが、昨年3月に妻が介護施設に入所してからは1人暮らしだったといいます。10月22日に軽い脳梗塞で入院しましたが手術の必要はなく、リハビリのため11月10日に別病院に転院。同月16日に医師と面談した際は、約1カ月後の12月16日には退院できるとさえ言われていました。
同月20日早朝、病院から女性に、父親が発熱し、転倒したと電話が入りました。医師は「誤嚥(ごえん)性肺炎による発熱で、ふらついたのだろう」と話しましたが、昼すぎ、同じ医師から焦った声で「検査でコロナの陽性になった」と連絡があり、再転院する事に。後にその病院では複数の感染者が確認されたという事です。
同月21日、転院に際しその病院から、初めて人工呼吸器の使用確認があったそうです。父親もその女性もまた周囲も強く人工呼吸器の使用を希望したとの事です。これは当然の事です。
府内の中等症以下に対応する病院に移ると、転院先の医師から再び人工呼吸器使用の確認があったとの事。父親本人も女性も使用を望んでいるのに、その後も病院側から何度も確認されました。そしてまたここで信じられない事が起きます。それは、「(父親本人が)不使用を承諾した」と医師から迫られたのです。父親の病状は徐々に悪化し、女性も追い詰められたようです。「『他の人に譲れ』と言われているようで、電話が怖くなった。でも電話を取らないと、お父さんが死んじゃうことになる」。
12月1日、女性が「『もう使わなくてもいい』と言ってしまうかも」と漏らすと、未成年の娘が「おじいちゃんとやりたいことがある。振り袖姿を見せたいし、一緒にお酒も飲みたい」と猛反対しました。同日、病院の協力で、携帯電話の画面越しに病室の父親と話した。酸素マスクを着けており、聞き取れたのは「世話になった」という言葉。女性は言葉が出ず、「お父さん、お父さん」と呼び続けた。その日、重症者用の病院に三度転院した後、ようやく人工呼吸器が装着されました。
亡くなったのはリハビリのための最初の転院をした日からちょうど1か月後の12月16日の事です。未明の電話で病院に駆け付け、やせ細った父の姿をガラス越しに見た。「お父さん来たよ、ここにいるよ」。退院してもいいはずだった日はその女性の最愛の父親の命日となりました。
呼吸に支障を来たしている高齢でありながら何故か
転院先は 中等症以下の病院
病院 医師から 7回も人工呼吸器の使用の有無を問われ
更に 「年齢が高い」と 暗に人工呼吸器の使用の断念を
「他の人に譲れ」という圧力
病院や医師は今、新型コロナウイルス感染症の患者対応でとても大変というニュースは日夜連日報道されています。この女性の父親に対する診療は、私達が通常思い描く医師や病院の姿ではありません。まるで高齢者には医療を受けさせる資格が無いとばかりの対応です。そして、医師の中には人工呼吸器の装着を諦めさせるために説得までして、父親本人が治療を辞退したといった嘘まで付いています。資格が無いのはこの医師の方ではないのでしょうか。
医師から 患者本人が
「人工呼吸器の装着を辞退」と嘘を
新型コロナウイルス感染症は、高齢者が最も重症化リスクが高く、更に容態が急変する事でも知られています。もっと速やかに患者を重症者用病院に転院させ、人工呼吸器を早急に装着し、患者の肺に新型コロナウイルスが広がり重症化する前に、デキサメタゾンやアビガン、イベルメクチン、アクテムラ等の知られている薬を積極的に投与していれば助かった可能性は誰にも否定する事はできません。
亡くなった最愛の父親の娘に当たる50歳代のこの女性は、病院とのやりとりを、日時や話した相手の名前も添え、逐一手帳に記録していたようです。亡くなった父親は、女性が記録していた人工呼吸器装着までの酸素量を確認する限り、装着の時期が命を左右したのではないかと思われるとの事です。
法律的に見ると、この医師の患者やその家族に対して取った言動は、明らかに医師の使命に違反する行為に他ならず、また患者の適切な医療を受ける権利の侵害に当たるでしょう。このケースの場合、公法上の違法行為並びに私法上の債務不履行及び不法行為が成立する可能性が高いと考えられます。
(公法上の義務)
医師法第19条第1項(応召義務)
診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
ここで、何が「正当な事由」であるかは、それぞれの具体的な場合において社会通念上、健全と認められる道徳的な判断によるべきものと解されています。解釈としては、「正当な事由」のある場合とは、医師の不在又は病気等により事実上診療が不可能な場合に限られるとされています。
また、「応召義務」の法的性質については、応召義務は、医師が国に対して負担する公法上の義務です。応召義務違反に対して、 刑事罰は規定されていませんが、医師法上、医師免許に対する行政処分はあり得るとされています。
医師と患者との関係は、私法上の規定に服し、医師には診療契約(民法上の準委任契約。診療契約締結前の場合も認められる場合があります。)に基づく診療義務が発生し、債務不履行があれば私法上の責任である損害賠償責任等を追及する事ができます。
また、医師の職務、職責の範囲で医師法の趣旨と異なる診療をした場合は職権乱用、つまり患者に対する背信行為に、そもそも医師の職務範囲とはいえない行為をした場合は違法行為となりますが、いずれも私法上は不法行為が成立するでしょう。尚、職権乱用の場合も法律の趣旨に反する行為なので、違法行為の一種類となる事に変わりはありません。
この他にも、勤務の病院等も含め当該医師に対し、患者の診療行為についての納得のいく説明を徹底して求める事や都道府県等に設置されている医療相談で相談し、法令遵守の観点から当該医師に対し誠実な態度を求める事等の方法が考えられると思います。
事実関係の確認としては、診療記録(カルテ)や看護記録等の、レントゲンやCT等の検査結果等の開示請求があり、証拠保全としては、訴え提起前の証拠保全による、強制的な証拠保全手続きがあります。
しかし、このような法律上の手続きをいくら執ったとしても、最愛の家族は還ってきません。この患者やそのご家族に対して行った医師や病院の行為は、取返しのつかない残酷な事なのです。
いずれにしても、現在、このような事がこのコロナ禍に日本全国の多くの病院で行われているのではないかと囁かれています。それは、現在のような状況下では、必ずしも全員の医師が法令を正しく理解した適切な判断ができるかが疑問だからなのです。前述の例はその典型的な事例になります。
そこで問題になるのが、「トリアージ」です。
「トリアージ」 とは何か
「今は 『トリアージ』をすべき時
悪いけど 高齢者は後回し
生存確率が高く 回復力が強い そして平均余命がより長い
若年層を優先しなければ
おかしい!」
「高齢者の命の価値は軽くて当たり前」
「高齢者は予後が悪いって判ってるし
医療リソースが逼迫してるんだから当然!」
(2021年1月21日(木) リリース)
