【ニュースレター2021 ❷ 民事信託法務】
福 祉 法 務
家 族 民 事 信 託
入 門
ー 今注目の福祉型民事信託とは何か!? ー
ニュースレター2021の第2回民事信託法務は、民事信託の利用方法の中で最も利用されている福祉型家族民事信託の入門編です。
「民事信託」には、興味や関心はあるが、よく解らないという方のためのニュースレターです。民事信託とは何か、家族民事信託とはどういうものか、福祉型ってなんなのか、といった疑問にお答えし、家族民事信託の有用性について知って頂く事によって、皆さんのご家族と共に今後の安心設計の一助となれば幸いです。
このニュースレターでは、できるだけ平易な言葉で、簡単に要説を概説していきます。このニュースレターをご覧になった後は、家族民事信託について抵抗感が無くなる事でしょう。
尚、民事信託に関する様々な用語が出てきますが、民事信託自体の種類や類型に関する名称は一般的な用語ではなく、主に当事務所固有の使い方である事を予めご了承下さい。
●民事信託とは
そもそも民事信託とは 一体何なのか?
民事信託とは、我が国の信託法という法律に基づく、当事者間で設計され、契約される自身や大切な家族のための財産管理方法です。
信託は、民法の特別法である信託法に基づく財産管理方法で、商事信託と民事信託があります。商事信託は、信託会社や信託銀行といった事業会社が営利目的で利用している契約形態です。「信託は危ない」といった観念は、この商事信託が対象になって言われる事があります。勿論、元本保証の信託商品も有りますが、元々営利目的のため、一般大衆に警戒感もあるのでしょう。この商事信託は、信託法の特別法である信託業法に基づいて事業を行い、一般には信託銀行において貸付信託や株式投資信託といった商品のサービスを提供しているビジネスです。
これに対し、営利目的ではない純粋な自身や家族のための信託法に基づく個人間の信託が、この民事信託になります。この民事信託は、基本的に個人が特定の財産を信頼できる個人に管理して貰い、その財産の所有者若しくは大切な人のために利用されるものです。そして、この一般的な民事信託の中で、特に財産の所有者の家族や親族が特定の財産を財産の所有者若しくはその家族のために管理する信託方法を家族民事信託といいます。
更に、財産の所有者が高齢であり、高度な法律的契約を締結できない認知症等による精神疾患がある場合、その高齢者の権利を守る方法として利用される家族民事信託を福祉型家族民事信託といいます。
この福祉型家族民事信託は、個人の財産の管理方法の一つですが、それはあくまでも自分自身の想いや願いを叶えるためのものであり、自分と自分の大切な家族のための管理方法ですので、その家族が浪費しない限り、自分の財産は自分自身のため、そして自身の大切な家族のために長期間有効に管理される事になります。
我が国は超高齢社会であり、高齢者の社会生活を支援する必要性から、法定後見制度や任意後見制度といった直接支援型の制度と並び今注目を浴びているのがこの福祉型家族民事信託です。
法定後見制度や任意後見制度は家庭裁判所という公的機関が関与し、厳正な支援体制が行われていますが、その反面、今まで会った事もない人が急に家族の前に現れ、父親等の財産管理を行うため、時には父親からの金銭的支援を受けていた日常を失い、途端に経済的に不自由になったり、法定後見人への不信感といった気持ちの問題にも発展している問題もあり、高齢者の財産管理を厳正及び適格に行わなければならない法定後見人等にとって困難な実情も課題となっています。
これに対し、民事信託は、公的機関の関与無しに、本人とその家族だけで創設される財産管理方法であるのが大きな特長です。更に、この民事信託は、予め決められている制度的パターンというものが無く、民事信託を必要とする全ての人々の各々固有の問題に対処するオーダーメイド(特注)の設計が可能であり、現行の法制度を補完したり、超越したりできる能力で、現在及び将来の依頼者の問題を打開します。
従って、家族ではない第三者が突然現れて、あなたの財産を管理したり、処分したいりする事はありませんので、ご安心下さい。民事信託の設計段階から、民事信託法務を専門分野又は取扱分野としている法務事務所の法律専門実務家である司法書士等に依頼すれば、まず財産の所有者であるご本人から事情や要望をお聴きして、その固有の財産を有効管理するための設計に関与しますので、法律面でも心配はいらないのです。
お解りになりましたでしょうか? ここが一番大切なポイントです。今、注目を浴びている民事信託とは営利を目的とした商事信託とは異なるという事。そして、民事信託の目的は、財産の所有者が、その財産を自身のため、家族のために活かしたいという想いや願いを叶えるための財産管理方法であるという事です。福祉型家族民事信託は、この民事信託の機能を有効に利用して、高齢者の権利を守り、社会生活を強力に支援する民事信託なのです。
福祉型家族民事信託は
財産所有者のために創設され
信託法に基づく営利を目的としない民事信託スキームによって設計される
財産所有者本人と大切な家族のための信託である
●民事信託の起源
民事信託とは、財産をその所有者が想い、願った通りに管理する方法と説明しました。実は、この観念が民事信託の本質的理解なのです。それは、封建社会であった中世ヨーロッパのイギリスで、領主から財産を没収させられる危険を回避し、大切な家族のために、自身の財産をどうしたら残せるかといった発想から生まれた財産管理方法だからです。民事信託を一言で言えば、
私の財産を
信頼するあなたに託すから
私の大切なあの人のために
その財産を管理し
大切なあの人を守って下さい
という契約なんです。
そして、現代では、民事信託をこの目的のためだけでなく、様々な利用の仕方が開発・提案・実現されています。自身の財産を守るだけではなく、活用して更に有効に財産管理をしたり、ときには中小企業の経営者の方が高齢化等の理由で今後の経営が困難になっているとき、事業承継をこの民事信託で行ったり、賃貸アパート経営で利用したりと、色々と活用されています。まさに、中世ヨーロッパの信託から現代の信託へと進化をしているのです。
このニュースレターでは、そんな自由自在に財産を管理できる民事信託ですが、歴史的起源に目を向け、当時の人々の必要性により誕生した一番オーソドックスな福祉型の家族民事信託に焦点を当てていきます。
●福祉型家族民事信託とは
▼「現代は高齢社会」の本当の意味
現代は高齢社会です。この高齢社会は本来長寿社会であり、とても明るい社会であるはずです。しかし、現役期間の後に訪れる高齢期間は、健康期間の後の病気との共存期間でもあります。医学の進歩で、日常生活に支障が無い高齢期間になりつつありますが、身体は比較的健康でも、認知症等の精神障害や知的障害により意思能力が減退又は喪失してしまう現象が急激に増加しているのもまた事実なのです。
現在、認知症患者は、400万人とも500万人とも言われており、その手前の症状の方達は400万人とも言われています。そして、内閣府の推計では、団塊の世代(第1次ベビーブーム)が75歳に達する2025年には700万人の認知症患者が日常生活を送っているとされています。
ここで、何が問題かです。単に高齢者になって、認知症になっても、その進行を遅らせる治療もあり、家族がいる方々は、大きな問題も無く暮らして行けるのではないか、と考えておられる方々もいるでしょう。
日常生活では、殆ど問題は無いと思います。問題なのは、他人と契約行為をする時なんです。契約は法律行為です。法律行為は、その契約をする当事者の意思が最も大切です。何故なら、自分の事は自分で決められる社会がこの国の理念なのですから。
しかし、この個人の意思の尊重といった最も大切な理念が、裏目に出たのがこの高齢化社会だったのです。私的自治の原則とか契約自由の原則とかいっても、それは契約当事者が、契約内容や契約相手、契約方法そして契約締結の決定が出来る事が前提の概念です。
ところが、意思能力が減退又は喪失した認知症の高齢者にこの判断ができるでしょうか。例え本人ができると言っても、また家族がそう主張しても、契約の相手方は信用しません。それは、意思能力の無い人を相手方として契約をした場合、その契約が後日無効となってしまう恐れがあるからです。誰でも、そのような危険な契約は敬遠するのは当然です。現にこのような問題が日常的に起きているのが現代社会です。
例えば、住宅の修繕も工務店と契約が必要ですし、銀行預金の引出しも銀行に本人が認知症であると分かった段階で、口座が凍結されてしまうでしょう。まして、本人が高齢者施設へ入居するために、その自宅を売却する時にも不動産売買契約はできず、困難な状態に陥ってしまうのです。
この場合、その家族の方が代わって相手方と契約をする事もできません。それに、契約の相手方も本人の代わりに家族が契約する事を承諾しないのも、法律的にいっても当然の事です。
このような場合、本人も家族もデットロックにはまり、身動きが取れなくなってしまいます。
お解りでしょうか?
この国は、個人の意思の尊重というとても大事な理念を掲げていますが、その反面、超高齢社会のように、個人の意思能力が減退又は喪失たときは、その個人は無力化してしまうという事です。これが、いわゆる人の生前に起きる「財産凍結問題」です。
この財産凍結問題は、特に資産がある方、家族が多い方に最も大きく押し掛かる問題でしょう。資産といっても沢山の資産がある資産家でけでなく、持家がある方も対象です。
▼財産凍結問題の対策と民事信託の設計
それでは、この問題にどのように対策したらよいのでしょうか?
まず、
①財産の所有者が認知症等で意思能力が減退又は喪失する前に対処しなければ遅いという事です。
そして、
②財産の所有者である本人が、どのような想いや願いをお持ちなのかを明確にする事です。
更に、
③本人が大切な家族のために財産管理をする方法として、民事信託を選択した場合は、民事信託利用のためのに本人の想いや願いを実現するための具体的な設計をします。
最後に、
④民事信託契約書を作成し、契約当事者と契約をして完成です。
では、①から④のステップについて、具体的に見ていきましょう。
①ですが、認知症が発症すると進行が速い場合があります。そのため、普段から財産管理の事について、関心を持って頂き、民事信託を専門分野又は取扱分野としている法務事務所の司法書士等にご相談して置く事をお勧めします。
何故なら、民事信託は、ご本人が納得して、ご家族が理解できる設計をしなければなりません。とても、物を左から右へ機械的に動かすようなものではありません。司法書士等としても、ご本人からご希望をお聴きし、ご家族からもお話を聴取し、司法書士等が自身でどのような設計にしたら良いかをを検討し、設計をする等のオペレーションができる状況になる事が前提になるからです。
そのためには、ご本人は元より、そのご家族からも場合によっては時間を掛けて事情を伺わなければならない事もあります。
従って、できるだけ早い段階で、まず、司法書士等と連絡と取って、話をするところから始めていて頂く事が賢明と言えるでしょう。司法書士等も民事信託の相談では、直ぐに何かができるという風には考えず、将来の相談者のために現在の問題意識を共有します。
②としては、民事信託で最も中心的な部分であるご本人の想いや願いを明確にされる事です。何故なら、この想いや願いを実現するために民事信託を設計するからです。逆に言うと、想いや願いがハッキリとしていない場合は、民事信託の設計もできません。
しかし、民事信託がどのような設計内容なのかも知らないで、想いや願いを明確に持つと言いても、現実には難しいでしょう。そのため、この問題も、やはり司法書士等に一度ご相談される事をお勧めします。
③ですが、②の段階で、何度か司法書士等がご相談内容を伺わせて頂いている中で、この相談者にはどのような解決策があるかが判ってきます。そして、色々な方法を検討する中で、民事信託を選択する事がベストだと判断した場合は、ご相談者にそのご相談者特有の民事信託の設計内容の概要を説明します。その設計内容が良ければ、具体的な設計に入る事になります。
そして最後です。
④司法書士等が民事信託の契約書原案を作成しましたら、ご本人とご家族の中での当事者となる方に確認頂き、その後公証人役場にて「家族民事信託契約公正証書(仮称)」を作成し、署名押印して、完成です。
このような流れで、ご本人の財産管理のための民事信託が効力を生じる事になります。
▼家族民事信託契約の当事者
まず、民事信託で一番大事で中心的な事は、本人の想いや願いという事です。そして、それを具体的に実現するのが家族民事信託です。
それでは、民事信託契約とは誰と誰が締結するのでしょうか?
それには、民事信託の登場人物を知っていなければなりません。民事信託には一般的に次の3者が想定されています。
①委託者
②受託者
③受益者
①の委託者は、財産の所有者であり、大切な家族のために財産管理をしようという想いや願いがある方です。
②の受託者は、財産の所有者から財産を譲受けて、財産の所有者の大切な人のためにその財産を管理する財産の所有者にとって信頼できる人です。
③の受益者は、その管理された財産から利益を受ける財産の所有者の大切な人になります。
委託者が受託者に財産を譲渡して、その財産を譲受けた受託者が、受益者のために財産を管理し、その利益を受益者が享受するという構造になります。
しかし、ちょっと待って下さい。財産の所有者は、自身の財産を受託者に譲渡してしまうという事は、損をするのではないかという疑問です。
それは違います。それは誤解なのです。いいですか? 冒頭で、信託というものの発祥につてい触れました。それは、封建社会であった中世のイギリスの人々の話です。そこでは、自身の財産を家族のために守るにはどうすればよりか、という発想の基に誕生したのが信託という方法でした。それは、財産の所有者が財産を持ち続けていると、不利益になるというところから生まれた発想なのです。
つまり、この民事信託という発想は、所有者からその財産を分離する事で、その所有者自身が原因となる法律的障害を回避しようとする考え方なのです。
現代は、超高齢社会であると言いました。その意味は、健康である期間の後に病気と共に暮らす期間があるという意味という事でした。この超高齢社会で、本人が財産を持ち続けると、認知症になり、意思能力が減退又は喪失した後は、その財産は個人の意思の尊重というこの国の理念の中で、法律的な取引ができなくなってしまうという現象が起こるという事です。そして、この事により財産凍結が生じ、家族も本人のために本人の財産でありながら支払等が不能になり、デットロックに陥ってしまうという問題、つまり「財産凍結問題」が惹き起こされるという事でした。
すなわち、本人が財産を持ち続ける事を止め、本人から財産を分離してしまえば、個人の意思の尊重理念からも解放され、財産管理上は、法律上、あたかも認知症になった本人が健康であるかのような状態を創り上げる事ができるようになるという事です。
ここが、信託、現代の民事信託の本質的な考え方なのです。いいですか? 逆転の発想がこの民事信託という事がお解りになりましたでしょうか?
民事信託は解りずらいという方が多いのも、普段発想もしなお逆転の発想が本質論になっているからなのです。
民事信託の登場人物は、全て基本的にご家族です。財産をお持ちのあなたを裏切る事はありません。更に、不動産を受託者に移転した場合も、特別な登記が入りますので、第三者から見てもその不動産は民事信託によって移転した不動産(信託不動産)である事が客観的に判りますので、誰かが勝手に不動産を取得する事もありません。
民事信託の当事者を具体的に考えてみましょう。
例えば、父A 母B 長男Cの3人家族の場合で、父Aは高齢で、将来認知症になった場合、自宅不動産や預貯金の管理や処分が不安であり、家族のその後の事について心配になっていたとします。
ここで、父Aが民事信託を財産管理方法に選択したとします。この場合、民事信託の設計方法として、受託者を長男Bにして、受益者を父Aとして、民事信託契約書を作成したとしましょう。この場合、民事信託契約書は、委託者Aと受託者Cとの契約で成立させる事ができます。
そして、財産の所有者の父Aを受益者とするのです。この受益者を財産の所有者とする民事信託の契約種類を自益信託といいます。つまり、父Aは財産を譲渡して、所有権を分離しましたが、民事信託契約によって、その後も父Aの財産はA自身のために信頼している自分の子供であるCによって間違いなく管理され、その利益は父Aのために使われ続けるのです。
そして、父Aが認知症になった後も、本来なら自由な管理処分ができない塩漬状態の財産であるはずが、民事信託契約が効力を生じた後は、法律上は既に父Aの財産ではなくなっていますので、財産凍結といった現象にならず、財産凍結問題はこの家族には起きません。
そして、父Aが亡くなった時は、この民事信託契約を終了させ、父Aの遺言の他、父Aと母B、長男Cとでどのように分けるかを民事信託契約の中で予め決めておく事もできます。
お解りになりましたでしょうか?
このように、福祉型家族民事信託は、法律上の制約を補完する機能を発揮し、財産の所有者が、管理処分方法を自由に決める事ができる画期的な法技術なのです。
▼民事信託の種類
民事信託には、様々の利用の仕方があります。いくつかの代表的な民事信託の種類を挙げましょう。
〇福祉型
現在又は将来において、認知症等認知障害や精神障害、知的障害、身体障害、発達障害といった健康状態の人を対象として、その人の財産管理を適切に行う事にによって、本人や家族の生活基盤を安定させ、かつ相続やその後の諸手続き等を円滑にするための財産管理方法として民事信託を利用する種類です。福祉型は、高齢者や障害者の権利を擁護したり、セーフティネットとして用意されている様々な法制度を補完する役割を担っています。
〇資産管理型
福祉型が、現存の法制度を補完する消極的財産管理方法であるのに対し、資産家や中小企業経営者等が、もっと意欲的に利用し、次世代に確実に財産を承継さる等の所有者の現行の法制度を十分に適用しても叶えられない想いや願いを叶えるために利用する種類です。資産管理型は、現在の法制度を超えて財産を管理する積極的な資産管理の役割を担っています。
〇目的実現型
目的実現型は、現在の法制度の制度的保障や法律的保護が十分ではないと感じている方ための想いや願いを実現させる目的を持った種類です。この種類の中には「ペット信託」等も含まれます。買主が亡くなった後の大切なペットのための役割を担っています。
〇事業経営型
事業承継型は、中小企業のオーナー経営者等の主に株式や事業自体を信託して管理する種類になります。代表的な例は、オーナー経営者の中小企業の事業承継です。種類株式や特例承継税制との関係で、優位な事業承継を実現する事ができます。
〇自己型
通常の民事信託は契約で設定しますが、この信託は委託者と受託者が同一人物という特殊な方法となります。選定方法は信託宣言です。民事信託の利用方法では、実現する目的(本人の想いや願い)が少なく、我が国では殆ど利用されていません。
この中で、今回のニュースレターで取上げています福祉型の民事信託が現在最も利用件数が高齢社会という時代背景も有り多くなっています。そして、福祉型民事信託には様々な類型がありますが、委託者、受託者、受益者が全て家族という構成の民事信託を特に家族民事信託と呼んでいます。そして、家族民事信託の中で、福祉を目的にした家族民事信託を特に「福祉型家族民事信託」と命名して当事務所では使用しています。
●福祉型家族民事信託にも共通する民事信託の本質的要素と有効要件
福祉型家族民事信託の本質的要素は、財産の所有者がその財産を信頼できる者に譲渡して、その財産の名義人から外れ、譲渡された者が財産の名義人となり、その後はその譲渡人である元の財産の所有者のために、その財産を管理するというのが基本スキームになります。
この基本スキームから、福祉型家族民事信託にも共通する民事信託の本質的要素とは、次の4つになるでしょう。
▼譲渡する財産が存在している事 = 財産の特定性
▼財産が譲渡される事 = 所有者と財産の切断性
▼譲渡された財産の譲受人は、自分のためではなく、譲渡人が定めた目的に従って受益者のために財産を管理する事 = 信託の目的性
▼譲受人は、譲渡財産と固有財産を分別管理する事 = 信託財産の分別管理性
この4つがそのまま福祉型家族民事信託にも共通する民事信託特有の有効要件となると思います。
そして、福祉型家族民事信託の主役は、委託者と受益者であり、民事信託を支える最も大事な精神的要件は、受益者と受託者との「信認関係」になります。「信認関係」とは、信託法における受益者と受託者の信頼関係の事です。
民事信託の主役は
委託者と受益者
民事信託を支える精神的要件
それは
受益者と受託者との信認関係
そして
信託は受益者のためのもの
そして、具体的には、委託者と受託者で民事信託契約を締結して、運用を始める事になります。
いかがでしたでしょうか。
民事信託とは、財産をその所有者から分離し、法律上は、財産の所有者を別人格にして、財産の所有者を法律上の不利益から解放する事によって、財産を元の所有者の決めた目的に従い、受益者のために管理し、受益者に利益を享受させようとする考え方である事をご理解頂けたでしょうか。
民事信託は、昔は中世ヨーロッパの君主からの財産権の侵害から自分や家族を守るために発祥し、近代では国家の制度と時代の潮流の中で個人を守るために発達、現代において進化してきました。そして、民事信託はその昔から欧米ではごく普通に利用されています。
しかし、民事信託は、現代の日本では新しい法技術です。特に、この日本でも利用者数が多い福祉型家族民事信託について、今回のニュースレターで興味や関心を持って頂けたら幸いです。
福祉型家族民事信託のご相談は、民事信託法務を専門分野又は取扱分野としている法務事務所の司法書士にして頂く事をお勧めします。
願いが叶う画期的な法技術 民事信託で明日への希望を
※司法書士は、法律問題全般を扱う身近な暮らしの中の法律専門実務家です。
(2021年5月5日(水) リリース)
